数多くのTVドラマやVシネ作品に出演する、俳優・原田龍二。芸歴26年を数えるベテラン俳優が最近、“裸”で注目を集めている。

きっかけは、2016年末の『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)で、アキラ100%と共に披露した“全裸お盆芸”だ。昨年も同番組で「変態仮面」姿を披露し、視聴者に強烈なインパクトを残した。すっかり世間的に「裸の人」というイメージが定着した中で、今年10月、デジタル写真集「愛」シリーズ(全4タイトル/講談社)を刊行。露出度高めに、その肉体を披露している。なぜ原田龍二は“裸のおじさん”になったのか――。

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――あらためてじっくり写真集を見せていただくと、意外とムキムキな体というわけではないんですね。もちろん筋肉はついているものの、48歳の円熟味も感じました。

原田 やろうと思えばもっと鍛えられるんですが、自分自身でそんなにバキバキの肉体を見たくないんです。だからプロテインも飲まず、ジムにも行かず、自宅でできることだけをやっています。トレーニングは毎日10分程度で、それほど一生懸命にやっているわけではないですね。

――なぜ自分で、そういう体は見たくないんですか?

原田 旅番組で温泉に入らせてもらう機会があったときなどに、主張しないようにしたいんです。メインはあくまで温泉で、僕は言ってみればそこにお邪魔している小動物。
ビースティ・ボーイズの一員にすぎないんですよ。そこでバキバキの体をしていたら、視聴者は「鍛えてるな~」って思っちゃうじゃないですか。観てほしいのは、そこじゃない。かといって、ダルダルの体では見栄えがよくないから、最低限の体作りをキープしています。何事も、主張しないけど、その人の主義がそこに見える、くらいの頃合いが好きですね。

――主義といえば、番組で温泉に入る際には、水着やタオルを身に着けないのがこだわりだとお聞きしました。

原田 旅番組で「撮影のために特別に許可を得てタオルを使用しています」みたいなテロップが入るでしょう? 僕はあれが、温泉に対してすごく失礼だと思うんです。入る側にとっても、布切れ一枚巻いているのといないのとでは、お湯の感じ方が全然違ってきてしまう。入らせてもらう側として、気持ちよく入るのが使命だと思うんです。だからスタッフの方は大変だろうけど、カメラアングルや映像で処理していただいてます。

――そんなにお湯の感触が違うんですね。

原田 雲泥の差です。
最初に温泉番組に出たときは、葉っぱで隠したんですよ(笑)。新潟県の雨飾温泉という、林の中にある露天風呂に行ったときでした。隠す用のバスタオルがちょうどなかったので、「じゃあこれでいいですよ」って、そのへんにあった葉っぱを何枚か取って。なんでも自然にやりたいんです。温泉で布をまとうのは、自然じゃないですから。

――今回、写真集発売に際して「全裸バスタブ会見」を開かれましたが、ここでも全裸を貫いたのは、その主義によるものなんですか?

原田 最初は水着を用意しようかという話もあったんですが、「全裸」とうたうからには全裸でやるべきだな、と。会見では「本当に全裸なんですか?」って聞かれて、桶で隠して「全裸です」とやる場面もあったので、本当にはいてなくてよかったです。そこで海パンはいてたら、ズッコケちゃいますよね。

――原田さんの「はいていない」といえば、やはり16年末の『ガキ使』での、アキラ100%さんとの共演ですよね。観ていた誰もが驚いたと思いますが、なぜ出演することになったんでしょうか?

原田 おそらくスタッフの方が、僕がそういう入浴スタイルでやってるのを観て「この人だったら、やってくれるんじゃないか」ってことでオファーをいただいたんだと思うんですけど、真意はわからないです。お話をいただいて、チャンスだと思いました。自分も、ダウンタウンのお2人が好きで『ガキ使』はもちろん観てましたし、あんなに注目される番組もないので、喜んで引き受けました。


――断るという選択肢は、自分の中になかった?

原田 なかったですね。「イエス」か「大イエス」か。「大イエス」ですよね(笑)。そして、出るからには全力でやろう、と。「テテーン、アウトー!」の音が聞こえた時、「ヨシッ!」と思いましたね。反響は本当に大きくて、ロケであちこちに行ったときに、い方から声をかけられることも増えました。関西のバラエティ番組などに呼んでいただいたときも、やはり「なんで(『ガキ使』に)出られたんですか?」と質問していただけて、そうすると、いろいろ話すことができる。かっこつけたエピソードより、ちょっと面白かったりダサかったりする話をするほうが楽しいし、喜んでいただけるんですよね。自分自身、「かっこいいですね」と言われるのは当然うれしいですが、「面白いですね」と言われるほうがもっとうれしいです。

――とはいえ、原田さんは二枚目俳優のイメージが強いですし、プロフィールをさかのぼれば、「第3回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」準グランプリですよね。これは意外と知られていない気がしますが……。

原田 当然そうでしょうね。
知らなくていいんですけど、こんな人間も出てるんですよ(笑)。

――ジュノンボーイといえば、今も昔もイケメン俳優の登竜門です。原田さんは、「イケメン」と呼ばれることに抵抗はないですか? 

