“ゲス不倫劇”『あなたのことはそれほど』(TBS系)。20日放送の最終回の視聴率は、14.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

過去最高の視聴率を叩き出し、有終の美となりました。

 さて、前回で関係を清算した、渡辺美都(波瑠)と夫の涼太(東出昌大)。同じく美都の不倫相手の有島光軌(鈴木伸之)と、その妻の麗華(仲里依紗)。最終回は、2つの壊れた夫婦の関係修復がメインになっていきます。

 引き続き、美都はボロアパートで独身生活を謳歌。涼太との離婚の決定的なポイントだった“妊娠”は、光軌との子どもでもなく、ただの美都の思い違いでした。光軌を振り返らせるための“妊娠”は、意味のないものとなり、涼太とも光軌とも関係が切れてしまった美都。

 一方の有島夫妻は、どうでしょうか。子どもを連れて、所沢の実家に帰ってしまった麗華と光軌の仲は、最悪で、休日返上で会いに行くも門前払いされ、敷居を跨ぐことさえも許されません。光軌は、麗華の心が離れたことを痛感し、毎日朝夕3時間かけて子どもの顔を見るために都内から所沢まで通うのでした。目の下にクマができ、消耗していく光軌を見ても麗華の怒りは収まりません。

 麗華が許せなかったのは、マンションの隣人・横川皆美(中川翔子)が撒いたビラの件でした。
光軌の不倫で、窮屈な思いをしなくてはならなくなったことが、引っかかっていたようです。自分のしたことを深く反省した横川の告白によって、光軌は麗華の置かれた状況を知り、謝罪したことで有島夫妻は元の鞘に収まりました。

 ここで、事件が起こります。涼太の自殺疑惑です。涼太の同僚・小田原真吾(山崎育三郎)も「一週間(職場を)休んでる」と、美都に相談。前回、涼太を愛していると告白した小田原だからこそ「俺じゃダメなんだ、涼太をお願いしますね」という台詞に重みがあります。罪の意識から美都は、涼太を捜し出します。

 結局、涼太は自殺しておらず、涼太の待っていた丘で2人は夫婦として最後の会話をするのでした。「ここに来たのも、自分の罪意識からであって、結局自分がかわいいのだ」といったことを涼太は口にし、美都は「ごめんね」としか言えません。最後は、涼太が「みっちゃん(美都)のことは、それほど」と言い、涼太の心をつなぎ留めていた結婚指輪を投げ捨て、夫婦生活は終わります。互いに振り返ることなくその場を去るのでした。

 有島夫妻は、以前よりも親密な関係となり、渡辺夫妻は離婚することに。
同じ“ゲス不倫”がもたらした両極端な結果ですが、どちらも晴れ晴れとした気持ちでその後を歩んでいく模様。

 同ドラマでたびたび話題になる「一番好きな人」というワード。久しぶりに恋人ができた美都の親友・飯田香子(大政絢)が、美都の「歴代一位の彼氏?」との問いかけに、こんなことを言います。

「それを比べてもしょうがなくない? あのころ好きだったのは、あのころの自分が好きだった人。冷凍保存でもしておかないと、今は自分も相手も変わってる。あのころ好きだった人は、もうこの世にはいない」。初恋の残り香に夢中だった美都にとって、この言葉は大きな衝撃だったのでしょう。不倫がいい意味でも悪い意味でも注目される昨今、テレビの前でうんうんと頷いた人もいるはず。

 美都の同僚・森瑠美(黒川智花)の台詞もそうでしたが、泥沼の不倫劇を見た後だからか、こういったごくごく普通のことが、まるで啓示のように聞こえてしまいます。

 それにしても、ドラマ冒頭から“気持ち悪い夫”として描かれていた東出昌大演じる涼太。一途すぎて気持ち悪いという描かれ方が、最後に深い愛として逆転する演出を期待していたんですが、美都の痛いところを容赦なくズバズバ指摘する、モノホンのサイコパスっぷりで最後は終わりました。一方の不倫に陥った光軌の方が“いいパパ”に収まっているのは筆者としては、ちょっと納得いかないです。


 ともあれ、こんな泥沼を経験しても“運命の出会い”を待ちわびる、残念な独女に成り下がった美都が、ラストのシーンで運命の出会いをしたのが柴犬というのが痛快。涼太の口癖の「お天道様は見てる」よろしく、バチが当たり美都は人との恋愛はのぞめないのかも。まあ、それでもいいのか、それが“運命の出会い”なら。
(文=どらまっ子HAYAちゃん)

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