歌舞伎俳優の市川海老蔵への傷害容疑で、伊藤リオン容疑者がやっと逮捕された。
以前、ビートたけしが「海老蔵って、変な男だよ。おいらの家に突然、バスケットボールを持って訪ねてきたことがあったんだよ」と言っていたことを思い出した。
2003年、NHK大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』で、まだ海老蔵を襲名する前の市川新之助とたけしは共演している。短いシーンだが、たけしは、海老蔵演じる武蔵の父親役としてゲスト出演したのだ。今回の事件後、たけしに会う機会があったので、改めて当時の状況を聞いてみた。
「収録の合間に2人で話す機会があったんだ。そのとき海老蔵が、『今度、たけしさんの家に遊びに行っていいですか?』と言うんだよ。いいとは言ったけど、まさか本当に来るとは思ってもみなかった。
突然、たけしの家に押しかけた海老蔵は、タップダンスを10分も習いもしないうちから、「お酒ないですか?」と聞いてきたという。タップの練習場には酒は置いていないことから、たけしが「ない」と言うと、どこからか酒を持ってきて、飲み始めたという。その後、再びタップの練習に加わったものの、結局はすぐにやめて酒を飲み始めたというから、当時からアルコール依存の予兆はあったのだ。
大人なたけしは、海老蔵の言動を許容していたが、こうした傲慢不遜で失礼な態度や発言が相手を傷つけ、さらに酒癖の悪さが友達を失くす要因となっていたはずだ。心を許してくれる飲み友達がいないから、元暴走族が集まるような六本木、西麻布の店で飲むことになったのだろう。
ある筋によると、海老蔵は過去にも元暴走族と今回と似たようなトラブルを何回か起こしているという。その都度、示談に持ち込み、金銭解決してきたそうだ。しかし、今回は歌舞伎役者生命を左右しかねない大ケガを負わされた。元暴走族は、金銭解決は難しいと踏んだのか、テレビ局や一部活字メディアに情報という餌を提供。
海老蔵の事件で所属の松竹は正月公演を控えて、莫大な損失を被ると言われていたが、京都南座の公演は片岡仁左衛門、片岡愛之助が、正月公演は坂東玉三郎という大物が代役を務めることになり、マスコミの事件報道も逆宣伝になって、チケットが完売した。本来、休業予定だった大物たちを稼働させることができたのだから、松竹は内心では笑いが止まらないかもしれない。
今回の事件で誰が一番損をしたのか? それはやはり海老蔵だろう。この損を取り戻せるかどうかは、今後の彼の生き方にかかっている。
(文=本多圭)
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