メダルこそ逃したものの、ロンドン五輪ではベスト4という望外の成績を残したサッカー男子U-23日本代表。銀メダルを獲得したなでしこジャパンの成績には見劣りするものの、優勝候補のスペインを撃破し、メキシコ五輪以来44年ぶりのメダル獲得に手が届きかけたことは称賛されてしかるべき。

ところが、この成績にケチをつけているのが、メキシコ五輪でFWとして活躍し、得点王にも輝いた日本サッカー協会(JFA)元副会長の釜本邦茂氏だ。

 釜本氏は「メダルを取ったのだからメキシコ組はロンドン組より上です。今の日本代表のきれいなサッカーでは勝てない」などと発言。だが、これに対して「何、この老害」「誰この人?」「はいはい、おじいちゃん黒飴なめててね」「アマチュアのみの時代と比べてどうすんだよ」「寝言は寝て言えよ、痴呆老人。お前らなんぞJ2のチームにも入れねえよ」などと、ネットユーザーらが大ブーイング。

「今の若いサッカーファンには実感がないかもしれませんが、釜本さんといえば、日本代表最多得点記録(75点)保持者でもある不世出のストライカー。

今でこそ海外移籍するJリーガーは珍しくありませんが、釜本さんは40年以上も前に海外の有力チームから盛んにラブコールを受けていましたからね。時代が違うので一概には言えませんが、一応、日本で歴代ナンバー1選手といえば釜本さんということになっています。それだけに、今回の発言は大人げなかった」(サッカーライター)

 現役時代は名声をほしいままにした釜本氏だが、引退後のキャリアはあまり芳しいものではない。Jリーグ発足後はガンバ大阪の監督を務めたが、所属選手との確執や成績不振により、わずか2シーズンで事実上の解任の憂き目に。政界に転じたこともあったが、スキャンダルに巻き込まれた。JFAの理事や副会長も歴任したものの、一昨年に名誉副会長を退き、現在は顧問の身。

「95年に当時の森喜朗自民党幹事長にスカウトされ、第17回参院選で自民党から出馬し当選しました。しかし、高速道路用プリペイドカードの不正販売に釜本さんの妻が経営する会社の関与が明らかになり、このスキャンダルが響いて01年の第19回参院選では落選。これを機に、政界からは完全に退きました。JFAにおいても、当時の会長だった川淵三郎氏(現最高顧問)との権力争いに敗れるなど、現役引退後は不遇をかこっていると言っていい」(同)

「それでも歴代最高選手というプライドが、自分自身を支えていたのでしょう」とサッカー雑誌編集者は話すが、昨今では日本サッカーのレベル向上に伴い、“歴代最高”の称号もどうやら怪しくなってきている。

「そもそも釜本さんの時代の五輪は、アマチュアの選手しか出場資格がありませんでしたからね。23歳以下限定とはいえ、プロが出場する現在の五輪サッカーのほうが明らかにレベルは上。

釜本さんが言うような、メダルを取ったからロンドン組よりもメキシコ組が上とは限らない。それに、香川真司がマンチェスター・ユナイテッドに移籍したようなケースもあります。マンUといえば、世界最高峰の名門チーム。釜本さんの現役時代がいくらすごかったとはいえ、マンUレベルのチームから誘われたということはなかったですからね。香川の活躍次第では、歴代最高選手の称号は彼のものになる可能性だってあり得る。今回の釜本さんの発言は、自身の地位が脅かされることに不安を感じたから、と言えなくもない」(同)

 韓国との3位決定戦では、44年ぶりのメダル獲得を前に日本国中がハラハラしながら観戦していた。

だが、釜本氏だけは、別の意味でハラハラしていたのかもしれない。