歌うのは魚か海がテーマの自作曲ばかりというフィッシュロック・バンド「漁港(港は左右反転)」の包丁ボーカルとして活動し今年で結成25年。本業は浦安市内で鮮魚店「泉銀」を営む。
3日には東京海洋大学品川キャンパス(東京)の学園祭にねじり鉢巻きにゴム長靴の漁師スタイルで登場、破天荒なステージと巧みな話術で観客を魅了した。「釣竿」は芸名だ。
 5月には、50種類の魚の生態や食材としての特徴、鮮度の見分け方などを監修した「魚屋の名物店主が教える おいしい魚まるみえ図鑑」を出版。タレントのさかなクンに「読めば目から鱗(うろこ)」と激賞された。
 「泉銀」は1950年に祖父が浦安に創業。自身は3代目。「父方は漁師の、母方は魚屋の家系。水産系DNAが刻み込まれている」と笑う。両親と祖父母が忙しく立ち働くのを見て育った。
 浦安の風景を一変させたのが83年の東京ディズニーランド開業。スーパーや量販店が増える一方、個人の鮮魚店がみるみる減っていった。店の仕事をするようになり、本業と趣味のロックを両立させ「日本の食文化を再び魚中心に戻したい」と訴えるバンドを結成したのが20代半ばのことだった。

 2004年にシングル「鮪(マグロ)」でメジャーデビュー。築地市場(当時)でライブを開催、業界団体から魚食普及貢献者として感謝状も受けた。
 ただ、あくまで本業優先。客とやりとりしながら「今夜の魚」を勧める昔ながらの販売にこだわる。「実は自分は面倒くさがり。だけど魚たちはそれを許してくれない。手を抜いたらすぐに腐ってしまう。自分にぴったりの仕事なんです」
 東京海洋大学での50分のライブでこう訴えた。「日本にはおいしい魚がたくさんあります。せっかくこういう国に生まれたんだから、この国を満喫しようじゃないですか」
(小北清人)
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