子どもだましでは子どもはだまされない! Eテレ法廷教育ドラマ『昔話法廷』が裁くもの

子どもだましでは子どもはだまされない! Eテレ法廷教育ドラマ『昔話法廷』が裁くもの

「もー! 認めなさいよ、このババア!」

 裁判官が「静粛に!」と制止する中、“被害者”の白雪姫は我慢できずに“被告人”の王妃につかみかかった。検察官から、リンゴ嫌いのはずの王妃のパソコンに「おいしい リンゴ」という検索履歴があったことを指摘されたにもかかわらず、王妃が顔色ひとつ変えず「白雪姫と同じものが好きだなんて、わたくしのプライドが許さない。だから、こっそり取り寄せたの」と釈明したことに激高したのだ。

「そんなの言い逃れよ、そのりんごを私に食べさせたのよ!」と。

 これは、『昔話法廷』(NHK Eテレ)の一幕である。王妃の白雪姫に対する殺意は明白であり、犯行時刻のアリバイもないとし、「殺人未遂」の罪で裁判にかけられた王妃。対する弁護側は、凶器のリンゴに王妃の指紋はなく、王妃の犯行の根拠である、被害者が聴いたという「王妃の高笑い」も毒で意識が朦朧とした状態で聴いたもののため信用性に欠け、証拠不十分で無罪を主張している。

 『昔話法廷』はこのように、誰もが知る「昔話」を題材にした裁判を描いている。裁判員となった主人公が、両者の主張を聴きながら真相を考える1回15分間の法廷ドラマである。これまで「3匹のこぶた」「カチカチ山」「白雪姫」という3篇の昔話が裁判にかけられた。

 何よりすごいのは、画面のインパクトだ。こぶたやウサギ、タヌキなど、リアルな造形の着ぐるみが法廷に並んでいる。その光景はあまりにもシュールだ。かわいらしい動物キャラの造形とは程遠く、その表情や目つきは“獣”的。

 「カチカチ山」裁判で被告人となったウサギの何を考えているかわからない鋭い目つきは、タヌキへの報復のため数々の残虐な行為を働いたことと相まって、さながら、サディスティックなサイコキラーの不気味さを思わせる。そんなウサギが「反省してる」「(タヌキが)死ななくてよかった」と情状酌量を求めつつ、「今度バッタリ、タヌキに会ったら?」と問われ、何も答えられず目をそらすさまは、身震いすらしてしまう。

 「3匹のこぶた」裁判では、こぶたの三男・トン三郎によるオオカミ殺害が「正当防衛」が認められるかを争っている。言うまでもないが、こぶたのレンガの家に煙突から侵入したオオカミが、煮えたぎる湯が入った鍋に落ち殺された“事件”である。その家主であるトン三郎は、計画的犯行であるとし、「殺人罪」で裁判にかけられている。だが、彼は殺害自体は認めているのもの、あくまでも自分たちを襲ってくるオオカミに対して突発的に行った反撃であるとして、「正当防衛」を主張しているのだ。

 証人尋問では、殺されたオオカミの母や、こぶたの長男・トン一郎が出廷。木南晴夏演じる検察は、オオカミの母を尋問し、オオカミのカレンダーに「3時 豚肉パーティ トン三郎の家」と書いてあり、こぶたに招待されていたらしいことや、遺体を発見した家のテーブルに『オオカミのただしいころし方』という本があったという証言を引き出していく。

 対して、加藤虎ノ介扮する弁護士は、「豚肉パーティ」と言ってこぶたが呼ぶのは「自分を食べて」と言っているようなもので、考えられない。また、部屋にあった本は『オリガミのたのしいおり方』だったと反論する。

 最終弁論で検察は、直前に大鍋を購入している点や、食事時でもないのに大量のお湯を沸かしていた点、そしてオオカミを鍋から出られないようにフタを固定するために使った石はとても1匹で持ち上げられる重さではなく、3匹で協力した上の計画的犯行であることは明らかと結論付ける。一方、弁護側は、裁判員に心情で訴えかける。

「身の危険を犯してまで、オオカミをおびき寄せるでしょうか?」と。

 番組では、最終的な判決までは描かない。もちろんそれは、この番組が「教材」であるという理由が大きい。当然、裁判員制度や裁判がどういったものかを子どもたちに教える教材用の映像として、学校等で使われることを想定して作ったものであろう。

 また、同時に道徳的な教材にもなっている。「正義」と言われているものは、本当に「正義」なのか。「常識」や「前提」としてきたものは、本当に疑いなく正しいのか。『昔話法廷』は、誰もが知る「昔話」を題材にし、それを別の側面で見ることで、子どもたちに物事を多角的に見る力を養わせる。

 何より、『昔話法廷』が「教材」として優れているのは、この番組が「面白い」ということだ。子どもだましでは、子どもはだまされない。本格的法廷ドラマとして大人も楽しめように作りこまれているからこそ、子どもたちも前のめりになり、「教材」となり得るのだ。

 今回放送された3篇は、8月21日(午後11時25分~11時55分)と28日(午後11時30分~11時45分)に再放送が予定されているので、未見の方はぜひ見てほしいし、続編もまだまだ見たい。

「桃太郎」「かぐや姫」「浦島太郎」「こぶとりじいさん」……。裁くべき正義や常識は、まだまだある。
(文=てれびのスキマ <<a href="http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/" target="_blank">http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)

◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

あわせて読みたい

日刊サイゾーの記事をもっと見る 2015年8月19日の芸能総合記事
この記事にコメントする

\ みんなに教えてあげよう! /

新着トピックス

芸能総合ニュースアクセスランキング

芸能総合ランキングをもっと見る

コメントランキング

コメントランキングをもっと見る

芸能の人気のキーワード一覧

新着キーワード一覧

このカテゴリーについて

話題の芸能人のゴシップや噂など最新芸能ゴシップをお届けします。俳優やタレントやアイドルグループなどの情報も充実。