粉飾決算事件に揺れたオリンパスの臨時株主総会では、不正告発で解任されたマイケル・ウッドフォード元社長の復帰を求める動きもあったが、それをかき消したのはまるで暴力団組員のようなコワモテ来場者だった。

「おい早く進めろよ、ゴラァ!」
「腹減ったよ、もういいよ!」

 ドスの効いた声は大半が関西弁。

面々の顔も、暴力団かと思うような怖い顔をした中年男性ばかりだった。野次は追い詰められる経営陣に飛んでいるのかと思いきや、どうも様子がおかしい。「NO個人株主軽視」とプリントされたトレーナーを着た男性がウッドフォード氏の復帰を求めたときだったからだ。

 20日、招集通知には「混雑が予想されますので」とあったが、ホテルニューオータニの大会場「鶴の間」は半分ほどしか埋まらず、場内アナウンスも「空いているお席にお座りください」とあったほど。

 おかげでこうした強烈な野次には場内が静まり、その野次を飛ばしていたひとりと見られる男性が質問者として関西訛りでまくし立てた。

「あなた方がやったことは世界中に恥をさらした。経営の根幹が腐っとる。菊川という奴は悪い奴だ。この会社は内視鏡屋さんでしょ! 会社の金庫にまず内視鏡入れなさいよ。これ以上、何かを隠していませんと言いなさいよ!」

 一見、経営陣に対する厳しい声だが、その中身は具体性に乏しく、まるで時間稼ぎをしているようにも見えた。

 事実、この質問者はその後も品の悪い連中と一緒に大声を出し、この日のハイライトであったウッドフォード氏の質問中も、「質問がなげえんだよ!」「ここは日本だぞぉ!」と遮っていた。

「おそらく、彼らはオリンパス経営陣が呼び込んだ総会屋でしょう」

 場内にいた株主のひとりは、そうつぶやいた。

関西訛りの質問者はその後、取締役役員とは掛け合い漫才のような馴れ合いを繰り返したあげく、「議長、早く決議しろ!」と終了を促した。まったくもって会社側に都合の良い質問者と野次だったのだ。

 終了後には「どう見てもヤクザのような奴らがいたね」という株主たちの声が多々聞かれたが、今回の招集通知には不祥事後に結成された「第三者委員会」の調査と報告書が添付され、「反社会勢力との関係等」という項目も一応あった。ただ、その中身は「反社会勢力の関与は認められませんでした」という短文のみ。

「翌日の報道では“大荒れ”と書いているバカな新聞もありましたが、結局はかつて日本で横行した無風のシャンシャン総会。10年以上前から日本の商法が改正され続け、企業の国際化やコンプライアンス強化が謳われてきたんですが、このオリンパス総会で昔ながらのシャンシャン総会がそのまま残っていたことを示しましたね」(株主男性)

 ただ、かつては企業側を糾弾するために存在した総会屋も、いまや“従来型のシノギ”が厳しいからか、その業態は“モノ言う個人株主を恫喝する”という真逆の立場になっているようだ。
(文=鈴木雅久)

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