(前回までのレビューはこちらから)

 いわゆる青春モノのドラマには、エピソードとして欠かせないイベントがいくつかある。クリスマスやバレンタインデーが定番だが、「文化祭」というのもそのうちの一つだ。

当日の出し物に加え、練習や準備の時間も多く、そのあたりも含めてのストーリーが作りやすいということもあるだろう。そして、この「定番イベント」をどう描くかで、ドラマ全体の面白さが決まってくる。

 ドラマ『チア☆ダン』(TBS系)第5話は、そんな学校生活での一大イベントである文化祭についての物語だった。

 お祭りでのチアダンス成功を受け、2人の入部希望者が現れたROCKETS。気持も新たに練習に向かったわかば(土屋太鳳)たちが目にしたのは、壁のいたずら書きや、切り裂かれた垂れ幕など、荒れ放題になった部室。チアダンス部と対立する、チアリーダー部の望(堀田真由)らの仕業だった。


 仕返しに行こうとするメンバーをわかば(土屋太鳳)は止める。「今はキレイな部室で新入部員を迎えるのが先」。そう言って片付けを始め、新入部員となった芙美(伊原六花)とカンナ(足立佳奈)を迎え入れ、新たなスタートを切るROCKETS。お祭りの評判も上々で、商店会からはお礼として、練習用の鏡を贈られる。

 教師の漆戸(オダギリジョー)も、彼女たちの頑張りを見て、励まされる。顧問としてできることを続けるうちに、徐々に昔の自分を取り戻していた。
そして彼は、チアダンスのコーチを探すため東京へと向かうのだった。

 発表の場である文化祭が近づいてくる。場所と時間の抽選に臨んだわかばは、「15時から体育館」という好条件を引き当てる。しかし、同じ時刻、中庭ではチアリーダー部が発表をすることとなる。奇しくも、因縁の二つの部が競い合うこととなるのだ。

 実は、望がわかばたちにつらくあたるのには理由があった。
わかばは、高校に入学した頃、希望していた福井中央高校に行けなかったことで落ち込んでいた。そんなわかばを励まし、チアリーダー部に誘ったのが望だったのだ。チアダンス部を立ち上げ、いきいきとしているわかばに嫉妬心もあるのだろう。そんな経緯もあり、わかばは望にキツく言うことができないでいたのだ。

 文化祭に向けての練習に励む中、芙美がチアリーダー部の女子とモメて怪我をしてしまう。さすがに我慢ができなくなり、チアリーダー部に乗り込んでいくわかば。
望に向かって言う。

「私には何をしてもいい。でも仲間を傷つけることは許さない」

 しかし、望は「あんただって仲間を傷つけただろ」と言い返す。

 わかばは、望とチアリーダーをやっていた頃、2人で聴いた、SHISHAMOの「明日も」に感動し、この曲を文化祭で一緒に踊ろうと約束していたのだ。しかし、結果として二人は別れ別れになり、その思いは果たせなくなった。

 夢を追うことで、誰かを傷つけてしまうことは確かにある。
誰かとの約束と、自分のやりたいこと、二つの板挟みになって、どちらを優先したらいいか悩むこともあるだろう。でも、どんなに気を使っていても、人を傷つけずにいることはできないと思う。それを最小限に留める努力は必要だろうが、気に病みすぎて何もできないのはもったいない。

「傷つくのを恐れない」という言葉もあるが、どちらかというと「相手を傷つけることによって自分が傷つくことも恐れない」のが大切だ。そして、何か自分の思いを遂げるために誰かを傷つけてしまったら、その痛みはしっかりと受け止め、噛み締めて欲しい。それはまた、自分が新たな困難に立ち向かっていく時の力になるはずだ。


 そんな頃、コーチを探しに行った東京で漆戸は、かつて厳しい指導で関係を悪化させてしまった教え子、木田(岐洲匠)と出会う。彼もまた、頑張るあまりに人を傷つけてしまったことがあったのだ。

 迎えた文化祭の日、雨のため、中庭で踊る予定だったチアリーダー部の発表は中止となる。結果的に体育館のチアダンス部のみがパフォーマンスすることになったのだ。予想外の展開に喜ぶROCKETSだったが、そんな中、わかばは雨の中で残念そうに佇む望を見つけ、声をかける。

 いよいよROCKETSの時間、わかばはマイクを持ち、チアリーダー部に体育館を譲ると宣言する。吹奏楽部との合同発表のチアリーダー部は、広い場所でないとできない。自分たちは空いている教室でもできる。本当のチアスピリットはそういうことではないか、そう言ってROCKETSのメンバーを説得したのだ。

 彼女の呼びかけに、戸惑う望たち。しかし、校長(阿川佐和子)の助言もあり、体育館で発表をすることとなった。そして、望とわかばは和解。最後は、チアダンス部とチアリーダー部が合同で踊りを披露する。

 今回の話は、望の心の変化を描いた物語だったと思う。仲の良かったわかばが、汐里(石井杏奈)たちに取られてしまったような気持ちだったのかもしれない。チアリーダー部の部長として、部をまとめていく責任感もあったのだろう。ただ、ささいないさかいやこだわりから、本当に大切なものを失ってしまうのは、とても残念なことだ。

 今回のエピソードを通して、わかばたちが教えてくれるのは、やりたいことに対しても、そのために傷つけてしまった人に対しても、正々堂々とぶつかっていくということだ。うまくいっているときに頑張るだけではなく、うまくいかないときにこそ、進むべき道を見つけ、努力していくことが大事なのだろう。

「明日も」の歌詞にもあるように、本当に人生、いいことばかりじゃないのだ。

 漆戸が東京から連れてきたコーチ、それは、わかばの姉、あおい(新木優子)だった。強力な助っ人を迎え、さらにパワーアップするROCKETS。しかし、その後漆戸がバイクにはねられ怪我を負ってしまう。ふりかかる苦境に、わかばたちはどう立ち向かっていくことになるだろうか。

(文=プレヤード)