大食い番組全盛時代、フードバトルでモンスターと恐れられた男、ジャイアント白田。なぜか今、定期的に「体調不良説」「失踪説」などが降って湧く男でもある。



 先日放送された『水曜日のダウンタン』(TBS系)の「テレビに食べ物が映ったら同じもの食わなきゃいけない生活、フードファイターなら24時間ギリ達成出来る説」でも、途中でギブアップするなど、全盛期の活躍ぶりからはほど遠いふがいなさをお茶の間に見せてしまった。

「大食い」というジャンルに命を懸けて取り組んできた男は、いま何に命を懸けているのか? そして、かつてのモンスターに現在の大食い界の実情はどのように映っているのか? ジャイアント白田と、日本の大食い界の現在地を探る――。

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――今、一般の人からタレントさんまで、いわゆる「フードファイター」ではない人たちがYouTubeなどで大食い動画を配信するのが流行していますが、白田さんはレジェンドとして、そのような昨今の流れをどのように見ていらっしゃいますか?

ジャイアント白田(以下、白田) いや、フードファイターたちも、たとえば正司(優子)さんやロシアン佐藤さん、アンジェラ佐藤さんなんかも動画撮ったりしてるんじゃないかなぁ。あと、僕なんかよりずっとレジェンドの魔女・赤阪(尊子)さん、彼女もやってるみたいな話聞きますよ。

――フードファイターの方々も、活動の場所をテレビからネットに移してるということですか?

白田 そうですねぇ。その筆頭株が木下ゆうかちゃんじゃないかな。
テレ東の大食い選手権では優勝経験がないのに、YouTubeでは大ブレークして。というか、単純に今、テレビで大食いの番組や大会って、ほどんどないじゃないですか。

――そうなんです。寂しいんですよ。

白田 大会がない中で、変な話、大食いで食ってくって大変じゃないですか。僕が現役でバリバリにやってた頃って、有名になりたくてやっていたわけじゃなくて、大会で優勝することが目的だったんですよ。
みんなで切磋琢磨して、レベルもどんどん上がっていって、それがすごく楽しかったんですけど、一時期から大食いっていうジャンルを足掛かりにしてちょっと顔を売りたいなみたいな、大食いから有名になりたいという人が増えていった印象はあります。

――タレント化していった。

白田 そうですね。タレント志望みたいな感じで大食いに足つっこんでくる人が増えたかなとは思う。これは言っていいかわからないですけど(笑)。

――白田さんの感覚は、そうではなかったんですね。


白田 小林尊くんと当時よく話してたのは「もっともっとフードファイターをアスリート化して、それこそオリンピックの競技に入れるみたいな勢いで、競技として世の中に広めていきたいよね」って。

――なるほど、今の流れとはまったく違いますね。

白田 僕は今の現役の子たちのことをそこまで知らないからわからないですけど、見てる印象としてはアスリートとして自分の限界に挑んでいくとか、大会に向けて自分のパフォーマンスを上げていくとか、そういう意識の面ではそこまでギラギラしたものは感じないかなぁ。

――白田さんご自身がユーチューバーとして稼ぐことに興味はないですか?

白田 ゆうかちゃんの話聞くと「すごいないいな」って思うことはありますけど(笑)、僕はやろうと思ったことはないですね。まず頻繁に動画を上げ続ける、頻繁に大食いをし続けるっていうことが僕の性分には合ってないというか。僕は大会に照準を絞って胃を鍛えていくタイプだから。


――アスリートですね。

白田 それと年齢も年齢だから、(YouTubeで大食いは)やろうとは思わないですね。

――白田さんも全盛期の頃は相当、体を酷使されてきたと思うんですけど……。

白田 ものすごい酷使しました(笑)。

――40代目前になって、体調の変化を感じていますか?

