2014年11月に最終14巻でラストを迎えた、マンガ版『新世紀エヴァンゲリオン』。キャラクターデザインを手がける貞本義行によるコミカライズが、20年の長きにわたる連載を完結させた。

連載およびテレビ放送が始まったのは1995年。碇シンジたちが生きることになる“近未来”として設定されたのは、当時から20年後である2015年だった。まさに、私たちが生きている“今”である。第1巻の冒頭を飾るのは、セカンドインパクトの影響とおぼしき、海底に沈んだ都市の上を泳ぎ進む第三使徒。シンジたちの物語は、ここから始まった。

■今さら聞けない「エヴァの中の2015年」物語の舞台となる第三新東京市とは?

ここで少し振り返ってみよう。
碇ゲンドウからの呼び出しで、シンジが訪れた第三新東京市は、神奈川県足柄下郡箱根町にある「仙石原」周辺という設定だ。
2000年9月のセカンドインパクト(世界で約20億人が死亡)と、同9月に東京に投下された新型爆弾(5万人が死亡)により、首都機能は移転。長野県松本市に暫定的に置かれた第二新東京市に続き、新たな首都として第三新東京市が生まれている。
とはいえ、第三新東京市は首都というより、次々に襲来する使徒を迎撃する基地としての機能が重視されている。

そうなると当然……

地表に出ている市街地は、たびたび壊滅的な打撃を受けるため、使徒迎撃の最前線であるNERV本部は、地下の巨大空間「ジオフロント」内に置かれている。

2015年現在の技術力と、設定のSF加減はともかく、2015年のエヴァの世界は、テロとの戦いや、富士山の噴火や、大震災などを危惧するまでもなく、「すでに壊滅的な被害を受けた後の日本」なのだ。

シンジの生き方、そしてエヴァの登場人物たちの、どこか“達観した”それは、このような世界に生きる人々のスタンダードなのかもしれない。

■未来? レトロ? エヴァ的世界のデジモノと生活

彼らの生きる時代を想像するとき、その世界にある日用品も一つのヒントになる。彼らはどんなデジモノ(?)を使い、どのような生活を送っているのだろうか?

・電話

第三新東京市に到着したばかりのシンジ。連絡手段は携帯電話かと思いきや、現実の2015年でも、もはや懐かしい感のある公衆電話だ。巨大地下空間やエヴァンゲリオンを擁するほどの科学技術都市でも、通信インフラはやや脆弱なのか? それとも、機密だらけの街だからこその“アナログ”なのだろうか。
ちなみに、初代iPhoneの発売は2007年。
もし、連載開始当時にスマホがあったら、物語にも登場していたのかもしれない。

・タブレット

NERV内で、タブレットらしきものを使っているミサトさん。さすがに人類の存続をかけた最前線だけに、情報端末も未来的だ。それにしても、今現在、我々が使っているタブレットやスマホは、NERVのそれよりも格段に洗練されているようにも見える。
日々過ごしているとピンとこないものだが、現実の2015年は、実はかなり“未来っぽい”時代なのかもしれない。

・冷蔵庫

おなじみ、ミサトさん家の冷蔵庫である。
およそ「情報」を直接扱わない家電というものは、省エネ性能を別にすれば大した進歩は見られないものなのかもしれない。特に彼女の場合、貯蔵される食糧の大部分は缶ビールとレトルト食品らしいことがうかがえる(極めて不規則な生活だから仕方のないことだ)。
きっと、今後100年経っても、冷蔵庫の基本的なスタイルは変わらないのではないだろうか。

・授業風景

自分専用のラップトップPCを使って授業を受けるシンジたち。エヴァにおける2015年は、このような学習スタイルが一般的なものとして描かれている(ただし、先生の背後にはいつ使うのか分からない黒板がある)。現実の世界でも、タブレット端末を活用した授業なども実際に行われているので、この描写も極めて説得力を持ったものに思える。

「ノートに板書を写しながら……」という授業しか知らない世代からすれば、はたしてこの授業からどのような影響を受けるのか、非常に興味深い。今から10年後か、それとも数年後には、「ノートを取る」という行為自体が忘れ去られたりするのだろうか? だとしたら、少し寂しい気もする。

■描きこまれた「世界」を眺めながら、改めてエヴァンゲリオンを読む

マンガ連載とアニメ放送が始まった当時、シンジたちが2015年に生きているということは、あまり意識しないで作品を楽しんでいたように思う。しかし、実際に2015年を迎えると、この20年間の世界の変わりようや、技術の進歩の早さに驚かされる。
公式発表を待つしかないが、劇場版最新作「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」公開への期待も高まる今日この頃。また、8月にはTVシリーズのBlu-ray BOXも予定されている。

ますます目が離せないエヴァンゲリオン。劇場版やTVアニメ版をおさらいするのはもちろん、マンガ版でも、2015年から始まる“第三新東京市”の世界観を読みこんでおきたい。

★記事:ぶくまる編集部