サンドウィッチマンが絶好調だ。先ごろ実施された「歴代M-1王者で最も好きなコンビ」という調査(日刊大衆)で1位を獲得するだけでなく、今年行われた「一番好きなお笑い芸人」調査(日経エンタテインメント!)では、明石家さんまに次いで2位にランクイン。
そんな彼らの勢いを表しているのは、現在のレギュラー本数ではないだろうか。テレビとラジオを合わせ、その数なんと14本! しかも、彼らが出入りしているのは在京キー局だけではない。出身地の東北を大事にしているからか、地方でのレギュラー番組も非常に多いのだ。そんなところも、サンドウィッチマンの好感度につながっている気がする。
■即興で作り上げられる街中でのコントのクオリティに驚愕
彼らが持つレギュラーの中でも特にご紹介したいのが、『サンドウィッチマンのぶらり即席コントの旅』である。東北放送とTVKテレビにて今年10月より放送されているこの番組、地方だからと言ってヌルいところは全くなく、放送時間30分まるまるが無茶ぶりの連続だ。
そのコンセプトだが、基本はいわゆる“街ブラロケ番組”。しかし、ほら貝の音が鳴ったら最後、そのシチュエーションで即興コントをしなければならないという形式である。しかも、その日のコントで最も足を引っ張った出演者(各回でゲスト1組が出演)は、罰としてセンブリ茶を飲まなければいけないルールまで設けられている。
さて、どういう形で番組は進んでいくのか。何度も言うが、サンドウィッチマンの好感度は高い。
そんな最中「ブワワァ~!」と、唐突にほら貝の音色が響く。その刹那、緊張が走り始めた芸人のテンションを察知することは容易だ。即興なので、言うまでもなく台本はない。状況も役どころもオチも、全てアドリブとチームワークで組み立てられていくことになる。
例えば、今までにこんなコントが完成している。
■「新居を探すカップル」(ゲストはニッチェ・江上敬子)
高円寺の不動産屋にお邪魔している最中、唐突にほら貝が鳴った。
江上 (お客さんのテイで)お家をさがしているんですけどぉ。
富澤 (お客さんのテイで)今、夫婦っていうか、セフレなんですけど。
伊達 (店員のテイで)マニアだな、随分。どういう感じの家がいいのかな?
江上 私、お風呂スケスケのやつがいい。
富澤 スケベな女だよ、本当に(笑)。
伊達 お風呂スケスケの物件は無え。
江上 じゃあ、天井は鏡がいい。
伊達 ラブホテルに住め。太ってんな、お前ら。
富澤 2階の方がいいですね。下に聞かせたいみたいなところがあるんで。響かせたいみたいな(笑)。あんま、お金ないんで。
伊達 仕事は何やってんの?
江上 ○○です。(音声処理されているが、おそらく「AV女優です」と答えている)
■「相席」(ゲストはアンタッチャブル・柴田英嗣)
月島のもんじゃ焼き屋で食事している最中、唐突にほら貝が鳴った。
富澤 (店員のテイで)こちらでどうぞー。すみません、相席お願いします。
伊達 (外国人のテイで)スミマセン、スリランカカラキマシタ。
柴田 (鉄板いっぱいに広がったもんじゃ焼きを指して)ダメでしょ! なんで、俺のを食べさすの!?
富澤 元々、もんじゃをちょっと多めにしてあるんですよ。
柴田 スリランカの人が来るのを見込んで多くしたわけじゃねえだろ。
伊達 イタダキマ~ス!
柴田 やめろって、おい!(伊達を叩く) ふざけんな、偉い奴を呼んでこいよ。上司でもオーナーでも。
富澤 (伊達を指して)スリランカ店の上司になります。
柴田 あっ、お店の人!?
■「遺跡発掘」(ゲストは東京03)
江古田駅前でオープニングトークしている最中、唐突にほら貝が鳴った。
伊達 (道路を指差して)ここ、掘るから。遺跡があるって言われてるんだよ。
飯塚 すみません、ウチの前でなんですか? 遺跡なんてないですよ。勝手に掘られても困るんですけど。
角田 早く掘っちまえよ、オラ!
飯塚 あなたは誰なんですか?
角田 ここに、前に落としたメガネが埋まっちゃってる可能性があるんだよね。
伊達 メガネ? (小声で)徳川の埋蔵金ですよ。
角田 (小声で)それ言っちゃうとマズいから。
伊達 (小声で)でも、メガネってどうかな。メガネの嘘はバレるよ。
角田 (飯塚に)メガネはジョークだよ。
飯塚 ジョーク!?
アドリブでここまでできるなんて、改めて思うが芸人は凄い。
■コント開始をびびり続けるゲストと、ずっと余裕のサンド
この番組に出るゲストを見ていると一様に戦々恐々で、「いつ、ほら貝が鳴るのか?」と心ここにあらずの様子だ。何しろ、街ブラ中に神社でお参りした柳原可奈子は「あんまりほら貝が鳴りませんように」と拝んでしまうし、バイきんぐの小峠英二はぐったりした表情で「思った以上に大変でしたね。もう、出たくないです」とこぼしてしまっている。
一方のサンドウィッチマンは、終始、余裕しゃくしゃくのテンションでいるのが凄い。M-1でブレークしたものの、コント職人でもある2人の肝とスキルが印象付けられるのだ。
また、あんなルックスでありながら“人を傷つけない笑い”に人気が集まっているサンド。
“街ブラ”としても“コント”としても新しいこの番組は必見だ! ……と言いたいところだが、カンニング竹山がゲスト出演する「中野区新井薬師寺編」(TVKでは12月23日深夜に放送)で、『サンドウィッチマンのぶらり即席コントの旅』は最終回を迎えるとのこと。
でも、番組は当初から「東京23区の街ブラを目指す」と標榜していたはず。もしも口コミでの人気が高まれば、続編の放送の可能性だってあるかもしれない。期待したい。
ちなみに同番組、放送できなかった未公開含む完全版が来年の1月6日よりdTVにて独占配信されることが決定している。興味を持った方は、是非ご覧いただきたい。
(文=寺西ジャジューカ)