スコラ・コンサルトは11月5日、部下のモチベーションを下げないための、上司に向けたコミュニケーションチェックリストを公開した。
○上司の言動を見直すチェックリスト公開

同社は、これまでに2,000社以上の企業、公的機関の組織風土改革を支援しており、累計15万回を超えるオフサイトミーティングで社員同士の本音の対話をコーディネートしてきた。
その中で多くの会社でよく見られた、部下のモチベーションを下げる上司のコミュニケーションの失敗パターンがあることに気づいたという。

今回、そうした失敗例の中から一般的な11のパターンを抽出し、チェックリストとしてまとめた。本チェックリストは、組織風土改革や社内対話、オフサイトミーティングに詳しい同社のプロセスデザイナー若山修氏が監修した。

○チェック項目による評価の目安

チェックが1個以下の場合、世代や立場の異なる部下とのコミュニケーションが良好な可能性が高い。2~3個の場合は、コミュニケーションにモヤモヤしたものを感じている部下がいる可能性がある。4~5個になると、部下との間にだいぶ溝ができている可能性が高い。6個以上の場合は、今の部下が違うという認識を持ち、部下とのコミュニケーションの仕方を根本的に見直す必要がある。
○よくある失敗パターン

上司によく見られるコミュニケーションの失敗例を解説する。

「俺は聞いていない」

「俺は聞いていない」という発言には、暗に報告を怠ったと部下を責める気持ちがある。しかし、何もかもを報告することは不可能で効率的ではない。また、「上司が把握するためだけ」の報告をさせられ、上司から何のフィードバックもなければ、部下にとっては苦痛でしかない。

「価値観を押し付けてはいけないけど…」と言いながら、古い価値観を語る

「価値観を押し付けてはいけないけど…」と前置きしつつ古い価値観を語るのは、自分の価値観を部下に押し付けたい気持ちの表れ。
押し付けないまでも、自分(上司)の考えのほうが正しいという気持ちが背景にある。この言われ方をすると、部下や若手は反論しにくく、ただ聞くだけになり、「自分を理解してもらうことが難しい」と感じてしまう。

「昔は(パワハラが)当たり前だった」

厳しく理不尽な接し方をされてきた世代は「パワハラの中から学んできた」という、ある種の成功体験がある。しかし、その陰でけっこうたくさんの人が病んで潰されてきた事実や、また当時は夜遅くまで一緒に働き、つらいこともうれしいことも共にする時間が圧倒的に長かったという事実を考慮に入れていない。若手の部下にとっては「そう言われても…」と感じざるを得ない。

「気持ちなんてどうでもいい」

この発言をする上司の背景には「くよくよと悩むよりも、仕事の成果や目標に向かって突き進むほうが楽だ」と教えてあげたい、という親心があることが多い。その通りかもしれないが、「部下の気持ちがどうでもいい」ということはない。「そう思うあなたの気持ちはとても大事だけど、全体像を理解できていないことがあるんじゃないか。今月は成果や目標に集中してみて、その後で振り返ってみてはどうかな。」と伝えるなど、部下の気持ちを軽視しない発言が求められる。

「最後は君の気持ち次第だ」

上のケースと反対の言葉だが、説明がめんどうになると、最後は「気持ちの問題だ」と押し切る上司も散見される。そう言われた部下は、「だったら、最初から相談なんていらないじゃないか」と、それまでの対話を台無しにされたと感じてしまう。

「(感謝や褒め言葉は)言わずとも伝わるだろう」

言葉としてのコミュニケーションではなく、「きっと言わなくてもわかってくれるはずだ」という思い込み(もしくは一方的な期待)によって、思っていることを口にしない上司が散見される。
たとえば、「ありがとう」「助かった」「いいチャレンジでしたね」「がんばっていることはよくわかっているよ」など。言えばいいのに、「そんなこと、いちいち言わなくてもわかるだろう」という、出し惜しみが多い。このような対応をされると、「期待されているのかわからない」と言葉にしないまま、退職者が増えてしまうことも。

「あなた自身はどうしたいのか?」

めんどうだからではなく、人材育成の一環で「自分で考えさせる」という方針にのっとって、まずはこの問いを投げるというマネジメントも見受けられる。しかし、このオープン・クエスチョンは自分の仕事ぶりに自信のない段階では危険。答えが出せないことに追い詰められ、ますます自信をなくしてしまうことがある。

「自己責任で動いてくれていい」

「あなた自身はどうしたいのか?」とセットで出てくることが多いのが「自己責任論」。若手を尊重し、その意思を大事にしているつもりでも、部下にとっては、上司側の責任放棄に聞こえてしまう。部下は、「じゃあ、あなた(上司)の責任は?」と思っても、口には出さない。

(辞める理由は)「本音は給料の問題だろう?」

退職希望の社員にも最後まで面談などを通して向き合い続ける、人情派の上司から良く聞かれるセリフ。「自分は一生懸命に離職者の話を聞いてきたはずだ。しかし、離職者は本当のことは言ってくれないもの。
言いはしないが、やっぱり最後は給料が転職の理由だろう。」という思いが背景にある。しかし、そう思っている上司に、部下は本当の退職理由を言う気にはなれない。

「報連相をしっかりしろ」

「報連相をしっかりしろ」は、レベルの高いマネジメントをしている上司や、多数の部下から信頼されている上司からも、しばしば聞かれる。報連相は仕事の基本だが、部下から報連相をしっかり受けている上司は、このようなセリフをほとんど口にしない。このセリフを口にする上司は、自分と相性のいい部下とのコミュニケーション頻度が高いことが多く、コミュニケーション頻度が低い部下とのギャップがあることが多い。それを部下のせいにして「報連相をしっかりしろ」と言っている上司が散見される。

「どんなことでもいつでもいいから相談に来なさい」

「どんなことでもいつでもいいから相談に来なさい」は、部下に理解のある、一見良さそうな上司から出てきそうなセリフ。そこまでまずい言葉ではないが、この言葉は特に新入社員など経験の浅い社員には機能しにくい。まず「なんでも」というのは、何についてわからないかがわからないから難しい。「いつでも」は、いつ見ても忙しそうな上司に対して「いつでも」いいとは思えない。「相談」するためには「論点」がはっきりしないといけないが、論点をまとめるのは、業務理解と高度な思考が必要となる。「来なさい」は、「行ける」なら話は簡単だが、そもそも経験の浅い新入社員にとっては話に行くこと自体に高いハードルを感じることも多い。
かくして、新入社員は自分が何に困っているのかも明確ではないまま、いつしか心が乾いていってしまう。
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