2024年夏のボーナス支給額1位は641万円!
日本経済新聞社が中間集計としてまとめた2024年夏のボーナス調査では、平均支給額が前年比6.92%増の90万7,772円と、3年連続で前年を上回りました。支給額1位は641万8,800円の三菱商事となっています。円安によって業績が好調であった自動車や商社が大きく伸びており、大手を中心に高額支給が相次ぎました。
国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は458万円となっています。日本の平均年収を軽く超える641万円という金額を1回のボーナスでもらえるわけですから、羨ましい限りです。
しかし、それだけもらえるとなると、税金や社会保険料も相当支払うことが予想できます。そこで、賞与が641万円支給される場合の手取りを計算してみたいと思います。
ボーナス641万円の手取りはいくら?
ボーナスからも月給と同じく、税金や社会保険料が引かれます。
●ボーナス(賞与)から引かれるもの
健康保険料
介護保険料
厚生年金保険料
雇用保険料
所得税
住民税は賞与からは引かれません。しかし、住民税は前年の所得(賞与を含む1年間の収入)をもとに計算するので、ここでの賞与は翌年の住民税に反映されます。
それでは、順に計算していきましょう。
手取りを計算するにあたって、以下の条件を設定します。
<条件>
40歳会社員
扶養家族: 2人
勤務地: 東京都
事業の種類: 一般の事業
ボーナス(賞与): 641万円
前月の給与から社会保険料等を差し引いた額: 60万円
※令和6年度の基準で計算
*健康保険料・介護保険料
健康保険料は、標準賞与額に健康保険料率をかけて算出します。40歳以上の会社員は介護保険第2号被保険者に該当し、介護保険料も合わせて徴収されます。なお、従業員負担は半分なので、保険料率に1/2をかけて保険料を出します。
健康保険料=標準賞与額×健康保険料率×1/2
●標準賞与額とは
標準賞与額とは、税引き前の賞与の総額から1,000円未満を切り捨てた額です。ただし、標準賞与額には上限があります。健康保険は年間累計額573万円(毎年4月1日から翌年3月31日までの累計額)となり、厚生年金保険については1ヶ月あたり150万円が上限となります。
ここではボーナスが641万円なので、上限を超えているため、573万円が標準賞与額となります。
健康保険料率は、協会けんぽの東京都の保険料率を参照します。40歳の会社員なので、介護保険第2号被保険者に該当し、介護保険料も含めて11.58%となります。
573万円×11.58%×1/2=33万1,767円
健康保険料と介護保険料をあわせて33万1,767円となりました。
*厚生年金保険料
標準賞与額に厚生年金保険料率をかけて求めます。
厚生年金保険=標準賞与額×厚生年金保険料率×1/2
厚生年金保険料の保険料率は18.3%で固定されています。
賞与の641万円は、厚生年金の1ヶ月あたり上限150万円を超えているため、150万円が標準賞与額となります。
150万円×18.3%×1/2=13万7,250円
厚生年金保険料は13万7,250円となりました。
*雇用保険料
雇用保険料は以下の式で算出します。
雇用保険料=賞与支給額×雇用保険料率(従業員負担分)
一般の事業の雇用保険料率(従業員負担分)は0.6%となります。
641万円×0.6%=3万8,460円
雇用保険料は3万8,460円となりました。
*所得税
ボーナスから控除される所得税の計算方法には次の3つがあります。
1. 通常の場合
2. 前月の給与(社会保険料を引いた金額)の10倍を超える賞与(社会保険料を引いた金額)を支払う場合
3. 前月に給与の支払いがない場合
2、3に当てはまらなければ、通常の計算方法になります。
2、3については、国税庁「No.2523 賞与に対する源泉徴収」を参照してください。
ここでは条件のとおり、通常の計算方法を用いて計算します。
1. 通常の場合
(賞与支給額-社会保険料)×所得税率
ここでの所得税率は、社会保険料等を差し引いた前月の給与と扶養親族の数によって決まる税率を用います。
国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から税率を求めましょう。
条件から、社会保険料等を差し引いた前月の給与60万円、扶養親族2人の交わるところに記載されている税率は18.378%となります。
参照: 国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和6年分)」
社会保険料は前出の計算のとおり、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料を合計して50万7,477円となります。
(641万円-50万7,477円)×18.378%=108万4,765円(1円未満切り捨て)
所得税は108万4,765円となりました。
*手取り
賞与から引かれる所得税と社会保険料がすべて求められたので、手取りを計算してみます。
賞与支給額-社会保険料-所得税=手取り
641万円-50万7,477円-108万4,765円=481万7,758円
ボーナス641万円の手取りは481万7,758円となりました。
約160万円引かれることがわかりました。割合にすると約75%となります。
ボーナス641万円もらっている人の年収は?
今回試算した条件で年収を出してみるといくらになるでしょうか。
前月の給与から社会保険料を差し引いた金額が60万円なので、額面の給与は約71万円になります。ボーナスが年2回、同額が支給されるとすると年間のボーナスは1,282万円になります。
71万円×12ヵ月+1,282万円=2,134万円となりました。
ボーナスを600万円以上もらっていても、月給が低い場合もあるので、この限りではありませんが、今回の試算のもととなったのは三菱商事のボーナスなので、実際に三菱商事の平均年収をみてみたいですね。
三菱商事ホームページの投資家情報にある「2022年度有価証券報告書」によると、従業員の平均年間給与は1,939万3,985円となっています。この報告書は2022年度なので、2024 年度は2,000万円を超えるのではないでしょうか。ここで試算した条件による年収に近いことがわかります。
ボーナス600万円以上もらっている人の年収は2,000万円以上といってもあながち間違いではないでしょう。ただし、日本の平均年収が485万円と考えると、該当する人はごく僅かです。会社員のトップ層ということですね。
石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。ブログ「ファイナンシャルプランナーみかりこのお金の勉強をするブログ」も運営中! この著者の記事一覧はこちら