白田 体調の変化というか、やっぱり現役当時から感じていたことではあるんですけど、年々「量を食べたい」っていう欲求ってなくなってくるんです。とはいえ職業柄、胃に入れてナンボ、胃を広げてナンボみたいなことを求められるので、やらなきゃいけない。
でも、量を食べたいモチベーションはどんどん下がっていく。以前はそれでも「あの大会で優勝したい」とか「あの記録を抜きたい」とか明確な目標があるから頑張れたんですけど、そういった目標がだんだんなくなっちゃう。そのギャップですよね。大会を引退(2007年)した2年くらい前から、そういった葛藤はありました。

――モチベーションが下がっているのに、食べなければいけない……。

白田 頑張れなくなっていましたね。


――でも引退した27歳って、たとえばほかのスポーツでしたら、一番脂が乗ってくる時期ですよね。フードファイターにとっての一番いい年齢は、もっと下?

白田 うーん、MAX鈴木は、確か僕の1個下なんですけど、彼の場合は確か35くらいから出てきて、強いモチベーション持って頑張ってて。だから年齢というよりは、量を食べることに対するモチベーション、欲求の強さじゃないですかね。さらにタレント化することで、普通に生活してたら見られない世界をのぞく楽しさもある。それが原動力になってる人もいると思う。そういう意味で、フードファイターに適した年齢なんてホントはないのかなって思いますよ。

――モチベーションひとつで頑張れる。

白田 そう。菅原(初代)さんとか、バラエティでもちょこちょこ一緒になりますけど、あの人、今でも現役のときと同じくらい食べるので(笑)。普段トレーニングほとんどしてないらしいんですよ。それなのに、ぶっつけ本番でかなりのポテンシャルを発揮できるのはなんでなんだろうなって、いつも不思議です。

――フードファイターの中にも、いろいろなタイプがいる。鍛えて鍛えて臨む人と、菅原さんのように自然体で行く人と。

白田 菅原さんを自然体とするのもアレですけどね(笑)。自然体で10キロくらいの容量いける。あれでトレーニングしたら、超人になっちゃうんじゃないですか?

――白田さんが引退を決めたきっかけは?

白田 もともと30歳までに自分の店を持ちたいなと考えていました。それはフードファイターになるずっと前から。フードファイターのトレーニングって、ものすごく時間がかかるんです。ひとつの大会に向けて、最低でも3カ月は必要。めっちゃ食べて胃を少しずつ広げていくみたいなイメージなんですけど、でもすごくおなかいっぱいになったら、いろんなことめんどくさくなるじゃないですか(笑)。そういうわけで、トレーニングが一日仕事になっちゃう。単純に自分の将来の夢に対して時間が取られすぎちゃって、このままフードファイターとしてやっていくのもなぁ、潮時なのかなぁっていうのは、割と早い段階で考えてましたね。

――3カ月間……途方もないですね。

白田 途方もないですし、孤独。トレーニング期間中は、「俺なんでこんなことしてるんだろう」って、ただただ思ってましたね。自分はフードファイターになりたかったわけではなく、自分の店を持ちたいと思ってやってきたけど、「タレントが店を出した」みたいな感じで言われますしね。

――白田さんとしては順番が逆だったわけですね。

白田 タレントを目指していたわけではまったくないし、有名になりたいみたいな欲求も全然なかったんですよ。

――でも、現実として自分の名前がどんどん世間に知られていき……それに違和感はなかったですか?

白田 そうですね……途中でもう慣れちゃいましたけど(笑)。最近はそこまでテレビに出てないですし、あったとしても月に数本……でも相変わらずインパクトあるし(笑)、どこに行っても顔は指されますけど。違和感というか「もういい加減忘れてよ」とは思いますね。

――『水曜日のダウンタウン』は大きいと思うんですよ……。番組内での「ポンコツ」的な立ち位置については、どう思われますか?

白田 なんとも思わないですよ(笑)。好きに使っていただいて結構ですと。

――懐が深い!

