ライブでも「民主党をひっくり返す!」と語っていた喜納氏。
県連を今後まとめていくのは至難の業だ。

(ライブハウス「チャクラ」(那覇市)にて)

 米軍普天間基地を名護市辺野古地区へ移転するとした日米合意を遵守する立場の民主党本部と、県外移設を主張する沖縄県連とのねじれが深刻化している。11月28日の沖縄県知事選へ向け、岡田幹事長が県連の独自候補擁立に対し「党議拘束」を示唆するなど、両社の溝は深まるばかりだ。そんな中、前参議院議員で沖縄県連代表の喜納昌吉氏が10月26日、国会内で岡田幹事長と会談。「独自候補擁立の断念・自主投票」が正式に決定した。

 実は取材班は17日、喜納氏が経営する那覇市内のライブハウス「チャクラ」で喜納氏に会い、「誰も出なければ僕が(県知事選に)出ますよ」との意志を確認していた。本部方針に沿う形で苦渋の決断を迫られた喜納氏に、再度真意を聞いた。

──岡田幹事長とは1時間にわたり会談が行なわれましたが、そこではどんな話が?

喜納氏(以下、喜) 沖縄県連独自の知事候補擁立の条件として、党本部は普天間基地の沖縄県内移設への同意を求めてきました。1時間あまりの会談の結果、我々県連としては辺野古移転には賛成できないが、独自候補の擁立は本部方針に沿って断念する。ただし、それと引き替えに、党内に米軍基地問題や振興策など沖縄政策全般を話し合う協議機関を作ることを要求し、これを認めさせました。

──その協議機関が意味するところは?

喜 これまですべて党本部の独断で決められてきた沖縄政策に、初めて県連を通じて沖縄県民の民意を反映させるためのチャンネルが開かれたわけです。この仕組みが有効に働き、400年の歴史を越えて日本と沖縄が新たに出会うきっかけとなれればと思っています。

──結果的に岡田幹事長が示唆していた「党議拘束」(沖縄県連が独自に候補を擁立することを許さない)に屈する形ともとれますが、今の想いは。

喜 今の状態では両候補(仲井真氏と伊波氏)とも「県外・国外」と言っていて、これでは県民の選択肢がない。しかも我々は独自候補が出せない。沖縄は投票権も立候補権も否定され、政治参加の機会を奪われてしまっている。これが何を意味するか。政治的自決権が沖縄にないということなんですよ。基地問題でも沖縄県民になんの説明もなく、政府間で話がぽんぽん進んで行く。沖縄が政治に参加できていないんですよ。恐ろしいことですよ。

──党本部は辺野古移転の方針を変えていませんが、今後の見通しは。

喜 ただ、日米合意の中には地元合意がなければダメだと言ってるわけですよ。じゃ、地元の合意とは何か。県知事がウンと言えば合意と言えるんですか? 辺野古の住民は「地元」じゃないの? そう考えると、どうやっても辺野古移転は無理なんですよ。

沖縄県連の独自候補が知事になれば、県民投票で地元合意を国に突きつけるつもりだったんですがね。

──喜納さんはこれまでも、県民政党の社会大衆党や、社民党からも裏切られ続けてきたという歴史があります。今度は民主党が方針をひっくり返したわけですが。

喜 ああ、俺は裏切られているね(笑)。頭にくるよ、社会党系自治労の連中にはさ。正義のツラをかぶって人の約束を簡単に裏切る。民主党も「県外か国外」というのをコロっと変えた。だから結局、沖縄問題になると自民も民主もないんだよ。民主党にもだまされた感じは当然ありますよ。政権交代をした昨年は薩摩が沖縄を侵略してから400年の節目でもあった。私たちは、歴史的政権交代と言われたその"歴史"の中に、沖縄の歴史が含まれていることを祈った。基地問題がリトマス紙だったんです。

自公政権で果たせなかった想いを「今度こそ!」と民主党政権に託したのに、自公と同じになるとは想像もしてなかったよ。

──基地問題で対立し、ここまで虐げられながら民主党に居続ける理由があるのでしょうか。

喜 それはあなたの意見でいいんじゃないですか。我々が作った民主党内閣なんだから、その内閣が悪ければ変えればいいことですよ。このまま沖縄を無視するような内閣ならひっくり返していけばいいんであって。抜けるなんていうのは短絡的ですよ。

──ひっくり返すのも簡単ではありませんが、それより「喜納新党」を立ち上げる可能性は?

喜 そういうのは、まだね、いろいろやっていかないとだから。そうなると資金もいるし、賛同する人もね......。そりゃ、この流れが続けば「独立しろ」いう声も中には出てくるとは思うよ。

──国防のために沖縄に基地が必要だという声には?

喜 だから、国防ってのはどういう意味? 本土の安全のための国防? そこに沖縄も入ってますかということ。沖縄だけリスクを背負ってなんで国防なの。国防は大事ですよ。

ただ、平等な国防を作ってくれと。できなきゃリスクに見合うビジョンを与えなさいと言ってるんですよ。それが一国二制度です。沖縄がどれくらいの自治権を持つかという問題。ビザとか税金とか安全保障とかね。本土が沖縄に対してこれからも今までのような扱いをするのならば、一国二制度にして自治権を持って、アメリカと基地交渉を直接したほうがいい。国連も今回の基地問題に対して「沖縄県民を先住民として認知すべし」と勧告してますから、わが沖縄は国連ともパイプを強固にして毅然としてアメリカと交渉しますよ。

──「一国二制度」とは、香港やマカオのような経済特区にするということではなく?

喜 いや、もっと人類全体のひな形になるような、グローバルビジョン、つまり全地球的構想を推進する一国二制度を作るべきなんですよ。日本人の勤勉で優秀な頭脳を、これ以上地球を破壊する方向ではなく、地球が健康を取り戻し復活する方向に向けていくような政治政策が必要だと思ってます。沖縄をそういう政策の特区にするんです。

──今沖縄にある基地は最終的にどうすべきだとお考えですか。

喜 もし沖縄に基地を残すなら、アメリカでも日本でもなく、国連軍の基地として運営すべきですよ。

国連軍となれば敵国はないんだから、どことも戦争できない。軍事力の無力化です。そして、その沖縄のビジョンを環太平洋地域に全部持っていけばいい。環太平洋地域には抑圧されている少数民族が多いですから。環太平洋国連本部を沖縄に誘致して、マイノリティーとマジョリティーに橋を架けるNGOの流れをつくる。そこから世界中の武器を解体する運動をつくっていけばいい。唯一、武器を放棄した歴史のある沖縄が、人類が本当に武器を放棄していくための道筋を作ればいいんですよ。

──喜納さんは日頃から「すべての武器を楽器に」と言っていますが、世界中の武器の解体などということが、政治家として現実的だとお考えですか。

喜 私はずっとそれを言ってきたし、それに共感した人たちが前回、私を政治の世界へ送り出してくれた。私の生き方そのものに県民が共感を示してきたと思ってますよ。壮大だけど、私にはそういう仕事しかないんですよ。今回の基地問題でも、私がもともと火をつけたんだから。

岡田と前原とケンカしながら沖縄ビジョンに基地問題を盛り込んだのも僕ですから。その火でやけどしたのが今の政権なんでね(笑)。
(文=浮島さとし)



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