木村拓哉ほど“月9”という言葉が似合う俳優もいないが、その木村自身が、先日の完成披露試写会で「月9って、もう言わなくていいんじゃないかな」と発言して話題になった。とはいえ、4月10日、『風間公親-教場0-』(フジテレビ系/毎週月曜21時)が月9連続ドラマとしてスタートしたことには否が応でも期待が集まる。

ここ数年の木村を見ても、『教場』シリーズの風間公親は、“当たり役”と言い切っていい役だからだ。

【写真】50歳を迎えた木村拓哉の“当たり役”風間公親

■1990年代、2000年代のスター街道ど真ん中を歩いてきた木村拓哉

 いまや国民的俳優といっても大げさではない存在の木村だが、最初に注目を集めたのは1993年に放送された『あすなろ白書』だろう。石田ひかり筒井道隆が主演を務め、西島秀俊も人気を集めた青春ドラマだ。そこにあって、木村はまだまだ控えめな存在ながら、その初々しさが光っていた。そこからグイグイ存在感を示し始め、一気に時代をけん引する存在になっていく。

 『ロングバケーション』が1996年、『ラブジェネレーション』が1997年、『ビューティフルライフ』(最高視聴率41.3%)が2000年なのだから、その加速ぶりに驚く。青春もの、恋愛もの、そして職業もの、特に『HERO』(2001)シリーズのように、ベテラン陣の真ん中に立つ作品も成功に導くなど、どんなジャンルであろうと、堂々たる主演ぶりを見せてきた。

■これまで重ねてきたものが自然と滲み出ている

 2020年と2021年の正月、それぞれ2夜連続にわたりSP版の『教場』『教場II』が放送。神奈川県警の警察学校で、生徒たちをふるいにかけていく冷徹な、義眼の教官・風間を木村が演じ切って好評を得た。ときに行き過ぎにも見える方法で生徒たちを追い詰める迫力満点の姿は、結局は生徒を導いているものの、ヒール的に映る瞬間もあり、30年も陽の当たる街道を走って来た木村の影を新鮮に浮かび上がらせた。

 そしてキャリアを重ねてきて出会った『教場』では、生徒役の若い俳優たちをメインに立たせながら、横に立ってなお存在感を増し、画面を引き締めて見せた。単体として、風間公親役が、単純に木村拓哉の風貌に似合っていたというだけでなく、やはりこれまでの木村が俳優として積み重ねてきたものが、きっちり内包され、滲(にじ)み出ているからだろう。


■“風間道場”における風間も、すでに十分冷徹な刑事の顔だった

 そして50歳を迎えた木村が主演を務める『風間公親-教場0-』は、新人刑事たちの指導刑事をしていた現役時代を描く前日譚だ。

 第1話では、交番勤務から神奈川県警本部の捜査一課に配置換えとなった瓜原潤史(赤楚衛二)が、“風間道場”とされる指導を受けながら事件にあたった。『教場』シリーズは、長岡弘樹氏の小説を原作としており、第1話は、それぞれ短編集の『教場0 刑事指導官・風間公親』第1話「仮面の軌跡」と、『教場X 刑事指導官・風間公親』第1話「硝薬の裁き」に、アレンジが加えられたストーリーだった。

 エピソード0とされているため、優秀な刑事としての能力はそのままに、鬼教官とはまた違う、現役刑事としての(多少は優しさもある)表情が見られると思っていた部分もあったのだが、第1話を見る限り、義眼でこそないものの、すでに “風間道場”における風間も十分に冷徹な指導役の刑事の顔である。

■若手刑事への指導を通じて人間の弱さを炙り出す風間=木村に期待

 さらに正直、ドラマ向けの脚色により、刑事もののトリックとしての色合いは弱まった気がする。しかし『教場』が生徒たちの暗部に切り込み人間ドラマを描いたように、本作も“風間道場”で学ぶことになる5人の若き刑事たち、瓜原、隼田聖子(新垣結衣)、遠野章宏(北村匠海)、鐘羅路子(白石麻衣)、中込兼児(染谷将太)の人間的な弱さや変化を見せていくことに主眼を置いているようだ。

 赤楚演じる瓜原は、「苦しんでいる人の気持ちが理解できる。人に優しい警察官になりたい」とポリシーを掲げるキャラクターだが、第2話でさらに、事件解決と同時に、風間は瓜原の内部をえぐり出していくだろう。人間の弱さ、醜さ、同時にそこから這い上がっていく強さを提示する『教場』シリーズ。風間イコール木村は、その命題を見事にクリアして伝えてくれるはずだ。もちろん、風間が義眼になった事件と遠野の詳細についても当然知りたい。そしてその時、風間自身の表情はどう動くのか。
楽しみに見続けたい。(文・望月ふみ)

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