メジャーとインディーが拮抗した奇跡の年を活写 映画スター・金子正次が輝いた『竜二漂泊1983』

メジャーとインディーが拮抗した奇跡の年を活写 映画スター・金子正次が輝いた『竜二漂泊1983』
       

 俳優・金子正次を覚えているだろうか? 1983年10月29日に初主演映画『竜二』が劇場公開され、主人公であるヤクザ者の竜二を演じた金子正次はスクリーンの中で生まれたてのスターとして眩しい輝きを放っていた。『竜二』を観た誰もが松田優作に続くニュースター・金子正次がこれから映画界で大活躍する姿を夢想して興奮した。しかし、多くの観客が脳裏に思い描いたその夢は叶うことはなかった。『竜二』公開直後の11月7日に金子正次は胃ガンのために33歳のさでこの世を去る。流れ星のように瞬間的な輝きを残して時代を駆け抜けていったスターだった。『竜二漂泊1983 この窓からぁ、なんにも見えねえなあ』(三一書房)は映画評論家・谷岡雅樹氏が公開から30年を迎えた映画『竜二』の色褪せぬ魅力と金子正次がほんの短い期間だがスターとして輝いた“1983年”という時代の特殊性について、400ページ以上にわたって言及した渾身の映画評論となっている。

 『竜二』は小市民としてのささやかな幸せにすがりながら生きていくことのできない哀しい男の物語だ。竜二(金子正次)は新宿一帯で顔を利かせているヤクザ者で、舎弟の直(桜金造)とひろし北公次)に闇ルーレット場を任せ、すこぶる羽振りがいい。だが、冷酷なヤクザにはなりきれない心根の優しさがどこかに漂う。妻のまり子(永島暎子)と幼い娘・あや(金子)のために足を洗うことを竜二は決意。カタギの人間として毎月給料をもらう地道な生活を送り始める。竜二が狭いアパートで幸せな日々を噛み締める一方、ヤクザ時代の仲間・柴田(菊地健二)がシャブ中毒で命を落とし、直もシャブに手を出して身を崩していく。だが、竜二は自分の家庭を守ることが精一杯でどうすることもできない。『竜二』のラストシーンは日本映画史に残る名場面だ。仕事を終えた竜二がアパートへ帰ろうとすると、商店街のバーゲンセールの行列に並んでいるまり子とあやの姿が目に入る。慎ましい生活を守るためにバーゲンに並ぶ妻と娘を見てしまった竜二は、無言のまま自分が帰るべきアパートとは逆方向へと足を向けてしまう──。


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2013年7月29日の芸能総合記事

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