8月17~18日、タイのバンコクで連続爆弾テロが発生。17日の事件は繁華街の交差点で爆発して20人が死亡、日本人1人を含む125人が負傷した。



 当初、この事件は前首相であるタクシンを支持する“タクシン派”の仕業だという見方があった。同派の人物による「14日から18日の間は気をつけることだ」という犯行予告ともみられるネット上の書き込みが話題となったからだ。犯人が着ていた黄色のTシャツは、同派が現政権支持派の犯行に見せかけるためのものだという人もいた。

 しかし、その後に犯人が片言の英語を話すイラン人風の男だということが判明。タイ警察は国内ではなく海外のテロ組織の犯行とみて、20日に国際刑事警察機構を通じて国際手配した。

「これがイスラム過激派による犯行であれば、今後、被害が日本に及ぶ可能性がある」と話すのは『バトル・オブ・ジャパン』(ベストセラーズ)などの数々の著書で知られる軍事評論家・青山智樹氏だ。


「ISISは日本に対して宣戦を布告していますから、十分警戒が必要です。自衛隊は2004年、対テロ特殊部隊、特殊作戦群を編成しました。訓練でヘビを食べるともいわれる過酷な特殊訓練を受けたレンジャー章保有者から選ばれた部隊です。警察も各都道府県単位で専属の特殊捜査係、特殊急襲部隊を持っています。また、警察には武装テロ集団を想定した特殊班がいて、狙撃銃など通常の警察官とは違う強力な武装をしています。この警察の特殊部隊は長く存在が秘匿されていましたが、1996年に公開されたもので、機動隊員から志願者を集めた約300名の組織ともいわれます。
すでにハイジャック事件や、オウム本部突入などの経験もあって、自衛隊との間で連絡を取り合い、共同訓練も行っているんです」

 しかし、青山氏はそんな徹底的に訓練された部隊でも「万一、日本でテロがあった場合の対策に懸念がある」ともいう。

「爆破事件などでは事前に犯人を特定して犯行を未然に防ぐのが大前提で、いくら武器を揃えていても事件が起こってからでは遅い。もしテロを防げないのであれば、対テロ特殊部隊も武装した警備員と変わらないわけです。その情報キャッチに役立つのがインターネットで、テロリストの交信を傍受したりすることが欠かせないのですが、自衛隊のサイバー部隊は海外諸国と比べて遅れていて、どの程度の精度があるのか未知数なままなんです」

 タイ警察はテロ犯を外国人としながらも、後になって「外国人に変装した可能性もある」とした上、無関係なフランス人やカンボジア人を「容姿が似ている」というだけで拘束する失態をやらかしてしまった。図らずもタイのテロに対する無防備さが世界中に広まってしまったわけだが、その標的が次に日本に向かわないともいえない。

 17日の事件現場から徒歩圏内にオフィスを持つ日本人向けツアー手配業者は「客からのキャンセルが続出して、テロ後の5日間の損失だけで200万円ほど。
怖くて出社できないと言いだす社員がいて、営業休止寸前」という。これが五輪開催時の日本で起こったらと思うとゾッとするが……。
(文=ハイセーヤスダ)