12月1日に発表された「2016ユーキャン新語・流行語大賞」で、上位に「保育園落ちた日本死ね」が選ばれたことに大きな批判が巻き起こっている。

 主催のユーキャンには抗議が殺到、選考委員の漫画家やくみつる氏は、テレビ番組で「過激とか穏当とかは選ぶときになんの尺度にもならない。

そこから議論が巻き起こるのも広い意味での流行語」と反論したが、人々の間で「日本死ね」が広まっていたとはとても思えないのは確かで、委員にも怒りの矛先が向かっている。

 ある新聞記者も「議論を巻き起こしたキーワードまでも流行語とするのなら、ノミネートは今年のビッグニュース一覧と同じになってしまうし、記事で『日本死ね』について書いたものも多くなかった」と選定への違和感を述べていた。

 過去、このイベントに携わった広告代理店のプランナーによると「例えば10年前の大賞『品格』は、数学者・藤原正彦さんの著書『国家の品格』(新潮新書)が広まったものだったのに、一部の選考委員がわざわざ『国家の』を外したんです。こういう偏向思想が入り込むのは、今に始まったことじゃない」と証言する。

 このプランナーは、2000年の年間大賞「おっはー」を流行させるべく、放送作家と共にプロモーションを仕掛けたことがある人物。それだけに流行語大賞の意図的な動きもうかがい知る立場だ。

「07年は、朝日新聞の偏向報道を揶揄した『アサヒる』が流行っていたのに、これを打ち消すために一部のマスコミが必死に安倍晋三首相の批判に置き換えて『アベする』の流行をコラムなどに書いてノミネートに推してました。ただ、流行語大賞は受賞者の出欠もノミネートに影響されるので、当時の厚労大臣だった舛添(要一)さんが出席を決めたことで『消えた年金』が急きょ入ったんです。年金問題(現 民進党)は民主党の長妻昭議員が取り組んだものだったんですけどね(失笑)」(同)

 こうした話はごく一部で、3年前に「アベノミクス」がノミネートされた際も、同時に「アホノミクス」という言葉も入っており、「安倍首相が来場しないことがわかって、逆ギレ的に差し入れたものだった」とプランナー。昨年も安倍政権批判のノミネートはかなり目立ち、50語中17語が政治ネタで「国民の理解が深まっていない」、「アベ政治を許さない」、「戦争法案」、「自民党、感じ悪いよね」といった言葉が並んだ。中でも世間で「安保法案」と知られるものがわざわざ「戦争法案」と置き換えられた表記は、明らかに主催者側の偏向を感じさせるものだった。

 その選考については委員の編集者、清水均氏が「全員集まるのは年1回で、あとは電話やメールで連絡を取っている」としているが、少人数の委員が個々で相談し合って決めてしまう仕組みは、まるで談合。
昨年まで選考委員だったジャーナリストの鳥越俊太郎氏も「大賞は受賞者が表彰式に来られる人を選ぶ」と、純粋な流行の度合いで選んでいないことを暴露している。

 今年の選考委員は清水氏、やく氏のほか政治学者で大学教授の姜尚中氏、作家の俵万智氏、女優の室井滋氏、CMクリエイターの箭内道彦氏。

「実際、ノミネートは主催者が用意して、委員はそこに私見を述べるだけで激しい議論もないので、楽だと思いますね。7~8年はこれで大金をもらえますから、主催者や選考結果をあえて批判することもないんですよ」(前出プランナー)

 年間大賞「神ってる」も、さほど流行した印象がなく、「日本死ね」も行き交う人々の日常会話で耳にしたり口にしたりしたものとは、とても思えない。これならイベント名を「流行させたい語大賞」に変えたらスッキリするかもしれないが、いずれにせよ主催者や選考委員への批判はしばらく収まりそうにない。
(文=藤堂香貴/NEWSIDER Tokyo)

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