白田 そんなことはないですけど(笑)。

――やっぱり、回数よりもインパクトだと思うんですよ。

白田 江頭さん的な感じですかね(笑)。

――テレビ出演に関しても、食べる仕事はもうあんまり……でしょうか。

白田 そうですね。量食べる仕事は、ほぼほぼ断ってます。『水曜日のダウンタウン』も、僕が食べられない前提で呼ばれてる(笑)。

――だって全盛期の白田さんを知っている身としては、「どこか体調悪いのかな……」と思ってしまうんですよ。

白田 確かに確かに。でも、体調はすこぶるいいです。問題ないです。たまに「また挑戦してみたいな」って思うことはあるんですよ。でも、いざトレーニングするか……となると、そんな気はさらさらなくて(笑)。――でも、それくらい、あの頃にすべてを傾けたっていうことですよね、情熱のすべてを。かつての同志である、小林さんやギャル曽根さんらレジェンドたちとの交流は、まだおありですか?

白田 ありますよ! 小林くんは日本に帰ってくるたびに会いますし、医大生だった射手矢(侑大)くんは医者になってて、彼とは自宅も近いから。ただあの頃やってた仲間で、将来フードファイターで食ってこうって考えていたのは小林くんくらいだったんじゃないかなぁ。

――それぞれ将来やりたいことは違っていたんですね。

白田 フードファイターがこの先どうなるかっていうのを、いま彼ひとりが身をもって示してくれているというか。彼がいい感じになってくれたら、若い世代の子たちも先をイメージしやすくなるんじゃないかな。

――若い子たちに相談されたりしますか?

白田 ないことはないですけど、僕からアドバイスできることなんてないですよ。ただ大会が少ないっていうのは若い子たちのジレンマとしてありますよね。だからというわけじゃないけど、YouTubeなどを使ってフードファイターとしての認知を上げていくやり方を取ってるんだと思う。

――セルフプロデュースですね。

白田 そういう部分では、今の子たちのほうがずっと長けている。僕が現役の頃は、そんなこと考えたことなかったから。記録しか考えてなかった。僕は偉そうなことを言える立場じゃないですけど、記録を追い求めて「自分は世界最強のフードファイターになるんだ」っていう人と、「この業界で一番稼ぐ人間になるんだ」っていう人とでは、取るべき道は全然変わってくると思うんです。将来自分がどんなフードファイターになりたいのかっていうイメージは、もっと明確に持ったほうがいいのかもしれない。

――なるほど。

白田 漠然と「フードファイターになったら稼げそうだな~」ってふわっと思ってる人たちは確かに多くて、そうじゃないよねとは思う。もっと強く、ビジョンを持ってやったほうがいいように思いますね。

――それだけ体も酷使しますし。

白田 そうなんです。あとネットって、一度アップすると残ってしまうじゃないですか。だからそのあたりは慎重になったほうがいい気もする。

――でもやっぱり、テレビで大食いが見たいんですよ……。

白田 僕もテレビで見たいです。でも、今のテレビって、いろいろうるさいじゃないですか。だからテレビでは、もうやれないんじゃないのかなって。だったらネットの動画配信だったり、お祭りみたいなころで大会を開催したり、僕らとしては競技としての大食いを復活させたいですね。

――そのときには、白田さんだったり小林さんだったりギャル曽根さんだったり、そういうアイコン的な存在は不可欠になるんじゃないのかなと思うんです。

白田 ギャル曽根は確かに、大食いというコンテンツで成功した最たる例ですよね。ギャルみたいなメイクでよく食べるというギャップと、アスリート的な大食いとは真逆な「私これ苦手だから食べたくない」とか、試合中にメイク直したり、ギラギラしてる世界に自由奔放な子がやってきて記録を作るという。大食いの世界に風穴をあけたという意味では、ギャル曽根の功績はデカイと思うんですよ。

――なんか漫画の世界みたいなんですよね……当時の大食いって。

白田 確かに。見てる人がそういうドラマを感じてくれるような大食いの世界がまた戻ってきてくれればいいなって、僕も陰ながら応援してます。

(取材・文=西澤千央)