ユダヤ人女性として初めての米最高裁判事にしてポップアイコン、アメリカ女性のリーダー的存在でもあり続けるルース・ギンズバーグ。彼女の不屈の半生を描いた映画『ビリーブ 未来への大逆転』の公開を前に、主演のフェリシティ・ジョーンズが来日した。
「#MeToo」など女性のパワーに注目が高まる今、運動の先駆け的存在と言えるルースを演じること、またハリウッドの変化についても話してもらった。

【写真】フェリシティ・ジョーンズ『ビリーブ 未来への大逆転』インタビューフォト

 昨年最高裁判事主任25周年を迎え、またトランプ大統領の就任でリベラル派のアイコンとしてさらに注目を集めるルース・ギンズバーグ。今作では、まだ女性が職に就くことが困難だった時代に、弁護士として、妻として、母として、ルースが逆境や困難に立ち向かい、男女差別を問う歴史的裁判に挑む姿が描かれる。

 「彼女の全ての側面を見せることが私の仕事だと感じていた」というフェリシティ。「彼女の葛藤をありのままに見せないといけないと感じた。それがあるから、彼女の決意の強さを見せる事が出来ると思った」と語る。しぐさにも「100%」こだわったとそうで、「彼女のしぐさを取り入れようと、執着していたの(笑)」と明るく話す。

 今作に登場する法廷シーンのスピーチは、映画史上、女性のものとして一番長いセリフ。法廷記録として残るさまざまな彼女の声を何度も聞いて「撮影に入る3ヵ月くらい前からセリフが身体に入るように準備した」という。5分32秒にも及んだスピーチは、当初脚本を読んで不安になったとのことだが、「逆に良かったのは、このスピーチさえ自分が掴むことが出来れば、この作品のルースを演じられるとわかっていたこと」と自信をのぞかせる。

 大物プロデューサーのセクハラ騒動をきっかけに、ハリウッドは今、女性の声に注目が集まっている。その中でフェリシティ自身、変化を肌で感じているそう。
「まだまだ戦いの道は半ばで戦わなければならないと思うけれど、#MeTooがあり、この業界はより透明性が増したわ。男性も女性も、いじめ、パワハラを経験している方が沢山いると言う事が明るみに出て、より健康的な業界に変わりつつあると思います。ただ、この変化が永久のものであってほしいと思う」と胸の内を明かしてくれた。 女性監督が少ない事が問題視されている中、今作は女性のミミ・レダーが監督を務めている。「ルース自身が経験していることを理解できる人でなければ、この映画を作る事は出来ないと思いました。レダー監督も男社会の映像の世界で生きてきて、色んな葛藤を経験していらっしゃる。だからこそ理解できたし、ほかの監督の手でこれだけの作品が作れたとは思えません」と、女性監督が手掛ける意義を話してくれた。

 また今作では、サクセスストーリーだけでなく、夫マーティンとのロマンスについても描かれる。マーティンを演じるアーミー・ハマーについて「すごくリラックスしていて、おおらかな方。わたしも映画『博士と彼女のセオリー』で、相手をサポートする妻という役を演じた事があるけれど大変でもあるの。でも彼は、役者同士現場で競争心を出してしまう人もいる中で、そんなところが一切ない。チームとしてお互い支え合いながら1つの作品を作るという感じ。
まっすぐで裏表がなく、素敵な方です」と話してくれた。

 演じ終えた今でも、尊敬できるロールモデルとして、ルースに想いを馳せるというフェリシティ。彼女が演じる歴史を変えた女性最高裁判事ルース・ギンズバーグに注目したい。(取材・文:寺井多恵)

 映画『ビリーブ 未来への大逆転』は3月22日より全国公開。
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