●韓国ミュージカル初出演に喜び 初めて訳詞も担当
数々の舞台やドラマなどで活躍している女優のソニン。7月18日~28日に東京芸術劇場シアターイーストで上演されるミュージカル『ラフヘスト~残されたもの』では、主演に加え、訳詞を担当する。
日本テレビ系ドラマ『大病院占拠』『新空港占拠』でのSIS管理官役も記憶に新しいソニンだが、本作でも芯の強い女性を演じる。「強い女性を演じるのが私の宿命なのかなと思っている」と語るソニン。本作への意気込み、仕事に対する思い、自身の性格や結婚観などについて話を聞いた。

第8回韓国ミュージカルアワードで作品賞、脚本賞、音楽賞の主要3部門を総なめにした『ラフヘスト~残されたもの』の日本初演となる本作は、韓国を代表する天才芸術家と称された実在の2人の男性、鬼才と言われた詩人イ・サンと韓国抽象美術の先駆者キム・ファンギを夫に持ったキム・ヒャンアンの人生を史実に基づいて描いたオリジナル・ミュージカル。ヒャンアンもエッセイストで、評論家、西洋画家でもあり、自身の才能だけでなくパートナーたちの才能をも開花させた稀有な女性として知られている。

ソニンは「ずっと韓国ミュージカルをやりたいと思っていたのでうれしい」と、韓国ミュージカル初出演に胸を高鳴らせている。

韓国ミュージカルに出演したいと思った理由を尋ねると、「韓国ミュージカルに出演した知り合いの俳優さんが成長されている姿を見ていたので、よっぽど魅力があるんだろうなと。単純に自分が韓国人だからというのもなきにしもあらずですが」と答え、「なんで私に話が来ないんだろうと(笑)。でも、きっとタイミングが来ると思っていました。今回この作品で参加できてうれしいです」と笑顔を見せる。

また、「少人数でのお芝居もやりたいなと思っていた」と明かし、「コロナ禍を経て、キャスト同士が触れ合う時間が少なくなり、リハーサルもずらしてやることも多くなってきた中で、少人数なら否応なしにずっと一緒にいる。そうすると、より濃い時間を過ごしながら作品作りに没頭できるのではないかなという思いがありました」と語った。


本作では初めて訳詞を担当する。「自分にとってとてもチャレンジになると思います。今まではお稽古から携わることが多かったですが、今回はスタッフの方々との打ち合わせから関わることになるので、出演する側ではない側面からものが見られるだろうし、役者として、ものの見方がもっと多角的になるんじゃないかなと。すごく成長した自分が待っているだろうなと思います」と期待している。

もちろん作品の内容にも惹かれて出演を決意した。「ストーリーもすごく面白くて、実在した人物を描きますが、少しファンタジー要素を入れて構成されていて、演出の効果や音楽によって、いろんな彩りが見られる作品になるんじゃないかなと思い、ぜひ出演したいと思いました」

そして、「私は役者人生の中で、女性が強かったり、女性が中心の物語に出演することが多く、強い女性を演じるのが私の宿命なのかなと思っている」と語るソニン。「今回も、韓国で有名な2人の芸術家を夫に持つキム・ヒャンアンの人生を描く物語で、男性ではなく女性のほうにフォーカスを当てて描くというのはすごく面白いなと思いました」と話した。

キム・ファンギ役はLeadの古屋敬多、イ・サン役は相葉裕樹、そしてイ・サンと恋に落ちる若き日のヒャンアンであるピョン・トンリムを山口乃々華が演じる。

ソニンは、「同じ役を山口乃々華ちゃんが演じるというのがすごくミソだと思うんです。違う女優さんが同じ役を演じるというが面白いなと。自分だけではなく2人で役を作り上げることになるので、今まで試みたことない役作りへのアプローチになると思います」と述べ、「役者人生の中で、初がたくさん! 初韓国ミュージカル、初訳詞、初同一人物を別の人と演じる」と声を弾ませた。

両親譲りの強さ 芸能界で活動する中でよりパワフルに

演じるヒャンアンと自身は「行動力があるところがそっくり」だという。

「ヒャンアンはファンギに対して、『私がパリに行ってアトリエも全部準備しておくから』と。
先に異国の地に行ってアトリエを探すって、相当な行動力とコミュ力がないとできないですよね。私も外国に住んでいたこともありますし、行動力はあると思います」

「強い女性を演じるのが私の宿命」と話していたが、自身も強い女性だと認識しているそうで、「もともと遺伝子的にその素質を持っていると思います」と語る。

「大胆さは父親譲りで、現実的な行動力は母親譲りで、両親の要素を受け継いでいる気がします。うちの姉は私の5倍ぐらいエネルギッシュで、スーパーウーマンすぎて毎回会うたびにこの人には勝てないなと思います(笑)」

芸能界で長年活動してきた中でよりパワフルになったようで、「芸能界で荒波に揉まれ、厳しい現実を乗り越えてきたというタフさもあると思います」と語った。

作品を通して、強い女性像を届けることにもやりがいを感じているという。

「去年出演した『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』は(登場人物が)ほぼほぼ女性で、ロマンスはほとんどないという作品。そういう作品は日本では少なかったですが、最近は増えてきていて、私はどんどんやっていくべきだと思っています。現代の女性は強くてタフなので、女性が強い作品は現代的だなと。エンタメ界でやっていくことは必然だと思いますし、私としてもやっていきたいです」

