小林稔侍は、結婚の保証人を務めてもらい、かつ、家財道具をプレゼントしてもらうなど、若い時分に目をかけてもらった高倉健を今でも尊敬し続けている。ココリコの遠藤章造は、まだ売れていなかった頃に極楽とんぼ山本圭壱から奢ってもらった恩が忘れられず、いまだに「軍団山本」の番頭役を律儀に務めている。



「大枚をはたけ」というわけではないが、そういう形で人徳は作り上げられていく気がする。

■古着マニア・草なぎの確かな目利き力



 このご時世に珍しい、豪放な振る舞いをテレビで目にしてしまった。2月2日放送『「ぷっ」すま』(テレビ朝日系)での草なぎ剛がすごかったのだ。

 この日、行われたのは「草なぎ剛、人生に1本のデニムを選ぶ」なる企画。ベストジーニストを5年連続受賞し、殿堂入りしている草なぎの元へ「自分に合うデニムを選んでもらいたい」と希望する芸能人が集結。その期待に応え、草なぎがピッタリのデニムを見立てるという内容だ。



 舞台は、草なぎ行きつけの古着店。商品の値札には、あらかじめ細工がしてあり、値段はわからない状態。加えて、芸能人が持参した予算はそれぞれ異なるので、商品の値段を予想しながら臨機応変にスタイリングする必要がある。

 しかし、どの古着も高そうだ。事実、そのへんの棚にサラッと下がっているデニムは100万円の物であった。

 1組目のゲストは、トレンディエンジェル
斎藤司は予算5万円を、たかしは20万円を持参している。古着マニアとして名高い草なぎは、持ち前の目利き力で予算内にデニムをセレクトしなければならない。

 万が一、草なぎの選んだデニムが予算をオーバーしていたらどうする? ……その場合は、草なぎが自腹で補填する。思わず「なんで!?」と困惑のリアクションを見せる草なぎだが、予算内に収めればなんの問題もない。

 結果、草なぎは斎藤に2万5,800円のリーバイス505を、たかしには4万9,800円のオーバーオールをセレクトしている。

 さすが、ベストジーニスト殿堂入りの草なぎ剛。
確かな目利き力である。

■確変が起こった草なぎ、率先して104万円分の古着を購入する



 2組目のゲストは、ゆりやんレトリィバァ。「サイズに合うデニムがなく、1着も持ってない」という彼女のため、草なぎは女性用のデニム選びに臨んだ。ゆりやんの予算は15万円だ。

「サイズに合うデニムがない」という彼女の悩みは本物だった。36インチも39インチも、試着すると彼女の体型には小さすぎた。

ついには、お店に1着だけあった44インチのデニムを試したら、これは彼女の体型にピッタリ!

 だが、問題は値段だ。果たして、予算内に収まるだろうか? ……ダメだった。ゆりやんに見立てたデニムは1955年以前に生産されたレア物で、25万8,000円という高値が付いていたのだ。

 ここで、草なぎに異変が起こる。

「じゃあ、ゆりやんにプレゼントとして買ってあげるよ!」

 唐突に、企画内容をなし崩しにする草なぎ。「去年、ゆりやんは頑張ったし」と、予算そのものを取っ払い、全額負担してプレゼントするという男気を見せたのだ。


 それだけではない。まず、彼本人が気にしていた熊ジャン(25万円)を手に取り、勢いのままに購入を決断。そして、ユースケ・サンタマリアが欲しがっていたライダースの革ジャン(25万円)も、ついでに購入。それどころか、進行役を務めるテレビ朝日・大熊英司アナウンサーにもデニム(22万円)を見立て、購入!

 締めて、104万円。草なぎに確変が起こった。

 この突然の大盤振る舞いについて「みんな、そういう時あるじゃん」と本人は解説したが、いや、なかなかない話だと思う……。


■自分に言い聞かせるように「今年、頑張ればいいんだよ!」



 先日発行の某スポーツ紙にて、『「ぷっ」すま』の3月終了が報道されている。この情報の真偽はいまだ不明だが、もし本当ならば、今回の爆買いは感慨深い。ラスト間際に見せた狂い咲きということになるからだ。

「今年、頑張ればいいんだよ!」と自分に言い聞かせながら、4人分の会計を済ませた草なぎ。ゆりやんのためにデニムを購入した際は「“時の人”にプレゼントすると僕にも運が付いてくる」と、前向きな姿勢を見せていた。

 唐突な爆買いに戸惑いの表情を浮かべる共演者らであったが、草なぎへの恩と人徳は生まれたはずだ。

 これは、未来を見据えての有意義な狂い咲きだ。転換期に立った元国民的アイドルの意地を見た思いである。
(文=寺西ジャジューカ)