世界遺産「那智の滝」(和歌山県那智勝浦町)でロッククライミングをして軽犯罪法違反容疑で逮捕されたアルパインクライマーの佐藤裕介に“余罪”の話が噴出している。

「いつか何かやらかすんじゃないかと思った」

 日本を代表するクライマーの佐藤に対して侮蔑の表情を浮かべたのは、長野県で山小屋を管理する国立公園の職員だ。

「以前から、マナーの悪さでは有名でしたからね。あるときは仲間と酒を飲んで遅くまで騒ぎ、女性クライマーに全裸を見せつけて反応を楽しんでいた。苦情が来ると禁止区域でテントを張り、注意しても“ここはおまえの土地か”と逆ギレ。あれだけ態度の悪いクライマーは、ほかに知りません」

 佐藤に対して嫌悪感を示しているのは、この職員だけではない。山梨県のある神社では高さ12メートルの岩を“神体”として祭っているが、8年前に「佐藤がここを登った」という話が広がり、地元住民の怒りを買っていたのだ。

 関係者は直接、佐藤が登ったところは見ていなかったが、あるとき岩に無数の傷と滑り止めチョークの跡が散見され、さらに後日、各方面から「佐藤がここを登ったと聞いた」というクライマーが次々に訪れたというのだ。

 神社側は日本フリークライミング協会に通報。クライミングの自粛が呼びかけられたというが、結局、佐藤本人からの説明は一切なく、関係者は佐藤への不快感を持ったままだという。

 佐藤の禁止区域でのクライミング目撃談は、ほかにもネットなどで報告がされており、20年以上前に禁止区域に指定された東京・奥多摩町の岩場でも「最近、佐藤が下見に来ていた」などとウワサになっていた。現地でこうした問題に取り組んでいる自然環境保護グループの理事からは「以前から佐藤氏は悪質なクライマーとしてマークしていた」という話が聞かれるほどだ。

 佐藤本人が釈放後も雲隠れ状態のため、実際にどれほどの問題行動をしていたかは本人の弁明を待つしかないが、佐藤の悪評には当のクライマーたちからもブーイングが飛んでいる。

「クライミング先進国のアメリカなど、海外では環境保護との折り合いをつけて行われているのに日本は未整備で、クライミング人口だけが増えている危ない状態。

良識あるベテランクライマーが率先して啓蒙活動などを行わなければならないのに、佐藤氏の行為でクライミング全体のイメージダウンとなってしまった。正直、責任を取って引退してほしい」(クライミング歴21年・加藤健氏)

 佐藤は事件の影響で、スポンサーだったブランド「THE NORTH FACE」から契約解除されたが、内外からの冷たい視線という社会的制裁の風は収まりそうにない。
(文=和田修二)