北川景子が不動産業界を舞台にスーパー営業ウーマンを演じるドラマ『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)の第9話が6日に放送され、平均視聴率10.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。前回と同じ数字になりました。



(前回までのレビューはこちらから)

 今回、三軒家万智(北川)が担当することになったのは、高齢の母・静江(松金よね子)のために家の購入を考える独身女性の馬場礼子(酒井若菜)。しかし、静江は長年住むアパートの近所づきあいを大切にし、引っ越しを望んでいないのです。

 一方、万智の部下の庭野聖司(工藤阿須加)は、設計デザイナーの真壁(入江甚儀)のデビュー作という築45年の古家をフルリノベーションした家を売るべく奔走。しかし、お風呂の壁がスケルトン仕様など、妙にこだわりの強い内装のためまったく売れる気配がありません。

 その2人とは対照的に、フリーランスの不動産屋・留守堂謙治(松田翔太)へのボーイズラブ的な想いを断ち切った足立聡(千葉雄大)は、営業成績をガンガン伸ばしていきます。出産間近の新垣夫妻を担当することになり、ちょうど留守堂が、夫と離婚予定の迫田のぞみ(小野真弓)から新築物件の売却を依頼されていることを知ったため、新垣夫妻にその家を紹介する手筈を整えます。

 しかし内見当日、のぞみの夫・祐樹(永野宗典)がタイミング悪く帰宅。ヨリを戻したいと懇願したため、のぞみが離婚予定だということを新垣夫妻が知ってしまい、「縁起が悪い」との理由で購入を見送ってしまうのでした。

 一方、古家を売れずに悩む庭野に対し、万智が代わりに売ると宣言。ところが、床を全面にするリノベーションをすると言い出したため、デビュー作を売りたいと意気込む真壁の気持ちを知る庭野は困惑してしまいます。

 そんな庭野に対し、「友情ごっこで家は売れない」と諭した万智は、再びリノベーションした家を馬場母娘に紹介。実はその古家は、静江が住むアパートのすぐ近くにあり、ご近所との関係性も継続できるとあって、売却に成功するのでした。


 その一方で足立は、近所に子持ち家庭が多いという環境が、共働きの迫田夫妻にとって精神的なストレスになっているのではないかと臆測。ヨリを戻した2人に対し、住み替えをするよう提案します。そして当初の予定通り、その家に新垣夫妻が住むことになり、一件落着となったのでした。

 足立が営業マンとして完全復活したのに対し、留守堂はというと、小学生の時から憧れを抱く万智への想いと、その夫・屋代大(仲村トオル)への嫉妬心に悩まされスランプ状態。母校の小学校へ万智を呼び寄せ、自分の気持ちを打ち明けようとします。

 ところが、“小学校の時にプールで溺れ、人工呼吸してもらったことで好きになった”という留守堂の話を、万智は勘違いだと指摘。実際に留守堂を助けたのはヤマダカズコという女性だというのです。

 そして、そのカズコがその場に現れたことで、長年の勘違いと彼女の容姿(?)にショックを受けて失神してしまう留守堂。目が覚めた時、万智への怒りの念が湧き起こったところで終了となりました。



 今回は、日本社会に蔓延する“こうあるべき”という見えない鎖に縛られ、身動きがとれなくなってしまった人々を描いた回となりました。馬場母娘には、『子どもは親孝行すべき』という義務、迫田夫妻には、『夫婦は子どもをつくるべき』という重圧です。

 正確にいえば馬場母娘に関しては、礼子は感謝の気持ちから母親との同居を望んでいるものの、静江の方が娘の押しつけがましさを感じてしまっている、といった感じでした。
本人が引っ越しを望まないのであれば放っておけばいいのでは? とも思いましたが、そこはスーパー営業ウーマンの万智。アパートからすぐ近くの物件を紹介しただけでなく、“内装は顧客ありき”であることを庭野と真壁に伝えることにも成功し、見事な手腕を発揮しました。

 万智が“家売る至上主義者”なのに対し、足立は顧客の幸せを考えてベストな選択肢を提案するのがモットー。これまでは留守堂への恋に悩み、営業成績が落ちてしまっていましたが、今回は完全復活を果たし、今シーズン最も魅力的な回となったのではないでしょうか。

 その一方、万智への恋に悩み、存在感が薄くなってしまったのが留守堂。ヤマダカズコと自分とを勘違いしていた、というのはもしかしたら、万智が留守堂を傷つけないために用意した嘘だったのかもしれません。いずれにしても、カズコの姿を見た瞬間にショックで卒倒してしまうという演出は、失礼きわまりないと感じました。北川景子の美貌を引き立たせるためか、カズコ役の女性にわざわざブスメイクを施していたのも残酷な演出だったと思います。

 また、留守堂はなぜか万智に対し逆恨みをするのですが、その心のメカニズムが今ひとつよくわかりません。恐らく、次回が最終回ということで、何が何でも万智と対立させる展開にしたかったのでしょう。今までのおとぼけっぷりを見る限り、留守堂に敵役は難しいような気がしますが、とりあえず来週の放送を待ちたいと思います。
(文=大羽鴨乃)

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