国民的アニメ作品『ちびまる子ちゃん』。笑いというオブラートに包みながら、子どもたちの世界にも階級や格差があり、それによって行動原理が支配されていることを描いている点では恐ろしい作品と言えるかもしれません。
そして、同作の中で、「卑怯者」というレッテルから逃れられないのが、今回ご紹介する「藤木君」です。彼は肝試しで恐怖のあまり、まる子を一人置き去りにして以来、「卑怯者」の烙印をクラスメートから押されてしまいます。

【※一部、ネタバレの内容を含む可能性が御座います。ご注意下さい。】

■「臆病」が不運の末に「卑怯」へと進化?

 彼は元来、「臆病」ではありました。これは自らの存在を守ろうとする感情です。
しかし、そのために他者を顧みない場合は「卑怯」と呼ばれます。藤木君は、臆病なあまりにとった行動が、運悪く「卑怯」と見られてしまったのです。しかし、肝試しの一件で逆にまる子が藤木を置き去りにしたとしても、きっと卑怯者とは呼ばれなかったでしょう。同じ行動を取っても彼の場合のみ非難されるのは、周りからの見え方の偏りゆえに起きたこととも言えるのです。

■卑怯者のスパイラル

 事あるごとに周囲に卑怯者と言われる事、それが彼の行動原理に深く影を落としています。心のなかで「こんなことをしたらまた卑怯者と呼ばれてしまう」とつぶやく情景をよく目にします。
しかし、そう強く意識すればするほど、彼はいつも失敗する行動ばかりを選んでしまうのです。彼に「卑怯者」のレッテルを張っているクラスメート達は、結果ではなくその動機を“卑怯”と解釈します。こうして、さらに彼が卑怯者であると印象が強くなってしまうのです。

■卑怯者と呼ばれるゆえにいつかは・・・

 元来持つ臆病さと、卑怯者というレッテルのために毎度失敗し、真っ白になってしまうオチに、無邪気にそして残酷に笑いを浴びせられる「藤木茂」。しかし、もし現実に小学生の頃から卑怯者のレッテルを貼られ、周りから常にそんな扱いを受ける生活を送っていたらたまりませんよね。そんな中、彼は健気に生活を送っています。
彼よりも数段卑怯であると思われる永沢君と、狭くて奇妙な友情を育み、いつも嫌味を言われつつも思いやりを見せる藤木くん。時には「卑怯者の僕だって・・・」と敢然と行動することもあります。もしかすると、彼はいずれ誰よりも人の痛みを分かってあげられる人間に成長するのかもしれません。

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★記者:ルーデル(キャラペディア公式ライター)