もちろん強いだけではなくいろんな側面がソニンにもあり、強い女性ではない役を演じる機会もあるからこそ、心のバランスがとれているという。

「強いイメージを持たれていると思いますし、自分でも芯は強いと思っていますが、そうではない部分もあるので、強いキャラクターばかり演じていると、そのイメージだけになり心が窮屈になってしまう。柔らかい役を演じることもあり、違う一面を知ってくださる方もいるので、そこでうまくバランスをとっている感じがします」

また、ヒャンアンがトンリム時代の自分について「弱虫だと思っていたけど、自分が思っていたより強かったのね」と自分を肯定する場面があると言い、「お客さんもこの作品を見て、過去の自分を愛せたり抱きしめたりできるような流れになればいいなと思っています」と語る。

ソニン自身も「あの時こうしておけばよかった」と思うことはあるそうで、「昔もうちょっと遊んでおけばよかったなと思っています(笑)。
真面目に仕事をやりすぎてしまって、いろんな冒険をしておけばよかったなとか、思うことはいっぱいありますよ。もうちょっとファッションをかわいくすればよかったなとか」と笑った。

年齢にとらわれず「攻めの姿勢でチャレンジを続けたい」

現在41歳のソニン。40代になり心と体の年齢の差を感じているという。

「心は20代だなと思っていますが、体はどんどん老いていって、差が開いているなと。40代を超えて特にそのギャップを感じます。気持ちは若くても体は違うステージになっているので、無理をしてはいけないなと考えるようになりました」

そして、「気持ちはずっと若くいたい」と言い、「攻めの姿勢がなくなってしまうと、仕事もつまらなくなってしまうと思うので。モチベーションやエネルギーの分量はずっと20代のままでいたいと思っています」と力強く宣言。

「私は新しいことに挑戦するのが好きなんです。だから40代もチャレンジ精神を持ち続けていきたい。それは20代と同じことをしたいということではなく、今の自分だからこそ生まれる新しいアイデアとか、大人になったからこその表現とか、そういった意味でチャレンジを続けていきたいなと。保守的というのがあまり好きではないので」と語った。


また、「年齢にとらわれたくない」という思いも吐露。

「40代というのもあまり言いたくないんです(笑)。日本は年齢にとらわれやすく、年齢を気にする人が多いですが、今のありのままの私を見てほしいので。これからも年齢にとらわれることなく、常に攻めの姿勢で今だからこそできるチャレンジをしていきたいと思います」

舞台と映像の両方で活躍しているソニン。「両方それぞれ良さがある」と言い、相乗効果も感じているという。

「映像は、舞台とは比べ物にならないくらいたくさんの人に見てもらえる。多くの人に知ってもらうというのは舞台をやっていく上でも必要なことだと思っています。舞台は、3時間ずっと観客の皆さんと一緒にいられる。その人たちはチケットを買って、お金と時間をかけて劇場に来てくださって、その人たちだけのために空間をシェアするという、本当に贅沢だし、映像にはない興奮があります。演じ方も違うので、私は違う職業だと思っています」

そして、「映像をやると舞台に戻りたくなって、舞台をやると映像を思い出して。行ったり来たりしながら私自身も成長できていると感じているので、これからも両方やっていきたいなと。本当に両方愛しています」と語った。


恋愛や結婚について描かれる本作。ソニンは「別に結婚したくないというわけではないですが、周りにいる同じぐらいの世代の人たちの中には『結婚ってする必要ある?』という人もいて、その考え方も今の時代は全然ありだと思うので、妥協はしたくないなと思っています」と結婚観も語る。

「『本当に結婚したいの?』『本当にパートナーは必要?』と聞かれると、もう自立しているので、ここで違う人の人生が入ってきたらどうなるんだろうと思うんです。そう考えると無理はしなくていいかなと。女性は子供を産むか産まないかという問題がありますが、早くしなきゃと焦って自分を見失う判断をするのも違うと思うので。本当に一緒にいたいと思う人が見つかったら結婚したいと思います」とにっこり。「うちの姉も『結婚イコール幸せではない』とよく言っていますし、確信が持てるパートナーに出会ったら結婚しようと思います」と話していた。

■ソニン
1983年3月10日生まれ、高知県出身。2000年に音楽ユニットで歌手デビュー。翌年よりソロ活動を開始し、2002年に発表したシングル「カレーライスの女」が大きな話題を呼ぶ。以降女優としても活動を開始。2012~2013年に文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間アメリカ・ニューヨークに留学。
2015年に『RENT』『トロイラスとクレシダ』『ダンス・オブ・ヴァンパイア』で第41回菊田一夫演劇賞を、2018年に『1789 -バスティーユの恋人たち-』『マリー・アントワネット』で第26回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞した。近年ではテレビ朝日系ドラマ『となりのチカラ』(22)、日本テレビ系ドラマ『大病院占拠』(23)、『新空港占拠』(24)など映像作品にも多数出演。
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