●50周年記念の「ハイラックス Zブラックラリーエディション」は期間限定販売

しばらく日本での販売がストップ。2017年に復活発売が開始されたトヨタのピックアップトラック「ハイラックス」。

本格的な国産ピックアップは久々の登場ということもあり、多くのファンの注目を浴びています。

ハイラックスの初代誕生は1968年、つまり昨年2018年は50歳・半世紀の節目を迎えました。それを記念して登場したのが、今回試乗した特別仕様車のZブラックラリーエディションです。特別仕様車となっていますが、台数や販売期間は限定されていないので、しばらくは購入チャンスが続くはずです。とはいえ50周年記念車なので、あまり長い期間にはならないと思っていたほうがいいかもしれません。

最大の変更点はスポーティな雰囲気を作り出す大型グリルとホワイトレタータイヤの採用です。

タイヤはサイズも265/65R17から265/60R18に変更し、ホイールもスチールからアルミに換装されています。

さらに外装では前後バンパー、ドアハンドル、テールゲートハンドル、ドアミラーをブラック化。ブラックのオーバーフェンダーが装着され、全幅が1855mmから1885mmに拡大されています。

 

内装もブラック化を中心としたドレスアップが施されます。革巻きステアリング、ATセレクトレバーノブ、センタークラスター、ドアトリム、サイドレジスター、ATセレクトレバーなどのシルバー部分ブラックメタリック化。アッパーボックス、ルーフヘッドライニング&ピラーガーニッシュ、ルームパーティション&バックパネルトリムはブラックのパーツに変更されています。

さらにメーターのデザインも変更、スマートキーまでを専用品とする徹底ぶりです。

今回の試乗は愛知県にあるトヨタ系のオフロードコース「さなげアドベンチャーフィールド」を中心に行われました。

まずは、クロスカントリーコースの試乗です。クロスカントリーコースでは走破性の高さをチェックしました。とにかく感心させられたのが、A/T(オールティレーン)タイヤでありながら、けっこうガンガンに行けてしまうことです。ほとんどのセクションは4Loレンジのままで行けてしまいます。

エンジンは2.4リットルのディーゼルターボでしっかりした低速があるので、登り下りのないロックモーグルならアイドリングのままブレーキ操作で速度を調整、ステアリング操作に集中しながらセクションクリアが可能です。越えられない場合はアクセルを踏みこめばそのまま乗り越えてクリアしてしまいます。

次はさらに厳しい上り勾配のマッドモーグルです。さすがに上りの場合はアクセルを踏んでいかないと進みません。ヌルヌル路面で滑りやすい場面なので、アクセルコントロールを間違うとタイヤが滑りはじめます。1輪だけが滑っている状況なら2輪の駆動力で前に進めます。

この場合3輪ではありません。たとえば後ろ右が滑ると、後ろの駆動力はすべて空転している右に流れます。

やっかいなのが対角線スタックと言われるもので、左前輪と右後輪といったように対角線上にあるタイヤが空転したときです。前後、そしてセンターのデフがオープンタイプ(ようするに普通のデフ)の場合は、空転しているタイヤにのみ駆動力が流れてしまいます。ハイラックスはこうした場合に空転しているタイヤにのみ電子制御でブレーキをかけて空転を停止するアクティブトラクションコントロールを装備、接地しているタイヤに駆動力を伝えて進みます。またリヤデフをロックすることもできるので、上りなどではリヤデフをロックすることでより力強く上ることが可能です。

キャンバー走行では30度強の傾斜を体験しましたが、不安感はありません。後1輪が持ち上がりグリップを失いますが、ここでもアクティブトラクションコントロールが働いて、アクセルを踏めばグッと前に押し出されます。

ラフな道を走るとどうしても上下動が大きくなり、その際に頭がルーフ側のアシストグリップに当たってしまうのが気になりました。ドライバーはルーフ側のアシストグリップにつかまることはありませんし、Aピラーにはアシストグリップがついているので、ルーフ側のアシストグリップは不要でしょう。

オンロードの走りもびっくりするくらいにいいものです。以前にも試乗し、レポートを掲載していますが、リヤサスペションが空荷のときには柔らかく、荷物を積むと硬くなるセッティングとなっているため、空荷で走ってもリヤが激しくはねるようなことはなく、しっかり接地してグリップしていきます。

試乗車はタイヤの扁平率が60%とトラックとしてはかなり低扁平率(フラットローデッキの小径タイヤの場合はさらに薄いこともありますが)となっていますが、乗り心地の悪化はなく、かえってノーマルタイヤよりもいい印象でした。

 

ボディ全長は5320mと長く、最小回転半径も6.4mとかなりの大きさ。使えるシチュエーションが限られますが、それでもオンリーワンな存在は、ハイラックスの大きな魅力となっています。

(文/諸星陽一・写真/澤田優樹)