12月9日に放送された『今日から俺は!!』(日本テレビ系)の第9話。今回のエピソードは、開久との全面対決だ。

■秀逸なアクションシーンだからこそ、惜しいポイントがある

 三橋貴志賀来賢人)と伊藤真司(伊藤健太郎)のせいで開久がナメられることが我慢ならない相良猛(磯村勇斗)は、何もされてないのに「開久の不良が伊藤に集団でやられた」というニセ情報をでっち上げ、番長・片桐智司(鈴木伸之)を焚きつけることに成功する。

 伊藤を待ち伏せた智司は、メリケンサックをはめ、お互いが目をつむった状態で殴り合う変則ルールのタイマンを持ちかけた。これは罠だ。バカ正直に目をつむっているのは伊藤だけ。目を開けたままの智司は、視界を塞いだ伊藤を余裕でボコボコに……。しかし、いつまでたっても伊藤は目を開けない。

意地を貫く伊藤を見て、智司は心変わりした。

智司「目開けろ、伊藤。いいから、目開けろー!」

 伊藤の姿に感化された智司は、メリケンサックを捨て、真っ向勝負で伊藤とのタイマンを仕切り直した。

 実はこのドラマ、アクションシーンが意外にいい。迫力十分、心理描写も予想以上に繊細だ。原作はアクションもギャグパートも魅力的だったが、ドラマ版はギャグ(ムロツヨシ佐藤二朗など)よりシリアスパートのほうが圧倒的に面白い。
今回の第9話はアクション要素多めの構成である。見どころの多い回だったように思う。

 だからこそ、惜しい場面がいくつかある。例えば、智司が目を開けるよう伊藤に促したくだり。ここ、原作はもっと熱いのだ。意地を貫く伊藤を見て揺れた智司は「テメーと勝負してみたくなったぜ」と、自らも目をつむった。
お互いが視界を塞いだ小細工なしの乱打戦は続き、結果、両者ともにボロボロの状態に。この流れで、智司の「もう、いーだろ。俺の負けだ。俺は最初、目ェ開けてたからな」というセリフへとつながるのだ。

智司「テメェ……あんまバカだと、そのウチ死ぬぜ」

伊藤「意地張るといい事があるんだ」

智司「憎たらしい野郎だよ」

「相良らの捏造」から「伊藤の実直」へ心の針がグッと傾いたことのわかる描写だ。胸の内の揺れがスッと伝わった。
相手に目を開けさせるのと自らがつむるとではまったく違うと、おわかりいただけただろうか?

 せっかく良く描けているケンカシーンだ。だからこそ、些細な部分が余計惜しく思えてしまう。

■カットされた名言と説得力

 三橋、伊藤、そして高の今井勝俊(太賀)と谷川安夫(矢本悠馬)は、4人だけで開久へ乗り込むことにした。失脚した智司に代わって頭を張るのは、相良だ。

 大勢の不良に阻まれ、相良へたどり着くことのできない伊藤たち。そんな中、「三橋をやった」という報告が相良に入った。

伊藤らの眼前には、血まみれで引きずられる三橋の姿が……。

 しかし、これはやられたフリをすることで相良に近づく三橋の作戦だった。立ち上がった三橋は、驚きの表情で固まる相良に右ストレートを放ち、瞬殺ノックアウト! こうして、三橋らは開久制圧を果たした。

 ここ、惜しすぎる。絶対、もっと丁寧に描写すべきだった。前話レビューでも触れたが、そもそも原作で智司にクーデターを起こすのは相良ではなく、「末永」という男である(本来、相良はあまり地位に興味はない)。


 原作では、こんな流れだった。末永に近づくことに成功した三橋。三橋の講じた作戦に驚きの表情を見せる末永。でも、三橋は一気に行かない。

三橋「テメーをだまくらかしてマヌケ顔おがもーと思ったんよ」

 末永は、まともな勝負でも三橋に負けないと思っている。

末永「ナニ、勝ち誇った顔してやがんだよ。テメー、今どれだけのチャンスを逃したのかわかってんのか。俺らぁー智司より強え―ぞ!!」

三橋 「バカ言ってんじゃねェー!!」

「俺は智司より強い」という言葉を聞いた三橋の表情は豹変し、マジモードへ突入する。そして、三橋は右ストレートを2発。為す術がない末永は、あっけなく痙攣KOを喫した。つまり、不意打ちではないのだ。完膚なきまでの実力差を見せつけている。あっけにとられる開久勢を前に、三橋は「こりゃ、つまんねーわ」と一言。

 三橋の怒りの着火、「こりゃ、つまんねーわ」の名言、そして“千葉最強”を名乗るにふさわしい説得力をドラマ版は削ぎ落としている。どう考えても改変すべきシーンではなかった。内容的にも尺的にも、原作通りで問題なかったはずだ。惜しい。そのままで行くべきだったと思う。

■第2シーズンの可能性は?

 エンディングにて、今井がヤクザにフクロにされ、意識不明の重体に陥ったとの報告が谷川から入った。原作の最終エピソードがドラマ版の最終回に選ばれたということだ。

 ドラマ版がスタートする前、今回の実写化の成功を予想していた視聴者は少数だったと思う。しかし、フタを開けたら想定外の大ヒット。原作の最終回エピソードをドラマ版が選んだということは、おそらくドラマ版『今日から俺は!!』シーズン2は予定されていないということになる。当然だ。もともと、それほど期待されていなかったのだから。

 ドラマ版で描かれていない秀逸なエピソードは、いまだ数多い。これは、原作ファンにとっての無念だ。“修学旅行編”を描けば中野誠が登場するし、“埼玉編”を描けば高崎秀一が登場する。今井に恋する森川涼子(通称“バナナ女”)や、正義感あふれる赤坂道場の門弟・田中良(通称“良くん”)の不在も残念だった。特に中野だ。開久との全面対決や最終回エピソードに中野がいないのは、原作ファンにとって不完全なのだ。

 それらの無念さと、今回獲得した数字的な成功、世間の空気感も含めて考慮すると、『今日から俺は!!』シーズン2の可能性が急上昇している気がしてならない。

 これは、願望込みでもある。あの輪の中に中野がいてほしい。ケンカレベルは三橋&伊藤と同等クラス、一匹狼を貫き、窮地の時にはニヒルに助太刀に入る彼。男の子の琴線を絶妙にくすぐる超重要キャラクターである。ドラマに登場しなかったことで、どれだけ中野を好きだったか、我々は逆に気づかされたというか。だからこそ、第2シーズンでの中野の登場を待望している。

(文=寺西ジャジューカ)