レストランの休業や出勤待機、そして事業縮小によるリストラを経験し、現在は出張シェフの活動を増やしている飲食店シェフに、「アフターコロナの世界、飲食業界でどのように働いていくべきか」などをオンライン座談会方式で自由に考えていることをお話いただきました。

コロナ禍が改めて浮き彫りにした、窮地を乗り越えられるかどうかが決まる飲食店ごとの資本力の格差、販路拡大のための発想の転換、旧態依然の労働環境や人材育成の課題。


今回シェフ達が「今は出張料理の仕事に注力すべき」と判断した理由に共通して挙げられたのは、コロナ禍を経験して改めて必要性を感じた、一料理人としての営業力強化と経験値・スキルアップのためでした。

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超一流の料理人が、店舗に頼らない「出張シェフ」を選ぶのはなぜか https://cocokara-next.com/lifestyle/catering-chef/

コロナで浮き彫りになった飲食業界の課題とシェフたちの苦悩

・資本力がない個人経営のお店は窮地に立たされた
・販路拡大の為にテイクアウトを始めようとしても、これまでの延長線上で考えてもうまくいかない
・最終的には人材育成が重要だ
・飲食業界は人材が育ちにくい労働環境やしきたりが残る
・コロナ禍が改めて飲食業界における人材育成の課題を浮き彫りに

【シェフ緊急座談会】飲食業界での働き方の「ニューノーマル」

hitotokiさん:テイクアウトへの移行の技術的課題

テイクアウトへの移行に苦戦している店舗は多いように感じます。テイクアウトにはテイクアウトの技術があり、お弁当箱に詰めて渡せば良いというものではありません。衛生的な安全・美味しさなどを考慮し、テイクアウト用の箱選びひとつとっても、技術が必要です。

【シェフ緊急座談会】飲食業界での働き方の「ニューノーマル」

シンヤさん:ランチ需要の激減とデリバリーの苦労

オフィス勤務の方向けのランチ需要が激減しました。デリバリーもやってはいますが、店舗経営は基本的に待ちの商売になってしまいます。

店舗でUber等のデリバリーサービスを3つ始めたのですが、競合も多いため、安定して注文が入るようにするのは難しいです。

メニュー数を多く揃えないと注文は入りづらいです。注文を受け付ける端末からの注文のお知らせに気づかないなど、慣れないために起こる苦労もあります。

【シェフ緊急座談会】飲食業界での働き方の「ニューノーマル」

kawaさん:変わるべきなのは、指導者

「最近のシェフはすぐ辞めてしまう」「今の子は根性がない」という声がよく聞かれますが、問題なのは今の子ではなく指導者であり、旧態依然の人材育成文化。現場では新人に手を出すなどパワハラに近いことも行われています。特にミシュランの星を獲得するレベルの伝統あるレストランでは、良い伝統も悪い伝統も、次の世代に受け継がれて繰り返されているのです。

そこを見直さない限り人が育たず、外食産業は生き残って行くのは難しいと思っています。

自分たちの世代で変えて行かなければいけないという使命を感じています。

シェフたちの戦い~特に広がる店舗に依存しない働き方

・店舗に依存しない出張シェフという働き方にチャレンジ
・出張料理はスキルアップを図る場所
・出張料理での経験を通じ積極的にスキルアップを図っている姿が明らか

シンヤさん:スキルアップのために出張料理の世界へ飛び込んだ

元々は店舗経営を100%の働き方として考えていたところ、コロナ禍をきっかけに、攻めにいけるような販路を増やしていく必要性を痛感しています。出張料理ができるほどの料理レパートリーはなかったため尻込んでいたのですが、一人の料理人として店舗に頼らない働き方をして行くために、スキルアップしていくことを決意して、出張シェフの活動も始めました。

【シェフ緊急座談会】飲食業界での働き方の「ニューノーマル」

Ryuさん:個人としてのステップアップ

お店の中にずっといたら、新しい人との出会うなどが少ないため、良い刺激を受けるためにも外に出ることは大切だと考えています。今後はパーソナルトレーナーの需要があるように、栄養士さんや薬膳などとパッケージ化して、アスリート専属の料理人なども目指してみたいと考えています。

【シェフ緊急座談会】飲食業界での働き方の「ニューノーマル」

masakiさん:これからは店舗だけの時代じゃない。でも店舗で働く楽しさは捨てられない。


コロナ以前からシェフ仲間とは「これからは店舗だけの時代じゃないよね」という話をしていました。コロナは、動き出すきっかけになりました。

これからは店舗の時代ではなくなり、もっと働き方を変えて行くべきなのかもしれません。でも、店舗で働く楽しさは捨てられません。コロナ禍でも来てくれる常連さんとのカウンター越しの会話は何にも代え難く、精一杯目の前のお客様を喜ばせたいのです。店舗の勤務と出張シェフを両立させていきたいと考えています。

アフターコロナ:これからの飲食業界で生き残るのに必要なこと

・個の力がより試される時代
・一料理人としての営業力やスキルを磨き続けないといけない

【シェフ緊急座談会】飲食業界での働き方の「ニューノーマル」

masakiさん:一人の料理人としての経験値・スキルアップ

店舗はお店のカラーに合わせたメニューを提供し、お客様もそれを目的に来店していました。一方、出張料理ではお客様主体にメニューを提案し、悩みに合わせて、いかに一人の料理人としての経験を生かして応えていけるかという勝負になっています。得意なフレンチコース料理を活かしつつ、栄養や薬膳などの知識を身につけてもっと喜んで頂ける人の幅を広げたいと考えています。

kawaさん:イノベーティブな発想と、個人としての営業力

一度店舗から離れたお客様を取り戻すには、サービスが大事になると思います。味が美味しいのは当たり前。どれほど強い想いを持っていたとしても、保守的にやっていては、店舗は潰れていってしまうでしょう。

今までと似たようなことをしていても意味がありません。いかに感動させられるかを考えて、さらにイノベーティブな発想が必要になってきていると感じています。

店舗ではさらに人材育成が最重要視されて、シェフ個人としてのは営業力がある人が生き残っていく世界になるのではないでしょうか。

シンヤさん:一料理人としてのスキルや知識を活かす方法を見つける

店舗以外に、攻めにいけるような販路を増やしていく必要があります。リスクヘッジできるよう、店舗以外の商圏や販路で活かせる、栄養面や薬膳の知識体系なども勉強していきたいです。

【シェフ緊急座談会】飲食業界での働き方の「ニューノーマル」

Ryuさん:資本と経営力、柔軟な発想

資本がないと、デリバリーなど売り上げを上げる工夫もできません。

アフターコロナの時代に生き残るには、経営する力がないと厳しいと感じています。工夫次第で商圏をどう拡大させるか、常に考え続けられる人であることが重要だと思います。

出張シェフサービス「シェアダイン」では、コロナでお困りの飲食店勤務シェフに対し、早くにお仕事を紹介できるよう優先的にご利用者様にご案内するなどのシェフ応援プログラムを実施しています。

店舗に依存しない働き方の選択肢の一つとして、また、スキルアップがはかれる職業として出張料理という形が、今後ますます広がっていきそうです。

[文:食の専門家による出張料理サービス「シェアダイン」(https://sharedine.me/)]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

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