世にはびこる“意識高い系”をドラマ化した『その男、意識高い系。』で、女の伊藤歩が連続ドラマ初主演を果たす。
伊藤が演じるのは、“意識高い系”の20代男子に振り回される、OLの春子。30代になって改めて仕事との向き合い方を見つめていく女性に扮した彼女に、「不安だった」という20代、「女優という仕事の楽しさを実感している」という今について、胸の内を明かしてもらった。

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 “意識高い系”とは、カタカナ言葉を連発するなど言葉で自分を飾り立て、一見スゴイ人に見える人たちを表す言葉だ。「ワールドワイドな気がする」と伊藤。「私も海外にいたことがありますが、海外でこれからのし上がっていこうという人は、自分をよく見せようと思うのは当たり前。
私は真面目な方で、“私なんて”と考えてしまうタイプ。お世話になった人には“はったりをかませ”とよく言われていました(笑)。世界的に見たら、あれくらいのポジティブさがないとやっていけない。見習いたいと思いました」と“意識高い系”にはむしろ、好印象を抱いている様子だ。

 春子は、20代と30代の前半を仕事に懸けてきた猪突猛進型のOL。「春子は、頑張って働く日本の女性の象徴のような存在。
仕事に対して一生懸命で、不器用なほど自分の生き方を通そうとするところは、すごく共感ができた」とうなずく。10代で芸能の世界に飛び込み、30代のこれまで女優道を邁進している彼女。仕事に懸ける上では、「尊敬できる人に出会うこと」を大切にしているという。

 16才で出演した岩井俊二監督作『スワロウテイル』のアゲハ役で大注目を集め、『リリィ・シュシュのすべて』では鮮烈な坊主頭を披露。スクリーンを支配するような透明感をまとい、見る者の心を奪った。「母と祖父が俳優になりたくて、その夢を託された形でこの世界に入って。
『スワロウテイル』の頃は、正直、女優になりたいというはっきりとした気持ちはなかったですね」と振り返る。

 また10代にして大役を手にしたことについて、「幸運にもよい巡り会いがあって。でも本当は苦労をして辿り着かなければいけなかったところを何十段も飛ばしてしまった分、20代がキツかったということもあります。みんなが“すごい”と言ってくれるけど、これで合っているのかなと悩む時期はすごくあって。自分の実力のなさをどこかでわかっていたからこそ、不安だったのかもしれません」と打ち明ける。
 そんな中、成長への力となってくれたのが「尊敬できる人」の存在。
「自分を知るチャンスや成長できる機会をたくさんもらった」といい、尊敬する人のひとりとして俳優・浅野忠信の名前を挙げた。「勇気のもち方を教えてくれた。例えば海外のオーディションがあったとして、時間がないなどいろいろな理由をつけて、挑まないのは間違っていると言ってくださったときがあって。私としては正論のつもりで、あれもこれもダメだと思ってしまっていた。最善を尽くしてできないのと、最初からやらないのは違うんだと言ってくれて。ああ、こういう生き方をしたいなと思いました」。

 
 女優という仕事が「ここ4、5年で本当に楽しいと思えるようになった」と微笑み、「今は、目の前にいる俳優さんやその空気を感じて集中してお芝居をするのがすごく楽しい。そこをもっともっと、広げていきたいです」と力を込める。今回の現場では、林遣都、大地真央と共演。「大地さんは本当に素敵な方。また良き素晴らしい先輩を発見しました。遣都さんは、ものすごく真面目でいつもお芝居のことを考えているような方。
スタッフ、キャスト全員の集中力と尽力を実感できる現場でした」。自分と誠実に向き合い、女優道をまっすぐに歩む姿がたまらなく魅力的だ。(取材・文:成田おり枝)

 『その男、意識高い系。』はBSプレミアムにて、3月3日より毎週火曜23時15分から放送。