サッカーのルール決定を行う国際サッカー評議会(IFBA)が、試合時間を90分から60分にしようという改正案を検討していることが判明した。

 サッカーというスポーツをよりドラマティックにしているのが「アディショナルタイム(ロスタイム)」というルールだ。

初のW杯出場を目前で逃した1994年の「ドーハの悲劇」もその一つ。サッカーの試合は前後半合わせて90分間だが、90分を超えてから決勝点ゴールが生まれることは決して珍しくない。

 しかし検討案は、現在の前後半45分ハーフの試合を30分ハーフに改正。試合時間が短くなる代わりに、プレーが止まった場合には時計をきっちり止め、アディショナルタイムを一切取らないようにするという。スポーツライターが語る。

「サッカー界では近年、“アクチュアルプレーイングタイム”という概念が重要視されています。これは、試合の魅力を数値化するため、ボールがタッチラインやゴールラインを割ったり、ファウルで試合が途切れた時間を差し引いた“実際にプレーしている時間”を発表するもの。トップチームになると、これが60分程度なので、『1試合60分』という数字が出てきたのでしょう」

 アディショナルタイムというのは、これまで幾度となく悲劇(ないしは大団円)を生んできたが、この改正案が導入されれば、サッカー解説・松木安太郎氏の名言「ふざけたロスタイムですね」(2011年のアジアカップ・日本対シリア戦で、ロスタイムが6分と表示された際に漏らした言葉)も過去のものとなる。しかしそこには、“お金の事情”が絡んでいるようだ。スポーツ広告に詳しい広告関係者が語る。

「これはいかにもアメリカ的な発想です。アメリカで人気のスポーツは、NBAもNFLもNHLも“時間が減っていく”ルールで、『プレーが止まれば時計も止まる』『0.00になると試合終了』と、非常に明快です。
このルールのメリットは、なんと言ってもCMが入れやすいことです。試合が動いている最中にCMを入れたら大ブーイングですが、プレーが止まっている時なら、そこで素早くCMに入ったり、画面の脇に広告を入れることができます」

 しかしサッカーの中心は欧州と南米。「サッカーとはそういうもの」という伝統と格式により、長らくアディショナルタイムというあやふやなルールが採用されてきたわけだが、商業化の波はサッカー界をも飲み込み、いろいろな試行錯誤が行われているようだ。前出のスポーツライターが語る。

「ファンを逃さないための改革案は、常に出ては消える状態です。サッカーをビジネスと考える人間の悲願は“クオーター制の導入”でしょう。試合を4つに区切れば、それだけCMが入れられますから。さらにオフサイド廃止案、『点が入るようにゴールを大きくしろ』という議論もありました。スローインの代わりにキックで蹴り入れる『キックイン』は、試験的に導入されたことがあります。1993年のU-17世界選手権、中田英寿が日本代表チームを率いた大会で採用されましたが、背の高いフォワードに合わせるだけの単調な試合が増える結果になり、その後、特に採用されていません」

 長らく“中東の笛”(中東で試合をすると、ホームに有利な判定が下される)に悩まされてきた日本にとっては、「60分案」は追い風。もうロスタイムの悲劇とはサヨナラ!?


編集部おすすめ