
さて、当代きっての不愉快ドラマ『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』(フジテレビ系)も第6話。視聴率は6.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、低調が続いています。
前回の第5話から、ようやくやりたいことが見えてきた感のある同作ですが、うーん、やっぱりおもしろくないです。いや、今回も大筋の大筋ではすごくいい話。悲しいし、希望もある。多少の粗があっても細かいところに目をつぶれば楽しめると思うんだけど、その粗がでかいのよ……。振り返りましょう。
(前回までのレビューはこちらから)
ご老人の女流売れっ子作家が女性秘書3人に灰皿を投げつけるなど、パワハラ行動をしている場面からスタート。作家はどうやら、若く美しい男の秘書にメロメロなようです。
何話か前にも国生さゆりが若く美しい男に骨抜きにされるシーンがありましたが、このドラマは「年老いた女が若い男にホレる」というシチュエーションを、とことん惨めな行動として描きます。制作側の上の方の女の人に、よっぽど何かあるんだろうけど、その歪んだ価値観がダダ漏れなんです。「若い男にホレるババアは惨めだ」というメッセージは、おそらく「私はババアだが若い男には翻弄されない」という決意表明なんだろうけど、そんなのは見る側には関係ないですからね。見苦しいだけです。
ついでにアラサー女性がハワイに一人旅することも軽くバカにしておいて、さあ第6話も不快に始まりました。要するに「軽妙」をはき違えてるんです。このドラマ、「キャラクター監修」という見慣れない役職でバカリズムがクレジットされてるんですが、世の女性たちから大いに不評を買った彼の女装ネタ「女子と女子」を、達者な女優さんたちが地で演じてしまっている感じ。あのネタはバカリズムの美しくない顔芸も込みで面白いわけで、美しい竹内結子や斉藤由貴がやったら、どうにも受け入れ難い設定なんです。そのへんも、制作側の上の方の女の人が醸し出す雰囲気が見えるのよね。「私はバカリズムのウイットを理解できる女だわよ」みたいな主張を感じる。実に見苦しい。
だいたいからして、全編から敵対心というか「成敗してやろう」みたいなマウント意識が竹内ら弁護士チームの行動原理になっているし、クライアントに世間の同情が集まることをもって「任務成功」とされても、知らんがなという話なんです。問題解決の手段のひとつとしてメディアを使った世論操作があってもいいと思うけど、それが目的になっちゃうと共感できないんです。「そんなくだらないことでカネもらってんの?」となってしまう。
ほかにもあります。今回も明確にパワハラが行われるシーンがあったにもかかわらず、「被害者側に非がある」という理不尽な描写がありました。灰皿を投げつけられた3人の女性秘書は、長きにわたって作家に尽くしてきたはずなのに、いつの間にか「遺産狙いの薄汚い狸ババア」扱いされてドラマから叩き出されてしまう。代わりに、「遺産狙いのホスト上がりのクソ野郎」として扱ってきた若い男を「才能ある若手流行作家」に仕立て上げる。若い男の才能や未来といった美しさを描こうとしても、その内実を作るのが面倒だから、周囲の人物を必要以上に汚していく。そして、汚されていくのは、いつも女性ばかり。
老若にかかわらず、竹内結子と水川あさみに成敗されるのは、いつも女性なんです。画面から「美人が気に食わない」「自立した女が気に食わない」「すぐ泣く女はもっと気に食わない」というメッセージがビンビンに伝わってくる。4話まででちょっとやりすぎたと思ったのか、5話からは女性を救うようなポーズを取ってみたけど、結局5話の遠野なぎこからは仕事を取り上げ、再起不能の状態に陥れることで大団円のような顔をしていたし、今回の6話では真野響子を、がんで殺してしまいました。どうしても女性に救済や平穏を与えたくないというドラマの強い意思を感じます。さらに気味が悪いのは、それでも表面上は「女性を救った」という顔をしていることです。
前回まで、時事ネタを雑に扱っているのが嫌だという話もしていましたが、今回は時事ネタ要素薄めで、人の才能や故人の遺志、あるいは誇りや信頼といった普遍的なテーマが語られました。人の才能や故人の遺志、あるいは誇りや信頼といった普遍的なテーマが、これまで同様に雑に扱われたのです。これはもう時事ネタとは比較にならないくらい不快でした。
今夜放送の第7話は「マタハラ」だって。もう見るのが怖いよ。
(文=どらまっ子AKIちゃん)