藤井聡太竜王に佐々木勇気八段が挑戦する第38期竜王戦七番勝負(主催:読売新聞社)は、第4局が11月12日(水)・13日(木)に京都府京都市の「京都競馬場」で行われました。対局の結果、角換わりの混戦から抜け出した藤井竜王が138手で勝利。
4勝0敗のストレート防衛で5連覇を達成し、史上3人目となる永世竜王の資格を手にしました。
○桂馬が主役の中盤戦

藤井竜王3つ目の永世称号が懸かる大一番は競馬場の貴賓室「菊の間」での対局に。盤側では躍動する馬が描かれた水墨画が両対局者を見守ります。佐々木八段の先手番で始まった本局は駆け引きのすえ角換わり腰掛け銀に進展。守勢の右玉を打ち出した藤井竜王に対し、佐々木八段は桂交換から仕掛けのチャンスをうかがう展開に。桂馬が主役の中盤戦が幕を開けます。

先にペースをつかんだのは佐々木八段でした。右辺で手にした桂を8筋に打ったのが細かい利かしで、後手の飛車先を止めることに成功。後手の玉頭に大きな拠点を築いたところは持ち時間でもリードしており好調を思わせます。しかしここから藤井流の勝負手が火を噴きました。 

○歩頭の桂捨てで勝負あり

競馬界のレジェンド・武豊騎手が見守るなか封じ手が開かれ2日目がスタート。平凡な攻め合いでは速度負けと見た藤井竜王は歩頭に桂をタダ捨てする鬼手を披露。
続いて放った控えの桂との連携で金銀両取りをかけ、なんとか先手玉が見える形を実現します。形勢が逆転したのは最終コーナー、両者の持ち時間が約1時間で並んだときのことでした。爽快な飛車切りで角を手にした藤井竜王は正確な速度計算で一手勝ちを読み切ります。

佐々木八段が飛車での王手で追い上げを目指すも、躱しながら飛車に近づく玉上がりで持ち駒を温存したのが藤井竜王の決め手。怖いようでも藤井玉には際どく詰めろが続きません。終局時刻は18時37分、最後は自玉の受けなしを認めた佐々木八段が駒を投じて藤井竜王のストレート防衛が決定。豪快な歩頭桂の勝負手で棋勢を引き寄せた藤井竜王の強さが光る快勝譜となりました。

局後の記者会見にて藤井竜王は「今期感じた課題に終盤力がある」と反省しつつも「非常に名誉ある(永世竜王の)称号をつかむことができてうれしく思う」と嬉しさをのぞかせました。

水留啓(将棋情報局)
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