年の瀬に、大変なニュースが飛び込んできた。コミケにサークル参加したり、コスプレを用いた町おこしなどで「オタク議員」として知られている東京都大田区の荻野稔大田区議会議員が、年末をもって議員辞職を決めたというのだ。
さっそく本人を突撃した筆者に、荻野区議は「年末付けで、議員を辞職するための辞職願を区議会議長に提出済みです。年末年始を挟むため、正式には手続きも発表も年明けになってしまいますが……」と明かす。
辞職のきっかけとなったのは、世間の注目を集めた10月の事件が原因だ。
すでに報道されているように、荻野区議の銀行口座が振り込め詐欺に利用されていたことが発覚。しかも、口座を譲渡した容疑で任意聴取を受けるに至ったのである。
記者会見での説明などによれば、荻野区議は親族や周囲からのたび重なる金の無心に悩み、ネットで見つけた金融業者に連絡。その業者から「キャッシュカードを送れば、口座に現金を入金して送り返す」と指示され、自身の持つ信用金庫のカードを郵送した。
その後、この業者と連絡が取れなくなったことから、荻野区議はすぐに口座を停止した。だが、すでに口座は振り込め詐欺に利用され、大阪府堺市の女性が200万円をだまし取られる被害に遭ってしまったのだ。これ自体は、公人としてあまりにも脇が甘い行為。その件に触れたところ、荻野区議は改めて謝罪の言葉を口にした。
「本当に申し訳ございませんでした。記者会見でも述べましたが、自身の愚かさ、未熟さゆえの過ちです……」
荻野区議は、記者会見で自らの無知が原因で口座の不正譲渡を行ってしまったことを謝罪。自身に直接の責任はないものの、被害者女性に直接、被害額200万円の全額を弁償している。
被害者にも弁償をしたことで、すでに反省の意は示しているはずなのに、ここにきて辞職を決意した理由はなにか。荻野区議は語る。
「来年4月には大田区議会議員選挙があります。現状では、自身のけじめをつけているとはいえない。有権者の方から見ても、その後、どうなったのかわからない中途半端な状態に見えると思います。一度、議員辞職という形で責任を取り、その上で区民のみなさんに判断していただく必要があると考えました」
荻野区議は、記者会見と謹慎を経て、今後とも区議会議員としての任期を全うしたいと語っていた。にもかかわらず、このタイミングで辞職を決めたことをどう考えているのか。そのことを問うと、荻野区議は言葉を詰まらせた。
「私自身、悩んだのですが……やはり、けじめを……」
実のところ、いまだに所属する日本維新の会からは党員資格が停止されたまま。さらに、事件の捜査についても、いまだ書類送検にも至っていないことも、荻野区議にとっての枷になっている。
「このまま、歯にものが挟まった状態で、事件についても止まったままで、またみなさまの代表をやらせてくださいというのも、誠意がないと思います。何より、今のまま区議会にいても議員としての活動や情報発信が難しく、みなさまから期待された活動もできない。出席してお給料をもらうだけになってしまう。そういった状況でズルズル続けてしまうよりも……と考えて、辞職願を提出しました。責任を取り、信託をいただけるなら、もう一度挑戦させていただきたいと思っています」
事件の発覚以来、荻野区議は苦悩の日々を送ってきた。これまでの支援者の中には、突然、音信不通になる者もいた。だが、一方で事務所を訪ねてくれる人も後を絶たなかった。
「地域の方々には暖かい言葉もかけていただきました。また、年上の方々からは人生のアドバイスも多くいただきました。今回の事件は、身の丈に合わないことをやっていた自分の不始末だと思っています。地元の方からの『あなたは生き急ぎすぎだ』という言葉は身に染みました」
だが、事件によって信頼を失ったことは事実。さらに辞職してしまっては、次回の区議選は苦しいものになるのではないか……。
「どんな形であれ、選挙は優しいものではありません。ここまで追い込まれてしまったのだから、必死にやるしかないと思っています。言葉を尽くして、信頼を取り戻そうと思っています」
幾度も反省の言葉を口にしながらも、再出発に駆ける意志を語った荻野区議。31日のコミックマーケットには、予定通りサークル参加する予定だという。
(文=昼間たかし)
オタク議員・荻野稔大田区議が辞職へ「一度、けじめをつけます」「もし、お許しいただけるならもう一度応援をいただきたい」
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