高市総理の国会での台湾有事をめぐる発言に中国が反発し、自国民の日本への渡航自粛を呼びかけました。今後、中国からの訪日客減少が予想されるものの、東南アジアなどからの訪日客でカバーできる可能性もあります。
日中関係悪化後、新しいインバウンド銘柄となりうる銘柄を取り上げます。
○高市総理の台湾有事をめぐる発言で中国が自国民への渡航自粛を要請

国会での高市総理の台湾有事をめぐる発言を契機に、日中関係が悪化しています。その結果、中国外務省が自国民に対し、日本への渡航自粛を呼びかける事態に至りました。ただし、一部地域は既にオーバーツーリズム状態のため、中国人の渡航自粛をオーバーツーリズム解消の好機ととらえる声もあります。しかし、中国人観光客中心に商売をしていた事業者は、今後の経営悪化が懸念されています。
○思った以上に底堅い可能性のあるインバウンド需要

日中関係の悪化により中国からの観光客が減っても、インバウンド需要にそれ程大きな影響はない、との意見もあります。特にホテルは、東京や大阪などの都市圏のホテル中心に、混雑で訪日を見合わせている東南アジアの観光客も多いと言われており、中国人の観光客が減少しても東南アジアなどからの観光客でカバーできる可能性も。日本政府もイスラム圏含め、中国以外からの訪日客の呼び込みに地道な努力をこれまでしています。

このように日中関係悪化、そして中国政府による日本への渡航自粛要請はインバウンド需要の変化を生み、新たな銘柄の株価上昇の機会となる可能性があります。

○脱中国の新しいインバウンド銘柄を探す

中国からの観光客減少後、新しいインバウンド銘柄の候補となりうる銘柄としては、以下が考えられます。

エイチ・アイ・エス<9603>
ANA-HD<9202>、日本航空<9201>
IGポート<3791>
スズキ<7269>

○エイチ・アイ・エス

旅行代理店の同社はコロナ禍で業績が大きく悪化しましたが、業績は回復傾向にあります。同社は東南アジア各国に複数の拠点を持っており、現地で日本への旅行商品も販売しています。
日本への観光客が、中国から東南アジア各国にシフトすることで、同社は東南アジアでの収益拡大が期待できます。
○ANA-HD、JAL-HD

インバウンド需要が中国から東南アジアなどにシフトすることで、それら地域の航空需要が増加します。特に東南アジアの主要都市への路線を多く持つ日系の航空会社は、増加する訪日客の主要な移動手段となるため、業績拡大が期待できます。
○IGポート

同社傘下のアニメーションスタジオ・プロダクションIGは東南アジアで人気の高いアニメ『ハイキュー!!』の製作を手掛けており、映画版『ハイキュー!!』の製作委員会のメンバーでもあります。『ハイキュー!!』の人気の影響から、日本男子バレーの人気が東南アジアで上昇しています。東南アジアからの観光客増加により『ハイキュー!!』の東南アジアでの人気が注目され、同社も注目される可能性があります。
○スズキ

米国はトランプ関税問題、中国は政治リスクと、自動車業界の海外事業は暗雲が立ちこめている状態です。国内自動車メーカーの多くが米国や中国のリスクを抱える中で、スズキは両国にはほとんど依存しておらず、海外売上はインド中心(一部は東南アジアも)です。インバウンド需要とは直接関係ありませんが、中国に頼らない自動車メーカーとして、スズキに改めて注目が集まる可能性もあります。
○以前から指摘の中国の政治リスクが顕在化、インバウンド需要に変化が生じる可能性

中国ビジネスは古くから政治リスクが指摘されていました。渡航自粛などはその政治リスクが顕在化した状態です。ただし振り返れば、2012年には尖閣諸島の国有化による中国での大規模デモの発生がありました。


訪日客の増加はコロナ禍前から始まりました。訪日客も一回転しつつあり、再来日で団体旅行より個人旅行にシフトが進んでいるとも言われ、訪日客層の変化も進んでいるようです。

高市総理の発言そして中国側の対応を契機にインバウンド市場の変化が進む可能性がありますが、その際にどのような業界・どのような銘柄に追い風が吹くのか注目されます。

石井僚一 いしいりょういち 金融・投資ライター。大手証券グループ投資会社の勤務を経て、個人投資家・ライターに。株式市場や為替市場に関連する記事の執筆を得意としている。資産運用記事やインタビュー記事も執筆中。第一種証券外務員資格保有。 この著者の記事一覧はこちら
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