急速な勢いで変化するモバイルコンテンツ業界。変化についていけず淘汰される一方、最前線でヒットタイトルを連発するメーカーがある。
株式会社ボルテージだ。女性向けの恋愛ドラマアプリでユーザーから熱い支持を受けるボルテージのコンテンツ制作とヒットの法則に迫った。

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 「会社では秘密だぞ」

 憧れの一人暮らしが始まると思ったら、その家にはなぜか会社のイケメン上司が住んでいた――。そんな刺激的なシチュエーションのアニメCMを覚えているだろうか。今夏に公開されるやいなや、日本のみならず世界中で話題を呼んだ恋愛ドラマアプリ「上司と秘密の2LDK」だ。制作は株式会社ボルテージ。
女性向け恋愛ドラマアプリ「恋アプ」を中心に多数のアプリをリリースしているヒットメーカーだ。

 変化の激しいモバイルコンテンツ業界で、なぜボルテージはこれほどまでにヒットを連発することができるのか。

 「“恋愛”と“挑戦”をキーワードに、ストーリーを楽しめるアプリを制作しています。社内で決めているのはターゲットが大人の女性であることと、舞台となる世界観で同じようなものが続かないようバリエーションを持たせることくらい。あとは各企画セクションがブレストして制作が進んでいきます」。

 そう語るのはボルテージの横田晃洋氏だ。
広告業界を経てボルテージに入社し、2013年7月から代表取締役社長を務めている。

 冒頭に挙げたユニークなCMの数々は、広告業界の経験を持つ横田氏が主導して生まれた。アニメ風CMに関しては制作会社を使わず、絵コンテからすべて社内で作り上げたという。もちろん、ただユニークなだけではない。こうしたCMにもヒットの法則がふんだんに散りばめられている。

 「ゲームのストーリーを作る上で重要なのが、物語を“変化”させること。
たとえば、最初はお金がすべてだと思っていた主人公が、最終的には愛が大事なんだと気づく。こうした変化こそがヒットするストーリーのポイントなのです。CMも同じで、30秒の枠の中で何かしら変化を加えています」。 一方でゲームとしてのシステムは、なるべく複雑にならないように気をつけているという。

 「普段あまりゲームをしない女性が見ても面白そうだなと思えるものにするために、システムはわかりやすく、コアになりすぎないことを心がけています。キャラクターも青やピンクの髪のように、リアルからかけ離れたものにはならないようにしていますね。
ファンタジーが舞台のときはそれでもいいのですが、軸はあくまでもカジュアルです」。

 女性向け恋愛ドラマアプリを事業の柱とし、東証一部上場を果たすまでに成長したボルテージ。同社が切り拓いた女性向けのドラマアプリ市場は今後どうなっていくのか。

 横田氏は「スマホが今の形で進化していくなら、かなりの市場規模に成長する」と見ている。

 「恋愛ドラマアプリはゲームというよりも、ストーリーを楽しむもの。競合するのは他のゲームよりも、むしろ恋愛漫画や小説だと考えています。
今後はストーリーを楽しむためのデバイスとして、アプリをさらに根付かせていきたいですね」。

 最近では新たな展開として、サスペンスアプリのリリースや海外展開にも力を入れているボルテージ。同社の挑戦はこれからも続く。(取材・文・写真:山田井ユウキ)。