トランスジェンダー男性のアイデンティティを反映した作品作りで国内外から注目を集める期待の若手、飯塚花笑監督の最新作となる映画『ブルーボーイ事件』の公開日が11月14日に決定し、あわせて本ビジュアルが公開された。
○主人公・サチ役は演技未経験の中川未悠

本作の舞台は、1960年代後期に東京オリンピックや大阪万博で沸く、高度経済成長期の日本。
国際化に向けて売春の取り締まりを強化する中、性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けた通称ブルーボーイたちを一掃するため、検察は手術を行った医師を逮捕。手術の違法性を問う裁判には、実際に手術を受けた証人たちが出廷した。

オーディションを経て主人公・サチ役に選ばれたのは、ドキュメンタリー映画『女になる』(17)に出演した中川未悠。演技経験はないものの、サチ役に同化していく姿に監督らは胸を打たれた。

サチのかつての同僚たちを演じるのは、映画初出演となるドラァグクイーンのイズミ・セクシーと、連続テレビ小説『虎に翼』での演技が反響を呼んだシンガーソングライターで俳優の中村中。またブルーボーイ役として真田怜臣、六川裕史、泰平ら、注目の若手俳優たちが出演する。さらに、サチに証言を依頼する弁護士の狩野役を錦戸亮が、彼と敵対する検事役を安井順平が演じるほか、前原滉、山中崇ら、メインキャストを支えるための実力派俳優たちが集結した。

今回解禁となった本ビジュアルには、サチが証言台に立ち、真っ直ぐ前を向く姿が映し出されている。後ろにはブルーボーイのメイ、アー子、ベティ、ユキ、ツカサが傍聴席に並んで裁判を聞く様子を写す。そして、錦戸演じる弁護士の狩野は、腕組みをしながらサチの横に立ち、鋭い視線で存在感を放つ。「知られざる歴史がここにある」というコピーの通り、1960年代の裁判から着想を得て、性別適合手術が違法か合法か争う裁判に関わった者たちの姿を描いた社会派エンターテインメントに仕上がっている。

【編集部MEMO】
『僕らの未来』(11)、『フタリノセカイ』(22)、『世界は僕らに気づかない』(23)などで知られる飯塚監督。
かつて実際に起きた“ブルーボーイ事件”に衝撃を受けて映画化を決意し、当時の社会状況と事件について徹底的に調査。裁判での証言を決意したトランスジェンダー女性・サチを主人公に物語を構想した。その渾身の企画に惚れ込んだのが、『深夜食堂』シリーズをはじめ、『アヒルと鴨のコインロッカー』(07)、『岸辺の旅』(15)、『月の満ち欠け』(22)など数々のヒット作を手がけてきた映画プロデューサーの遠藤日登思氏。飯塚監督らと何度も脚本の改訂を重ねながら、オリジナル作品として本作を完成させた。
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