マスメディア以外に、ホンダが大きな予算を使った広告宣伝としては、ディーラー網の再編がある。ホンダは昨年度から、三系列あった販売チャネルをホンダカーズ店の名称で統一するCIを実施した。これは07年度だけで、広告宣伝費が100億円も急伸した原因の一つであろうが、同じ年に、日産がディーラー網をやはり統一して、同様にCIのコストが発生していることと考慮すると、ホンダだけが傑出して広告費が多い説明には足りない。ホンダは、自動車以外にも、二輪車や産業用機械などの製品も手がけているが、広告費をそれほど要する分野ではない。自動車で大型のセールスプロモーションのイベントを打ったわけでもない。つまり、ホンダが国内で、多額の広告費を使った形跡がないのである。
そこで、ホンダに広告宣伝費について問い合わせたところ、「国内外の区別を設けず計上している」との回答があった。広告宣伝を世界で統一し、本社が統括している企業ならともかく、販売車種も広告も地域によって異なる総合自動車メーカーでは、考えにくい話である。決算を連結して海外の広告費を組み入れて計上するならば、その旨を表記した上で、北米や欧州などの代表的な地域ごとの内訳を書くべきである。そうでないと、国内の広告宣伝のみで計上している同業他社との正しい比較ができず、投資家向けの情報開示として不適切だからである。
このような情報開示の初歩をホンダが知らないはずはない。国内外に渡って大規模な広告宣伝が行われたと考えるのが自然である。