綾瀬はるかと高橋一生の熱演が話題となり2021年1月期ドラマの中で特に高い視聴率を記録しているのが『天国と地獄 ~サイコな2人~』(TBS系/毎週日曜21時)。本作を含め古くは映画『転校生』など入れ替わりモノには、キャストの入れ替わり後の演技から、周囲にバレそうな状況や元に戻れるかどうかのハラハラドキドキなストーリー展開まで見どころたっぷりで、個性あふれる名作が多い。
【写真】ガッキー、菅田将暉、清原果耶ら“入れ替わった”5組
◆遠藤憲一⇔菅田将暉 総理大臣と息子が入れ替わる政界コメディ『民王』
『半沢直樹』や『下町ロケット』の池井戸潤の同名小説を、遠藤憲一と菅田将暉のダブル主演で実写化したのが2015年放送の『民王』(テレビ朝日系)。政治家の家系に生まれた保守政治家が、政治に関心の薄い大学生の息子と入れ替わってしまうことで起こる騒動をコミカルに描いていく。原作では遊びに明け暮れるヤンキーっぽいキャラクターとして描かれた大学生の息子・翔を、ドラマ版では料理や美容に詳しい大学生に改変。入れ替わりを器用に演じ分ける遠藤の抜群の演技力と、イマドキ大学生を等身大で表現した菅田の存在感が見事にマッチし高い評価を集めるに至った。遠藤ふんする総理大臣・武藤泰山の公設秘書役で出演した高橋一生が、本作をきっかけに大ブレイクを果たしたのも見逃せない一作。
◆舘ひろし⇔新垣結衣 父娘が入れ替わるハートフルコメディ『パパとムスメの7日間』
舘ひろし演じるサラリーマンの父と新垣結衣扮する女子高生の娘の入れ替わりを描き、放送当時高い視聴率を誇ったのが2007年の『パパとムスメの7日間』(TBS系)だ。五十嵐貴久の同名小説を実写化した本作は、しがないサラリーマンの父・川原恭一郎(舘)と反抗期真っ只中の娘・小梅(新垣)が入れ替わることで生じるトラブルを、2人が協力しながら乗り越えるさまをハートウォーミングに描いている。人格入れ替わり後の頼りなさげな恭一郎と彼をサポートする小梅のコンビネーションが軽妙に描かれている一方で、父の目から見た女子高生のコミュニティと娘の視点から浮き彫りになる大人社会の矛盾がしっかりと描写されている点がドラマに奥行きを与えている。◆清原果耶⇔富田望生 若手実力派女優の演技バトルが見もの『宇宙を駆けるよだか』
ジャニーズWESTメンバーの重岡大毅と神山智洋のダブル主演が話題を集めた2018年配信の青春ドラマ『宇宙を駆けるよだか』(Netflix)も入れ替わりがモチーフになっている。本作で入れ替わるのは、家庭環境にも恵まれた容姿端麗なヒロイン・あゆみといじめられっ子の然子。あゆみを演じるのは5月から放送予定のNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK総合)でヒロイン役に抜てきされた清原果耶。
◆篠原涼子⇔古田新太 クドカン脚本のハイテンションコメディ『ぼくの魔法使い』
現在放送中の『俺の家の話』(TBS系/毎週金曜22時)が話題を集めている“クドカン”こと宮藤官九郎も入れ替わりモノのドラマを手掛けている。2003年放送の『ぼくの魔法使い』(日本テレビ系)は、伊藤英明と篠原涼子がダブル主演を務めたハイテンションコメディ。この作品で入れ替わることになるのは、ヒロインの留美子にふんする篠原涼子と青年実業家の浩二を演じる古田新太。自転車事故をきっかけに、何かを思い出そうとすると外見が浩二と入れ替わってしまう留美子と、彼女を愛し抜く道男(伊藤)の“究極の夫婦愛”をキャスト陣の振り切った演技で描いていく。阿部サダヲの過剰な熱演はもちろんのこと、井川遥の本人役での登場や、『探偵物語』『傷だらけの天使』といった過去の傑作ドラマへのオマージュなど、クドカンらしい仕掛けが随所に施されている。
◆永作博美⇔石田ゆり子 親友同士の入れ替わりを描く大人のファンタジー『さよなら私』
連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK総合)や現在放送中の『にじいろカルテ』(テレビ朝日系/毎週木曜21時)も手掛ける人気脚本家・岡田惠和がアラフォー女性の入れ替わりを描いたのが2014年の『さよなら私』(NHK総合)。高校時代の親友同士だった友美(永作博美)と薫(石田ゆり子)が同窓会で再会。しかし友美は、薫が自分の夫・洋介(藤木直人)と不倫していることを知ってしまう。ある日、友美は薫に洋介との関係を問い詰めているうちにもみ合いになり石段を転落。
2000年以降に絞ってみても、上記以外にもさまざまな作品を挙げることができる入れ替わりモノ。さらに4月からは松坂桃李が主演を務める“入れ替わり”ラブコメ『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系)がスタート。いま改めて注目を集める入れ替わりモノの過去作にもぜひ触れてみてほしい。(文:スズキヒロシ)