「トイレ掃除から楽になりたい!」という切なる願いから出発したこの短期連載、各社の「お手入れが楽」なトイレを取材していく。今回はLIXIL(リクシル)の「サティス」シリーズだ。
なお、どのメーカーでも特に上位モデルは優れた清潔機能を備えているが、人間による掃除を完全に「ゼロ」にできるわけではない点はご承知いただきたい。

毎日のトイレ掃除で「便器の底の汚れ」や「尿ハネによる床掃除」に悩む人は多いはず。凹凸や継ぎ目に汚れがたまりやすい、便鉢の隅々まで水が回らない、落ちにくい汚れや跳ね返り……など、トイレ掃除で気になる場所はたくさんある。そんな悩みを解決してくれるというのがLIXIL(リクシル)のタンクレストイレ「サティスX」だ。掃除を楽にするトイレをじっくり見てきた。

サティスのラインナップ

SATIS(サティス)シリーズはLIXILが手がけるINAXブランドのタンクレストイレ。3タイプあり、すべてタンクレスだ。価格(税別、工事費別)は「X」が49万7,000円~、「G」が38万7,000円~、「S」が32万6,000円~。特にXタイプは豊富なカラー展開が特徴で、高級感あるデザインが好評だという。ここでは最上位モデルのサティスXを中心に取り上げる。

水流の工夫と掃除しやすさ

従来の便器は水が一方向に流れ、最後は勢いが弱まるため、便器内部(便鉢)全体をキレイに洗うことが難しかった。汚れが残り、結局はブラシでこすらなければならないことも多々ある。


そこでサティスXは「パワーストリーム洗浄(3方向方式)」という水流を開発。水を3方向から時間差で出すことによって、水の流れ同士がぶつからず、常に力強い勢いを保てる仕組みだ。右側全体、後方全体、左側全体を順に洗い流し、便鉢の端まで水が届く。デモ機で流れを観察すると、便器内部の高い位置まで水が回っていて、しっかり汚れを流してくれそうだ。

便器そのものは、汚れがたまりやすいフチをなくしたフラットな構造。見えにくい部分が少ないため、ブラシでこすらなくてもトイレシートでサッと拭ける。トイレに置く掃除用具の数を減らせる? と期待が浮かんだ。

ユニークなのはノズル部分。おしり洗い用とビデ用の2本を内蔵している。LIXILの女性社員の声から生まれた機能とのことで、2本ノズルはINAXブランドのトイレだけだという。

使用前後は自動でノズル洗浄が行われ、「ノズルシャッター」部分も自動で洗い流す。ノズル部分は汚れがとても気になる部分だが、掃除も楽だし日々気持ちよく使えるだろう。


さらに大きなポイントは、ノズル先端だけを外して洗浄や交換ができること。こまめにノズルを掃除していても、年月が経つとどうしても落ちない汚れが付きがちだが、気になったらノズルだけを新品に交換できるのだ。これは大変ありがたい!

泡による自動お掃除

サティスXには「泡クリーン」という機能も。これは、設定時間になると自動で泡を排出して、便鉢内を約3時間つけ置きした後に自動で流すという機能。底の汚れや黒ズミ対策となり、掃除の頻度を減らせる。また、泡がクッションになって、トビハネ汚れの防止にも役立つという。

一般的なトイレは「使うたびにブラシなどでの掃除必須」「床や便座裏の掃除も必須」だったが、サティスXに交換したLIXIL社員の例では、掃除の頻度も1回当たりの掃除時間も大幅に減ったという。目立つような汚れが付きにくいこともあって、だいたい1カ月に数回の掃除頻度とのこと。ほとんど毎日トイレ掃除をしている筆者からすると、にわかには信じられず、うらやましい……。

泡クリーン機能は就寝中や外出時に実行するよう設定でき、生活スタイルに合わせられる。例えばリビングの掃除でいうと、ロボット掃除機に全体の掃除を任せて、気になるところだけスティッククリーナーでキレイにするのと似ている。便鉢の汚れや床への汚れを抑えることをトイレそのものに任せておけば、自分で掃除をするときもずっとラクだ。


そのほか「電動お掃除リフトアップ」機能は、リモコン操作で便座全体が自動で持ち上がるというもの。掃除しにくい便座と便器の接触部分や奥まで、スムーズに拭けるようになる。

停電対応とデザイン

さて、タンクレストイレは「停電時に流せない」と言われることがある。タンクレストイレはタンクがないぶん、水道と直結して電気制御で水を供給している。そのため、製品によっては停電時には通常通り水を流せない場合があるという。

サティスXおよびサティスGは小型タンクを内蔵しており、停電時はタンク式トイレと同じ仕組みで給水でき、使用後は手動レバーで排水可能。断水時にはバケツの水で直接流すこともできる。

LIXILは総合的な住宅設備メーカーでもあるため、トイレ単体だけでなく、空間全体の提案も魅力だ。調湿・脱臭機能を備えた「エコカラット」の壁材や、汚れに強い床材・壁紙などを組み合わせ、清潔で快適な空間を整えられる。部屋全体で清潔性と快適性をアップしたり、リラックス空間としてインテリアを整えたりできるのは、LIXILの大きな強みだ。

掃除する人の実感として……

家族で暮らしていると、トイレの使用頻度は多くなり、そのぶん汚れやすい。長期の休みはなおさらだ。
これはもう仕方がない。従来型のトイレは便器のフチ裏などをブラシでていねいに掃除する必要があって時間がかかっていたが、サティスXはそもそも、便器にフチがなく、便座やふたを掃除する際の延長的に拭ける点がよい。

泡によるつけ置きで黒ズミを抑えられる点にも注目だ。今はペーパーに洗剤を含ませて湿布しているのだが、サティスXなら寝ている間や外出時に「つけ置き→自動排出」を任せられるのは大変便利。今回の取材では「自宅に導入したら」――という観点で常に脳内体験しながら見ていたが、キレイ性能に優れた最新トイレの良さを改めて実感した。

伊森ちづる 家電・家電量販店ライター。家電量販店の取材や家電メーカーの取材、家電製品のレビューを中心に活動。売り手、メーカー、ユーザーという3つの視点で家電を多角的に見るのが得意。雑誌、ニュースサイト、ラジオ、シンクタンク、自治体での情報提供など、多方面で活躍中。最近は、テクノロジー×ヘルスケア、テクノロジー×教育などにも関心あり。趣味は音楽鑑賞(クラシック)とピクニック。 この著者の記事一覧はこちら
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