3月5日から中国で開催されている全国人民代表大会(日本の国会に相当)では、習近平政権による新たな国家指針「新常態」などを打ち出し、大きな話題となっている。一方で開催中のテロを警戒し、北京市内は前代未聞の厳戒体制が敷かれているという。

全人代が開幕した翌日、広東省・広州駅で無差別切りつけ事件があったこともあり、現地で「北京五輪やAPEC(アジア太平洋経済協力)時以上に物々しい警備体制」(北京駐在の商社マン)という。

「今回の全人代は、ウイグル族と連携したイスラム国のテロを警戒してか、かなり警備が厳重ですね。私が住んでいるのは駐在員が多く住む高級住宅街なんですが、そんなところにまでマシンガンを持った私服の民兵みたいなのがウロウロしています。街中も警察車両が普段の3倍くらいに増えています」

 そんな中、現地で注目されているのが、武装警察の中で「最強」と呼ばれている特殊部隊「雪豹突撃隊(Snow Leopard Commando Unit)」の投入だ。日本で言うところのSATや米海軍の特殊部隊ネイビー・シールズのように、その任務はテロ制圧、暴動鎮圧、爆発物処理、ハイジャック処理など多岐にわたる。02年に設立されて以降、主に北京市の警備を担っているという。
14年にヨルダンで開催された「特殊部隊オリンピック」では優勝を果たし、一躍その存在が国外でも有名になった。

 8日には早速、この雪豹突撃隊が活躍を見せている。北京市中心部に近い天寧寺橋の道路で、警察官の制止を無視して検問を突破した自動車を雪豹突撃隊が制圧したという。13年10月に起きた、ウイグル族による天安門広場自動車突入事件(43人が死傷)を彷彿とさせたが、拘束された犯人は「偽造ナンバーだったのでバレるのが怖かった」と話しており、テロとは無関係だったという(「新京報」3月9日付)。

 中国メディアの報道や中国版Twitter「微博」などに投稿されている画像を見ると、警備に当たっている雪豹突撃隊は95式自動小銃に銃剣を装着し、ただならぬ雰囲気を醸している。全人代開催中に、悲惨なテロ事件が起きないことを祈るばかりだ。

(文=金地名津)