2019年7月に死去した名優ルトガー・ハウアーが謎の殺人ヒッチハイカー役を怪演した映画『ヒッチャー』(1986)が、『ヒッチャー ニューマスター版』となって、2021年1月8日より全国順次公開されることが決まった。HDリマスター化された本素材での上映は世界初。
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本作は、殺人ヒッチハイカーを乗せたばかりに、その後逃げても逃げてもひたすら狙われ続ける青年の恐怖と絶望を描いたサイコスリラー。
シカゴからサンディエゴへの砂漠地帯。陸送の仕事をしていたジム・ハルジーは、ある嵐の夜、1人のヒッチハイカーを車に乗せる。しかし、ジョン・ライダーと名乗るその男はハンドルを握るジムの喉にナイフを突きつけ、「俺を止めてみろ」と脅しだす。ジョンは恐ろしい殺人鬼だったのだ。一瞬の隙を見てジョンを車から突き落としたジムだったが、それは恐怖の始まりにすぎなかった。何度も執ように襲いくる恐怖の殺人鬼。警察や協力者でウエートレスのナッシュを巻き込んで事態は悪化していく―。
メガホンをとったのは、本作で監督デビューしたロバート・ハーモン。殺人鬼の動機や人物背景などをほぼ排除し、彼らの置かれた状況だけを丁寧に描くことで登場人物の本質をにじませていく演出が光っており、J・J・エイブラムス監督は『10 クローバーフィールド・レーン』(2016)製作時に本作の影響を受けたことを明かしている。
撮影は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)のジョン・シールが担当しており、盛大に横転する車や燃え上がるヘリコプターなど、サービス精神旺盛な場面が多い上、霧の中にたたずむ怪しげなヒッチハイカーや、人影もなくどこか不安をあおる広大なハイウエーなどの美しい場面も映し出される。
ある日突然命を狙われ逃げ惑う青年ジム役を務めたのは、スティーヴン・スピルバーグ監督『E.T.』(1982)で自転車少年グループの1人として映画デビューし、翌年フランシス・フォード・コッポラ監督『アウトサイダー』(1983)の主役に抜てきされたC・トーマス・ハウエル。あらゆる手段でどこまでもジムを追う、神出鬼没で不気味な殺人鬼ジョン・ライダーをルトガー・ハウアーが演じた。クリストファー・ノーラン監督はこのハウアーの怪演を「渾身(こんしん)のサイコパフォーマンス」と絶賛し、自身の作品『バットマン ビギンズ』(2005)で彼を起用した。
普通の青年ジムが殺人鬼ジョンと死闘を繰り広げ続けるうちに、いつしか不思議な共鳴が生まれていくさまも見どころだ。
映画『ヒッチャー ニューマスター版』は、2021年1月8日より全国順次公開。