原田 そう言っていただくことは多いですが、自分の中では「『イケメン』じゃねぇぞ」っていう感じでした。僕の生きざまの全部を知って「イケメンですね」と言われるんだったらいいですけど、表面だけ見てそう言われることに対しては、ずっと「おいおい」って思ってます。そもそも今となっては、「イケメン」って言葉自体が、だんだんチープになってきていますよね。何をもってイケメンというのか? かっこよく見えればイケメンなのか? 僕は、それは違うと思います。

――確かに、「イケメン」という言葉自体、食傷気味になってきているかもしれません。

原田 たとえば、殺されそうになっている人が目の前にいたときに、そこで自分の命を張って助けることができるかどうか。本当のイケメンかそうでないかの分かれ道って、そういうところだと思います。たとえが大げさだけど(笑)。見かけじゃなく、行動や思想も全部ひっくるめて「いい男」が、本当のイケメンなんだと思う。芸能界って、とかく内面のかっこよさに触れられる機会があまりないんです。
ロングインタビューや密着取材があっても、本質的な部分にはなかなか迫れないから、「イケメン」という言葉で片付けられちゃうのかな、という気はします。本当は、もっとその人のかっこよさを表現する的確な言葉があるはずなんですよ。

――そういうふうに「イケメン」の一語で回収されてしまうことへの反発から、『ガキ使』のようなぶっとんだことに挑戦したかった……という気持ちもあるんでしょうか?

原田 いや、今はもうどう思われてもいいですし、どういうふうに形容されても自由だと思っています。自分さえ自尊心をしっかり握りしめていればいい話で、「裸になって面白いことやってくださいよ」って言われて、やって笑ってもらえたらいいですから。ブルース・リーじゃないですけど、水のようにいろいろ形を変えながら、心は常に白くいたいですね。いろんな色に染まれるように。今は“裸色”に染まってます(笑)。

――思い描いていた未来は裸色ではなかったと思うんですが、若い頃から現在のような立ち位置を目指していたんですか? 

原田 いえ、僕はそもそも数年でやめると思っていたというか、そういう予定だったんですよ。予定が狂って、こんなに長くやることになりました。できると思ってなかったんです。人前に出て何かやるのが恥ずかしいし、人の期待に応えられない。役者って、「恥ずかしい」と思っていたら、できない仕事なんですよ。
一番いらない感情ですから。だから向いてないし、これは到底続けられないな、と。今も何も変わってないです。慣れてきてはいるけど、基本的に人前で何かやるのはすごく苦手です。

――そうなんですか? 全裸バスタブ会見をやっておきながら!?

原田 あれは、マスコミのみなさんがわざわざ来てくださってますし、何しろ裸って、かっこつけないでいいじゃないですか。若い頃から、かっこつけるのは本当に苦手です。自分の見せ方もわからないから、芝居でも監督とディスカッションして「いや、俺はこう思う」なんて1回も言ったことないですね。

――でも、役によっては当然「かっこつけてくれ」と要求されることもありますよね?

原田 もちろん、かっこいい役もたくさんやらせていただきましたけど、疲れますね……。「かっこいい」と言われることは当然嫌じゃないけど、言われないほうが楽ではあります。ただ、どう考えてもかっこいいとはいえない「変態仮面」の姿でも、「かっこいい」と言われたことがあるので、人の意見は十人十色なんですよね。だからもう、そこは気にしていないです。

――昔からのファンの中には、失礼ながら「めちゃくちゃかっこいい俳優さんだと思って好きだったのに、変わってしまった……」と思う人はいないんでしょうか?

原田 もちろん、そういうご意見もあります(笑)。でも、その方のためだけにやっているわけじゃないですから。否定的な意見はあって当然だし、それでいいと思います。一方で「あの頃はこういうことはしなかったけど、今は今でいいですね」と、昔から温かい目でずっと見てくれている方もいて、それはうれしいです。基本的に、僕が仕事を選んで発信しているわけではなくて、いただいた仕事をその都度全力でやるだけですから、それについてきてくれるんだったら「ありがとうございます」と。一方で、若い人からは「風変わりなおじさん」って思われてますけど、それで本です。だって、本当に変なおじさんだから(笑)。

(取材・文=斎藤岬)

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