超人化する5歳児・ハジメの大衆扇動能力がすごすぎた『はじめまして、愛しています。』
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 遊川和彦脚本の『はじめまして、愛しています。』(テレビ朝日系)は第6話。視聴率は9.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、五輪開催中のわりには堅調に推移しています。

 信ちゃん江口洋介)と美奈ちゃん(尾野真千子)の夫婦は、特別養子縁組制度を利用してハジメ(横山歩)を本当の家族として迎え入れようと奮闘中。

 前回はヒステリーを起こした信ちゃんがハジメを庭に放り出し「出て行け! 施設に戻ればいい!」などととんでもない発言をしたりしましたが、ハジメは「すてないでください」と書いた手紙を手渡すなどして、再び家族のもとに帰ることになりました。このあたりのハジメの機転というか、何をどうすれば大人が感動してくれるかをわかっている感じが、ちょっと気味が悪かったんですが、今回もハジメ無双。ハジメ機転が冴え渡りました。

 この日から、幼稚園に通うことになったハジメ。すっかりいい子になっており、みんなの前で「はじめまして、うめだはじめです。みんなに愛していますって言いたいです」などと大人びた演説をしてみせます。これには付き添いに来ていた信ちゃん美奈ちゃんも大喜び。ハジメはどうやら、初日からうまく幼稚園に馴染めたようです。そりゃ、いい大人だって手玉に取るハジメ先生ですから、幼稚園児を懐柔するなど赤子の手をひねるようなものでしょう。

 ところが後日、ハジメがトラブルを起こします。老人ホームで開催される出張おゆうぎ会の練習中に、イジメっ子を押し倒したそうです。

 幸い、お相手の親御さんは温厚な方だったらしく、信ちゃんが電話で謝罪するとあっさり許してくれます。しかし、この謝罪の様子を見ていたハジメは納得いきません。

「僕は悪いことしたの?」
「なんで謝るの?」
「僕は間違っているの、お母さん?」
「また同じことがあったら、僕はどうすればいいの?」

 信ちゃんも美奈ちゃんも、まともに答えることができません。

 美奈ちゃんが児童相談所の堂本(余貴美子)に相談すると、虐待に遭っていた子がイジメを見ると、極端な正義感に走ることがあるんだそうです。アドバイスを乞うても、堂本は「自分で考えろ」しか言いません。

 必死で考えた信ちゃんと美奈ちゃんの答えは、こうでした。

「イジメを見かけたらどうすればいいか、それはハジメが決めるしかない」
「ハジメが決めたことなら、お父さんとお母さんは全力で応援する」

 そんなこんなで、おゆうぎ会の本番の日を迎えます。おゆうぎ会は、信ちゃんママの入っているホームで行われるのでした。

 ホームに梅田家の家族親類が集まります。今回、周囲のそれぞれの家族が問題に直面していました。

 信ちゃんの妹・春代(坂井真紀)は、小学生の娘・アスカちゃんが言うことを聞かなくてイライラ中。ところが、アスカちゃんは春代の保護者会での傍若無人な振る舞いが原因で、クラスでイジメに遭っていました。

 なんとか仲直りしたものの、今度はその親子の仲の良さを見せつけられた信ちゃんママが、アル中で育児放棄したことを思い出し「ごめんね、春代……」と涙。春代も涙。

 信ちゃんの弟・タクミ(37歳フリーター)は、信ちゃんママの担当職員さんを孕ませてしまい「堕胎せよ」と説得中。自分に父親になる資格がないことを美奈ちゃんに吐露し、「変われない自分」に悩んでいます。

 そんなこんなで、おゆうぎ会オンステージです。

 先生のピアノの伴奏にあわせて、20人ほどの園児が「手のひらを太陽に」を合唱します。その中には、ハジメもいます。ニッコニコです。

 ところが歌の最中、ハジメの後ろでイジメが勃発。2人の園児が、ひときわ小柄な男の子の足を踏んだりなど、ちょっかいを出し始めます。気付いているのはハジメだけ。ハジメは先生にアイコンタクトを送りますが、演奏に夢中の先生は気付いてくれません。

 ここでハジメが、信ちゃんと美奈ちゃんに「ハジメが決めるしかない」と言われた通り、行動を起こします。

 まず、足で床ドン! そして、周囲をにらみつけます。迫力満点。歌が中断しました。先生は「ハジメくん、前見て歌いましょ」と不安気です。

 次にハジメは、イジメっ子2人の手を引き、先生の前に連行します。そして、意外なことを言うのです。

「先生、ピアノを弾かせてください」
「3人で、ピアノを弾かせてください」
「お願いします」

 イジメっ子2人に手分けして左手パートを弾くよう手ほどきをすると、自分は右手のメロディを奏でます。曲はサン=サーンス「動物の謝肉祭」より「白鳥」。美奈ちゃんパパがハジメに弾いて聞かせた曲です。ハジメは、世界的なコンダクターである美奈ちゃんパパがそうしたように、イジメっ子2人に音楽の美しさを説くのです。

「この世界にはきれいなものがいっぱいあるんだよ」
「それなのに、どうしてみんなケンカするの」
「どうしてみんなで仲良く歌を歌わないの」

 一同、厳粛に受け止める中、今度は「ドレミの歌」を弾き語り始めました。もう独壇場です。アスカちゃんも、信ちゃんママも、イジメっ子も、イジメられっ子も、歌いださずにはいられません。ホームで暮らすご老人たちも巻き込んで、大合唱になります。

 なんたる扇動能力でしょう。インパクト抜群の登壇から始まり、シンプルで明快な演説、さらに、全員を自然な形で合唱に参加させることで群衆心理を操ってみせます。時代が違えば、言葉悪いけど、すごく悪い例を出すけど、先に謝っておくけどごめんなさいね、これ、ヒトラーかよ! と思いました。信ちゃんママなんてずっとアル中で苦しんでたのに、この会のあと、飲みかけのお酒捨ててたからね。

 でもまあ、そんな超人ハジメも、やっぱり虐待の過去を引きずっています。幼稚園で「家族の絵を描け」と言われて描いた絵には、信ちゃんと美奈ちゃんと手をつないだ自分、その斜め上に、顔面をグチャグチャに黒塗りされた人物が浮いていました。

 それでも、信ちゃんと美奈ちゃんはうまくいってたんです。堂本も、「このままいけば裁判所の判断で特別養子縁組が認められる」と太鼓判を押していました。でもその条件は、ハジメが「親に捨てられた子」のままであることなんですね。

 今回のラスト、ハジメの生みの親を名乗る人間が現れます。黒塗りの高級セダンから高級オバサマ(富田靖子)が降りてきて、ハジメに「ひかり?」と語りかけるのです。

 ここまで、ハジメの実母はクソ貧乏アパートから姿を消した最悪の貧乏女で、男も取っかえひっかえだったので父親も不明と説明されていましたが、正反対の川島なお美さんみたいな富田靖子さんが現れたのです。さて、どうなることやら……どうなることやら! このドラマ、おもしろーい!

 あと、富田靖子さんが川島なお美さんに見えたのもそうですし、1話目のときに「宮地雅子さん出てるー」と思ったら坂井真紀さんだったり、なんか時間の流れを感じました。関係ないけど。
(文=どらまっ子AKIちゃん)