2016年公開の映画『クリーピー』(黒沢清監督)で、俳優の西島秀俊香川照之が、5作目の共演を果たすことが発表された。西島と香川と言えば、これまでドラマ『ダブルフェイス』、『MOZU』シリーズ、『流星ワゴン』、11月公開の映画『劇場版 MOZU』、そして本作……。
なぜこんなにも共演が多いのだろうか。

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 西島は『流星ワゴン』製作発表の場で「香川さんとは20年ほどのお付き合いになります」と語っていたように、2012年に『ダブルフェイス』で初共演を果たす以前から、お互い役者として意識する間柄だったことを明かしている。

 互いに相手の印象を「ストイック」「本気」と硬派なイメージで位置づけていた西島と香川。極限まで役に向かい合うという根っこの部分は共通しているが、二人のフィルターを通して表現されるキャラクターは、非常に対照的だ。もちろん作品によって違いはあるが、“動”の香川、“静”の西島というイメージを持つ人も多いだろう。

 そんな二人がタッグを組むと、作品に強いコントラストが生まれる。
キャラクターがより深まるのだ。しかも西島が「恐ろしい俳優」と香川を称するように、自らの内に眠っているものを呼び起こすという相乗効果もある。『ダブルフェイス』や『MOZU』でメガホンをとった羽住英一郎監督もインタビューで「どんどん要求したくなる俳優」と語っている。実際『MOZU』の現場では、西島は「死ぬんじゃないかと思った」と当時を振り返っていた。 西島に取材機会の多い映画ライターも、その魅力を「内からにじみ出る感情が、観客の間に入り込んでくる俳優」と語る。そういう意味では、西島の“内なるものを呼び起こす”俳優として、香川は最適なのかもしれない。
これまで対立する設定が多かった二人だが、『流星ワゴン』では親子という間柄を熱演。この作品でも反目するシーンはあるものの、年の近い親子という特異な設定を深い愛情で演じ、新たな組み合わせの妙を披露した。
 
 映画『クリーピー』では“身近に潜む恐怖”をテーマに、一家失踪事件を追う元刑事で犯罪心理学者の高倉(西島)と、失踪家族の隣人(香川)という立ち位置で共演。一時期「化学反応」という言葉が流行ったが、西島と香川のタッグは、よくあるバディものでは出せない“硬質”な佇まいだが、割ってみるといい意味で“ドロドロ”した感情が湧き出てくる、予測しづらい化学反応を起こす。この混沌とした調和こそが、二人の魅力であり、制作側が何度も共演させたいと思う理由ではないのだろうか。