NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』
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現役AV監督・代々木忠の半生を振り返ることで日本のアダルト産業の歴史を検証していくドキュメンタリー映画『YOYOCHU』。子どもにはピカチュウを、大人にはヨヨチュウを。
(C) 2010 ゴールド・ビュー/スターサンズ/石岡正人

 田口トモロヲがナレーションを務めるドキュメンタリー映画『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』は、国営放送NHKでは放映されることのない"裏プロジェクトX"だ。戦後間もない小倉で不良少年として鳴らした代々木忠は、その後、華道の世界から極道の世界へ、さらにストリップの興行師、ピンク映画の製作へと転身を続ける。"日活ロマンポルノ裁判"では9年間に及んだ係争を経て無罪を勝ち取り、1981年に「アテナ映像」を設立しAV製作に乗り出す。ヨヨチュウの半生は、そのまま日本のアダルト産業の歴史でもある。ヨヨチュウが監督した愛染恭子主演ビデオ『本番生撮り 淫欲のうずき』(81)は家電店がVHSデッキ購入者への特典にしたことから、爆発的な人気を呼んだ。VHS対ベータの規格戦争において、『淫欲のうずき』はVHS勝利に大きく寄与したと言われる。

 AV作品ながら劇場公開された『ザ・オナニー』(82)をはじめスキャンダラスかつエロティックなヒット作を次々と放ってきたヨヨチュウだが、ヨヨチュウ作品の特徴はやはりただの"抜き"ビデオではなく、男と女の間にある"性"の深遠さをとことんまで掘り下げた型破りなドキュメンタリーとしての面白さだろう。『多重人格そして性』(97)に至っては、七重人格の女性・泉みゆきがAV撮影中に人格交替する様子を記録した貴重な資料映像となっている。『多重人格そして性』は、98年に『マルチエイジ・レボリューション』(情報センター出版局)として書籍化されており、これを読むと多重人格障害の実状に驚くだけでなく、ヨヨチュウの人間としての懐の深さにも驚かせられる。多重人格に悩む泉みゆきに対し、ヨヨチュウは「必然性があって、多重人格になったのだろう」と多重人格であることをそのまま受け止めるのだ。基本人格に他の人格を統合させようとは考えずに、幼少期にトラウマを負ったことで彼女の中で生まれた各人格をヨヨチュウは全肯定して接する。『多重人格そして性』に登場した泉みゆきに限らず、多くの女性たちが度量の広いヨヨチュウを信頼し、安心感を覚える。ヨヨチュウが見守る中、女たちは生まれたまんまの姿となり、男優たちに抱かれ、オーガズムに達する。そしてヨヨチュウは、モラルやトラウマから解放された彼女たちの歓喜の表情をビデオカメラに収める。それがヨヨチュウ作品だ。


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