本連載では、先進的な働き方・オフィス構築を行っている企業に潜入し、思わず「うらやましい」と声を漏らしてしまうその内容を紹介していく。「これからのオフィスどうしようか……」と考えている読者の手助けにもなれば幸いだ。
第18回となる今回は、日本IBMの虎ノ門新本社を紹介する。

日本IBMが目指す8つの姿

日本IBMは1月30日、「虎ノ門ヒルズステーションタワー」に本社を移転したことを発表した。同社は、デジタル変革の進展や新しい働き方へのニーズがますます高まる中、オフィス環境を社員の働き方に連動してトランスフォーメーションすることが必要だという。今後は虎ノ門本社を含めて、東京地区の事業所を箱崎、丸の内の3拠点で運営していく。

説明会では、日本IBMグループが目指す姿として以下の8つの項目が挙げられた。
○顧客や社会に対して

Beyond Boundaries
最先端のテクノロジーと創造性で顧客や仲間、社会とともに、あらゆる垣根を越えてより良い未来づくりに取り組む
Co-creation
IBMグループの力をソーシャルを通じて有機的につなぐことにより、知識の「保有」から「共有」へ、さらに「共有」から「共創(Co-creation)」につなげる
Innovation
一人ひとりが成長し輝ける環境と文化を促進し、より多様な人財を惹きつけ、顧客の成功につながる価値あるイノベーションを起こし続ける
Agile
スピードと柔軟性を持ち、顧客や市場が望むイノベーティブな結果を共有する

○社員に対して

Work Flexibility
時間と場所の制約から解放された働き方をはじめ、一人ひとりの社員がその能力を最大限に発揮し「輝ける」環境を提供する
Work/Life Balance
ライフステージの変化を柔軟にサポートするさまざまな制度を通じて、社員のより良いワーク/ライフ・バランスを促進する
Diversity & Inclusion
ダイバーシティー(多様性)とインクルージョン(全員参加)が生み出すさまざまな価値観を尊重し、競争力の原点とする
Productivity
社内の非効率な業務やプロセス、ツールを見直し、生産性を向上させる事により、顧客や自分の学びのために使う時間を拡大する

この8つの目指す姿を実現するために、働き方や働く場所、コミュニケーションスタイル、会議のスタイルなど8つの行動様式の変革を図る構えだ。

オフィスの至る所に「IBMらしさ」を

実際のオフィス内を見学すると、8つの目指す姿の中でも記載のあったように、多様性のある人材がそれぞれ輝ける空間が意識された雰囲気のオフィスとなっていた。

まず、オフィス内は完全フリーアドレス制を導入しており、役職や部署に関係なく、同じフロアを使用する体制が整えられている。これによって、自分の業務に合わせて働く場所を選べるほか、部署や年齢を超えたコミュニケーションの創出を狙っているという。

加えて、コミュニケーションの創出を目指すのは社内だけの話ではない。日本IBM 代表取締役社長の山口明夫氏が「お客さまにも自分のオフィスと同じようにくつろいでほしい」と語るように外部のパートナーとのコミュニケーションにも優れた設計のオフィスとなっている。

特にカフェスペースは、コミュニケーションの生まれる場としての認識の下、さまざまなドリンクを用意して社内外関係なく、くつろげるスペースとなっている。


筆者がオフィスを内覧して一番印象に残ったのは、至る所に「IBMらしさ」を感じることができるということだ。

アイビーエムの「ビー」を「Bee(蜂)」として捉え、企業のマークに採用しているIBMだが、新オフィスではこの蜂のマークを多くの場所で見かけることができる。カフェスペースの壁や会議室近くの壁などに多くイラストされている。

また、IBMらしさはロゴだけでなく、製品の展示という形でも表れている。過去に発表されたIBMを代表するような磁気ディスクやタイプライターといった製品の展示が行われているほか、IBMの今までを振り返ることができる展示も実施されているのだ。

大幅にアップデートしたIBM Innovation Studio

新本社ではオフィス機能に加えて、IBMの最新テクノロジーを体感できるIBM Innovation Studioも併設される。同施設は旧本社・箱崎事業所から移設されたもので、従来の内容から大幅に拡張されたことも発表している。

IBM Innovation Studioとは、世界19カ所にある、顧客やパートナーとの共創を推進するための施設で、IBMの最新テクノロジーの展示や、社内外の専門家の知見や経験の共有、デザイン思考のワークショップなどを通じて、革新的なアイデアを創出し、変革に向けて活動する場を提供しているという。

今回、大幅にアップデートした同施設について、IBM イノベーションスタジオジャパン 部長の武井総氏は以下のように説明する。

「新たなIBM Innovation Studioでは、プロジェクション・マッピングや、キヤノンさまのボリュメトリックビデオ技術を活用した名刺上に3Dで自身の小さな分身を表現できるARソリューションが設置されています。5月には360度スクリーンでIBMのテクノロジーを体感できる没入型体験空間も新設予定で、先進のテクノロジーや共創の具体的成果を、楽しみながら、より分かりやすく体感いただき、新しいアイデアを創出するための工夫を随所に取り入れています」(武井氏)

また、ここから生まれたアイデアをIBMの専門家との議論につなげることで、共創をより加速させることができるよう、ミーティングルームに加えて、専門家の知識を共有するエキスパートゾーンや、ワークショップなどを通じてカジュアルに意見を共有できるCo-Creationスペースを設けているのも特徴だ。

また、最後には山口氏に加えて、森ビル 取締役副社長執行役員の北林幹生氏、キヤノン イメージソリューション事業本部長 SV事業推進センター所長の伊達厚氏が登壇し、テープカットを実施した。
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