今年、デビュー50周年を迎えた演歌歌手の小林幸子。“お家騒動”の影響で昨年末のNHK白』を落選したこともあって、記念コンサートのチケットの売れ行きが伸び悩み、予定していた全国50カ所の公演のめども立たず、途方に暮れている。

 その一方で、小林と同時代にヒットを飛ばした往年の人気歌手たちが出演する『夢コンサート』が盛況のようで、各地でのスケジュールを次々に消化している。読者も、新聞や雑誌に頻繁に掲載されている『夢コンサート』のチケット販売の広告を目にしたことがあるのではないだろうか。筆者も、この『夢コンサート』の存在が気になっていた。

 1960年代から70年代にかけてヒットを飛ばした歌手たちは、バブル期には、ギャラランクに差があったとしても、月に最低でも、5~10本の地方営業をこなしていれば生活は安定していた。ところがバブル崩壊後、演歌の衰退もあって、彼らの仕事は激減。生活に困る歌手も続出した。

 『夢コンサート』の出演者の顔ぶれは、往年の映画スター歌手・小林旭松方弘樹をはじめ、西城秀樹や元狩人、柏原芳恵、新沼謙治三善英史、あいざき進也といった過去のスターたちばかり。昨年末、同コンサートに出演しているある歌手のマネジャーと、パーティーで同席する機会があった。そのマネジャーに『夢コンサート』について尋ねると、「『夢コンサート』を主催する“夢グループ”に年間のスケジュールを押さえられて、仕事が順調に入ってくる。ギャラは安く叩かれますが、仕事がないよりいいですよ。コンサートに出演する歌手たちは、最低限の生活が保障されたようなもんですからね。助かってますよ」と言う。

 この話を聞いて、『夢コンサート』は歌謡界の互助会のような気がした。夢グループという会社の社長は石田重廣氏。都内でユーコーという通販会社を経営。同社のメイン製品だった“シルク100%掛け布団”という触れ込みの製品が、08年に実際は半分程度のシルクしか入ってないことが判明し、景品表示法違反で公正取引委員会から行政処分を受けたことを記憶している。その時に同社のCMキャラクターを松方弘樹が務めていた。さらに3年前に石田社長は、当時、参議院選挙に出馬して注目を浴びていた元アイドル女優の岡崎友紀との“金銭トラブル”を「週刊文春」(文藝春秋)に報じられたことがあった。石田氏は岡崎の元所属事務所社長で、彼女に莫大な金を貸しているという告発だった。

 石田社長はあくまで通販会社の社長で、松方のタニマチだとばかり思っていたが、岡崎の元事務所社長で『夢コンサート』で売れなくなった歌手たちに活動の場を与えて、ファンを喜ばすという仕事をしていたのだ。毀誉褒貶ありそうな、この人物の評価はなんとも難しいが、この際、お家騒動が原因でいまだに芸能界のメインステージから干されている小林幸子を『夢コンサート』に出演させて、救ってやってほしい。このままだと小林は消滅しかねない。
(文=本多

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