分譲マンション販売の抽選倍率の高さが話題になった「HARUMI FLAG」(晴海フラッグ)。1月から入居が始まりましたが、ゴーストタウン化を指摘する報道が目立っています。


投資家の目線に立ったとき、このエリアの将来性をどう分析すべきなのか。不動産ナビゲーターの渕ノ上弘和さんに聞きました。

○住民票の有無で"居住目的ではない"と判断するのは難しい

「晴海フラッグがゴーストタウン化しているのではないか」という声を耳にするとき、その内容は大きく二つの切り口で表現されているように思います。

一つは「転売目的で購入された物件に人が住んでいない」というケース、そしてもう一つが「物件を居住用ではなく投資用に切り替えて賃貸募集をしているが、賃貸が入らない」ケースです。

これらのケースの根拠として、物件の引き渡し後に住民票を移していない購入者が多くいらっしゃる、との話を耳にします。しかし、住民票を移していないことをもって、「将来的にも購入者が物件に住む予定がない(=居住目的の物件ではない)」と断言することはできないと、私は考えます。


というのも、湾岸エリアのみならず、ここ10年ほど分譲マンションの住み替えで収益を上げている方のパターンとして、自己居住用で購入した物件の価格が上がり、賃貸であれば賃料として払うべき賃料分の利益と、物件の値上がり利益とを合わせた利益を得て、次の物件に住み替える――という流れができています。

私はこれを、不動産投資の中の「自己居住用不動産投資」と呼んでいますが、人に貸す目的で最初から賃貸に出す「賃貸用不動産投資」と比べ、諸経費を含んだフルローンを組める方が一定数いらっしゃるため、投資として参入しやすくなっています。

「自己居住用不動産投資」は、1~2回経験すると現実として値上げ利益が積みあがるため、「キャッシュリッチ」になる方が次の売買へと進んでいます。そのため中には、新居を先に購入し、新居と現在の自宅、2つの不動産に関する住宅ローンを並行して利用する「ダブルローン」を組む余裕がある方もいらっしゃいます。

もしこのような状況の方が晴海フラッグを購入していたら……お気づきかと思いますが、急いで引っ越す必要がないのです。新居に移る前に、いま住んでいる住宅のローンを投資用ローンに借り換えて貸し出すのか、それとも売却するのかなどを、マーケットをにらみながら検討している可能性も考えられます(※物件を投資用ローンではなく住宅ローンのまま貸し出すと、金銭消費貸借契約違反となります)。


またそもそも、金融機関とのローン契約(金銭消費貸借契約)上も、不動産登記法上も、物件引き渡しの時点で住民票が移っていることが絶対的な義務にはなっていません。住民票がない物件には、今住んでいる家を貸すのか売るのか検討している方、まだ引き渡し期間中であるという方、または単純に引っ越しを夏休みに……と考えている方などもいる可能性があります。

つまり、住所を移していないことをもってその物件が「居住目的の物件ではない」といまの段階で判断することは、容易ではないと考えます。

○街の姿、冷静に分析を

「子育てファミリー、高齢者、外国人など多様な人々が交流し、生き生きと生活できるまちづくり」を目指し「晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業」として進められているHARUMI FLAGの計画。

近くに駅がない立地、"レインボーブリッジを大型船がくぐれない"という課題を抱えていた晴海ふ頭、警視庁の白バイ隊の練習地にもなっていた空き地に巨大な街をつくるという途方もないプロジェクトだったのは事実です。

しかし、エリアの将来性を考える上では、冷静な視点も必要です。


賃貸住宅街区であるPORT VILLAGEに人がおらず、閑散としているという報道も出ています。しかし、デベロッパーはそもそも、2年程度かけて満室にする想定で当初より動いているとの話も耳にしています。これは想定されていた事項であると考えると、重要なのは予定通りに空室がなくなるのかをきちんと見極めることではないでしょうか。

どうしても眺望等に引っ張られ、強気な価格設定をしているために、投資用の住戸が動かないというケースもあると感じます。一方で、私のお客さまの中には、晴海フラッグのファミリータイプの物件を投資用として賃貸に出し、月額賃料30万円ほどですぐに決まった、という方もいらっしゃいます。

事実を丁寧に分析し、マーケット動向を見極め、資産価値を見極めることが、変動の日々の中では重要となります。
是非丁寧に本当の街の姿を探ってください。

○渕ノ上弘和(ふちのうえ・ひろかず)/不動産ナビゲーター

2000年に立教大学法学部法学科卒業後、コンサルタントとしてECサイト運営会社を起業すると同時に不動産コンサルタントとしても業務を開始。区分所有建物の資産価値マネジメントに従事するため、2008年より住友不動産建物サービス株式会社、2013年より株式会社東急コミュニティーにて区分所有建物の共用部分・専有部分のマネジメントに従事した後、不動産の資産性を流通の側面から評価するために、2018年にコンドミニアム・アセットマネジメント株式会社の設立代表に就任。2022年2月より株式会社MFS不動産投資事業部執行役員として不動産投資総合プラットフォームサービス・INVASEの事業責任者に就任。