先日熊本県で、生後3カ月の赤ちゃんに覚せい剤を投与して死亡させるという信じがたい事件があったが、中国では新生児にバイアグラを投与したという恐ろしい一報が飛び込んできた。しかも、投与したのは医師だった。

いったい、どういうことなのか?

 ニュースサイト「台海ネット」が12月4日に伝えたところによると、福建省アモイ市で生まれた若若(ルオルオ/仮名)ちゃんは、生まれつき呼吸器に問題を抱えていた。新生児集中治療室で治療を受けたものの、一向に症状はよくならない。精密検査をしてみると、若若ちゃんは重度の肺炎をわずらっていただけではなく、先天的に右の上肺葉が欠如していたことがわかった。

 このままでは、若若ちゃんは衰弱して死を待つばかり。そこで医師団が決断したのが、バイアグラの投与だった。実はこれ、特殊な例ではあるものの、決してとっぴな医療行為ではなかった。


 バイアグラというのは、もともと狭心症治療のために開発されたシルデナフィルという薬。その後、“別の作用”もあることがわかり、そちらの方面に開発を切り替えてバイアグラという名称で売り出したもの。肺血管を拡張する作用があるため、シルデナフィルは現在、肺動脈性肺高血圧症の治療薬としても臨床現場では使われているのだ。

 新生児に対しても、胎盤呼吸から肺呼吸への切り替えがうまくいかずに低酸素に陥る肺高血圧の症状改善に効果があることが医学会で報告されている。若若ちゃんを治療した病院の医師の話によると、同病院の新生児集中治療室においても治療成功例があったという。

 バイアグラの投与を7日間続けると、若若ちゃんは呼吸も安定し、投与を止めても症状が悪化しなかったことから、その後、無事に退院することができたという。


 なかなかいいニュースではあるが、中国には大量の偽バイアグラや怪しげなバイアグラもどきが出回っている。それらを、赤ちゃんの治療に使ったりする輩が出てきたりしないことを願うのみである。
(文=佐久間賢三)