6月14日付でNTTドコモの役員体制が変更され、前副社長の前田義晃氏が代表取締役社長に就任した。6月18日、報道関係者向けに開催された社長就任会見の模様をお伝えする。


前田氏は2000年にNTTドコモに中途入社。iモード全盛期から各種コンテンツ・サービスの企画などに携わり、2022年からの副社長時代にはスマートライフカンパニー長、平たく言えばドコモの非通信事業を統括するポジションを務めていた。

NTTグループ生え抜きではない転職組の抜擢であること、現在54歳と歴代社長の就任時と比較して若返りが図られていること、ネットワークや端末以外の領域を担当してきたことなど、今回の社長交代は異例の人事として注目を集めた。

ドコモに限らず、通信事業単体で収益を確立するのが難しい状況に追い込まれている昨今の携帯電話業界の市場環境を鑑みれば、これからの稼ぎ頭となる非通信事業、特に前田氏が率いてきたスマートライフカンパニーでも重点が置かれてきた金融・決済領域の事業展開の加速などを期待した抜擢であることは想像に難くない。

一方で、就任会見で語られた内容としては、現在のドコモの最重要課題であり他のサービスの土台でもある「通信サービス品質の向上」に多くの時間が割かれた。

都市部を中心に通信品質が低下しているとの声が目立つなか、Sub6周波数帯では全国カバー率No.1だと5Gエリア展開の進捗をアピールしたほか、2025年3月末までに東京周辺・名古屋・大阪・福岡で高速・大容量なSub6エリアをさらに拡大していくこと、MU-MUMOなどの技術の導入や新型基地局への移行を進めてていくこと、SNS経由のユーザーの声やアプリ利用データをもとに改善が必要な場所を早期に検知し、迅速に対策を行っていくことを宣言。
2024年度末までには、Opensignalのモバイルネットワーク体感評価(「一貫した品質」部門)でNo.1を目指すとした。

「お客様起点の事業運営」をテーマに、通信サービスの品質向上と「新たな価値創造の推進」「研究開発の加速」の3つに取り組む。

価値創造の具体例としてはやはり金融サービスが挙げられ、すでにマネックス証券との連携や「dスマートバンク」「ドコモポイ活プラン」などの取り組みがスタートしているように、スマートフォンを基点としてユーザーにとって身近なマネーライフのパートナーを目指す。

研究開発ではAI・6G関連のほか人工衛星(GEO/LEO)やHAPSを活用したNTN戦略が重点項目として挙げられた。

プレゼンの冒頭、前田氏は「テクノロジーと人間力で明日のあたりまえとなる価値を生み出す」という言葉を持ち出した。2年前、スマートライフカンパニーを立ち上げた際にも掲げた言葉だという。


社会価値の創造・変革はテクノロジーだけではなし得ず、それを支え実現するもうひとつの力は人間力だという趣旨で、特に当事者意識が重要だと語る。

非通信事業に携わる社員でもその土台となる通信品質のことを意識するといったように、目の前の仕事だけでなくドコモの仕事すべての当事者になってほしいと社員らにも伝えていくと思いを語った。

あくまで通信業界を主に担当している一記者としての私見だが、昨今イメージダウンしている通信品質の件は5GのSub6エリアを広げれば解決できるというほど単純な問題とは考えにくい。トラフィックの集中する都市部の特定箇所をフォローすれば良いように語られがちだが実際には複数の要因があり、セルエッジでのパフォーマンス低下など地方でも起きている事象も含まれる。

まずは全社を挙げて当事者意識を醸成し、自社サービスの現状や競争環境における現在地を把握することが改革の第一歩となることは確かだろう。