2016年春ドラマ(4月~6月)は「ドラマのTBS」が本領を発揮したクールとなった。松本潤が主演を務めたリーガルドラマ『99.9-刑事専門弁護士-』(TBS系)は、平均視聴率が17.2%、初回15.5%、最終回&最高ともに19.1%(いずれもビデオリサーチ調べ/関東地区)すべてと、すべてにおいて1位を達成。
同作は、香川照之を筆頭に、榮倉奈々片桐仁青木崇高岸部一徳など脇を固める確かな演技者に支えられ、主演の松本の型破りな弁護士像が生き生きと輝きを放った。

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 『99.9-刑事専門弁護士-』は、有罪率99.9%と言われる刑事事件の裁判で、残された0.1%の可能性を追求する物語。松本出演のドラマといえば、約10年前に放送された『花より男子』(TBS系)シリーズの道明寺司が、長年名刺代わりだった。そして、今年『99.9~』で演じた、わが道を突き進む天才肌で思いこみが激しい弁護士の深山役は、「イケメンだけどなんか変、ちょっと鼻につく」という松本にしかできない絶妙なバランスを体現し、ユーモラスに役を昇華させた。松本の20代が『花男』ならば、『99.9~』は、30代の新たな代表作となったはずだ。

 そんな松本と同じグループ・リーダー大野智が自身初のラブコメディに挑戦した『世界一難しい恋』(日本テレビ系)は、平均視聴率12.9%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と2位につけた。お金はあるが人望はない一流ホテルの社長・鮫島(大野)が、従業員の美咲(波瑠)に恋をする内容で、回を増すごとに鮫島の不器用すぎる行動が、「かわいい」と視聴者の心をつかんだ。これまで『魔王』(TBS系)で演じたクールな男や、『怪物くん』(日本テレビ系)のような少年のような側面を合体させ、いいとこどりしたようなキャラクターに、女性が夢中になるわけだ。

 同じくラブコメディ枠だと、『私結婚できないんじゃなくて、しないんです』(TBS系)の中谷美紀が演じた独身アラフォー女性の姿が、大きな共感を呼んだ。容姿端麗&高収入のみやび(中谷)が、藤木直人演じる超ドSの十倉から恋愛指南を受けるという物語。みやびが関係を持つ男性2人にも焦点が当たり、視聴者は、徳井義実が演じた“エベレスト”桜井派、瀬戸康史演じる“フェアリー諒太郎派に分かれ「どちらがいいか」議論が巻き起こるほど。最終回では、そんな世間の声をよそに、まさかの十倉の元に走るみやびの姿も印象的だった。
 そのほか、春ドラマ期ではゴールデン以外にも熱の入った作品が見られたので記しておきたい。『毒島ゆり子のせきらら日記』(TBS系)では、前田敦子が恋愛体質の政治記者を演じ、二股や不倫の恋に身を落とすさまを描いた。前田は激しいラブシーンはもちろんのこと、セクシーなランジェリー姿も披露するといった表向きの話題を作る一方で、付き合っていたはずのフィアンセ・小津翔太(新井浩文)が家庭持ちなことを知り、抜け殻のような表情を見せたり、そんな小津への不信感でおかしくなりそうな女の精神をリアリティを持って演じ切った。SNSでも、危機迫った演技に「すごい」「あっちゃん神」など絶賛の声が相次ぎ、前田の女優としての新たなステージを思わせた。

 同じく夜帯のドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)は、若者の群像劇を書かせたら右に出るものはいない宮藤官九郎が脚本を務め、岡田将生松坂桃李柳楽優弥という20代を活気づかせる3人が“1987年生まれ”のゆとり第一世代が葛藤する姿を演じた。「ゆとり」「さとり」と切り離した側、切り離された側の、世代を超えたやりとりが、今を反映するメッセージとして深く刺さる作品で、日曜日の22時台という時間もあいまって、奥深く楽しめる1作だった。系統はバラバラだが、いずれにせよ物語を引っ張る主人公のキャラクターが強く立った作品に、軍配が上がった印象の2016年春クールだった。(文:赤山恭子)
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