自分にとって家族は敵か、味方か? オスカー2冠受賞『ザ・ファイター』
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"アイルランドの稲妻"と呼ばれた実在のボクサー、
ミッキー・ウォードとその家族を描いた『ザ・ファイター』。
主演のマーク・ウォールバーグは3年かけてボクサー修行を積んだ。
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 聖書に出てくるカインとアベルの時代から、兄弟は妬み、いがみ合うものと相場が決まっている。家族の古いアルバムを開くと、第1子である兄の写真が圧倒的に多く、弟は兄と一緒の写真ばかりで、弟がピンで写っている写真はかなり少ない。シャッターを押された回数が愛情に比例しているようで、ささいなことだが弟には恨めしい。その一方、親の愛情を浴びて伸び伸びと育った兄が奔放に才能を発揮する姿は、弟にとってはいちばん身近な、まぶしい記憶であったりもする。兄弟の間で渦巻く感情は、憎しみと愛情が紙一重の非常に厄介なものなのだ。日本においても海彦と山彦しかり、角川春樹と角川歴彦しかり、若貴しかり......。『ザ・ファイター』は実在のボクサー、ミッキー・ウォードと兄ディッキーを主人公にした壮絶なる家族ゲンカ&家族愛を描いた感動のボクシング映画である。

 ボクサーのミッキーは、異父兄ディッキーの影響を受けて、プロの世界に入ったものの、ただいま連戦連敗中。その原因は家族。技巧派ボクサーとして活躍したディッキーは引退した今は、ミッキーの専属トレーナー。だが、数年前からドラッグに手を出し、練習時間になっても姿を見せない。マネジャーである母アリスは、いまだに甘えん坊のディッキーのことを溺愛してやまない。ファイトマネー欲しさで、ミッキーにとって不利な試合をアリスとディッキーは平気で組んでしまう。そんな環境でミッキーが勝てるわけがなかった。ミッキーはリングに上がる前に、まず家族と闘わなくてはならなかったのだ。トレーニングに集中できる大手ジムに移籍したいとミッキーが口にすると、母と兄は「家族を見捨てるつもりか?」と即座に却下する。ミッキーに恋人ができると7人の無職の姉たちが「あんなビッチと付き合うな」と騒ぎ出す。ドラッグ中毒のダメ兄を演じたクリスチャン・ベールと鬼母アリスを演じたメリッサ・レオが、アカデミー賞助演男優賞、助演女優賞をダブルで受賞。そんな実力派俳優たちが生々しい親子ゲンカを繰り広げる、亀田ファミリーもびっくりな濃い人間ドラマだ。


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